【カイロ時事】幾度となく決裂したパレスチナ自治区ガザの停戦交渉がついに実を結んだ。イスラエルの徹底的な攻撃で、イスラム組織ハマスは弱体化した上に孤立。トランプ次期米大統領が20日に行われる自身の就任式を事実上の「デッドライン」に設定したことも、イスラエルとハマスの交渉を加速させた。
2023年10月から始まった戦闘で、ハマスの軍事力は大きな打撃を受けた。最高指導者だったハニヤ氏やその後継でイスラエル奇襲の首謀者とされるシンワル氏が死亡。組織の弱体化は隠しようもない。
また、ハマスに連帯を示してきたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは昨年11月にイスラエルと停戦した。ハマスを支援するイランは、イスラエルとの報復の応酬で重要軍事施設を破壊された。シリアでは親イランのアサド政権が崩壊するなど、イランの中東地域への影響力は低下し、ハマスは孤立した。
こうした中、トランプ氏は、今月20日の大統領就任までにハマスが人質を解放しなければ「地獄を見る」と繰り返し警告した。弱体化したハマスは譲歩を余儀なくされたとみられる。
トランプ氏は、イスラエルのネタニヤフ首相にも就任までにガザでの戦闘を終わらせるよう伝えていたとされる。次期米政権で中東問題担当特使を務めるウィトコフ氏は11日にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ氏に妥協を強く要求。一貫して強硬だった同氏の姿勢を軟化させた。
ネタニヤフ、トランプ両氏は、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化を通じ、イスラエル・アラブ諸国によるイラン包囲網を完成させたい思惑を共有している。イスラエルが対イランやパレスチナで強硬策に出る際には米国の後ろ盾が不可欠で、ネタニヤフ氏はトランプ氏の意向を重視せざるを得なかったもようだ。
[時事通信社]