【バンコク時事】タイで23日に「結婚平等法」が施行され、東南アジアで初めて同性婚が可能になる。同日に婚姻届を提出予定の同性カップルは、時事通信の取材に「LGBTQなど性的少数者を含め、誰もが平等に結婚できる。うれしい」と喜びを語った。
カップルはバンコクに住む会社員ケビンさん(31)と、インフルエンサーの女性ナッニチャーさん(39)。ケビンさんは法律上は女性だが、性自認は男性のトランスジェンダーだ。9歳の頃から女性を好きだと感じるようになった。20代からホルモン治療を始め、乳房切除や子宮を取る手術も受けた。
ケビンさんは「男性のように振る舞う私に対し、父は『将来が不安だ』と否定的だった」と振り返る。それでも、優秀な成績で大学を卒業し仕事にも励む姿を見て「今は受け入れられていると感じる」と話す。
ナッニチャーさんは結婚していたが、子どもが産まれても金銭的に援助しない夫と別れて以降、男性不信になった。ケビンさんとは2019年1月から交際。今は元夫との間の息子(18)を含め3人で暮らしている。
ナッニチャーさんの息子はケビンさんを「パパ」と呼び、悩み事の相談もしている。両親らは交際に反対していたが、ケビンさんの人柄に触れて考えを変えた。
法的に結婚することで、医療措置を受ける際に「配偶者」として同意することや、財産を相続することが可能になる。ケビンさんは「結婚できず悲しい思いをしてきたLGBTQの友人らを知っている。これからのタイはそうした国ではないとアピールしたい」と強調した。
ただ、ケビンさんによると、タイではトランスジェンダーの人が公務員になるのが難しいなど、性的少数者への偏見や差別が残っている。ナッニチャーさんは「LGBTQも人間だと分かってほしい」と、結婚平等法施行を通じて理解が深まることに期待を示した。
[時事通信社]