【ワシントン時事】20日に就任するトランプ次期米大統領は、デンマーク領グリーンランドやパナマ運河の支配を目指すと公言し、そのためには軍事的圧力も辞さない姿勢を示している。真意は明らかでないものの、領土拡張の野心に各国は身構えている。
◇強まる帝国主義的色彩
「(軍事・経済両面での圧力について)どちらもやらないとは約束できない。経済安全保障のために必要だ」。トランプ氏が7日の記者会見で、グリーンランド領有などへの意欲を改めて示すと、同盟・友好国に衝撃が走った。
トランプ政権は1期目も「米国第一」を掲げ、同盟国との不協和音が絶えなかったが、紛争解決への関与に消極的な「孤立主義」的側面も垣間見られた。一方、2期目を控えた発言は、領土や勢力圏の拡大を志向する「帝国主義」的な色彩を強めている。デンマークもパナマも、これまで米国と敵対していたわけではないだけに、戸惑いは大きい。
特にデンマークは北大西洋条約機構(NATO)の同盟国で、グリーンランドには米軍の基地がある。トランプ氏との電話会談で「グリーンランドは売り物ではない」と売却を拒否したフレデリクセン首相は、「われわれは深刻な状況にある」と外交的な緊張に懸念を示した。
パナマのムリノ大統領は不法移民の米国流入阻止で協力する「親米派」だが、トランプ氏の発言に「われわれの運河は、パナマ人以外の誰のものでもない」と反発を隠さない。トランプ氏はパナマ運河を「中国人が支配している」と言い掛かりをつけている。
◇賛否は二分
米国民の反応は二分している。調査会社ユーガブの世論調査では、グリーンランド領有への賛成は31%で反対は35%。パナマ運河支配は賛成と反対が共に36%だった。
ウォルツ次期大統領補佐官(国家安保担当)は、ロシアや中国を名指しし「西半球に敵対者が侵入し、われわれの安全保障を脅かすのは、もうたくさんだ」とトランプ氏の意図を「解説」。一方、トランプ氏の長男ドナルド・ジュニア氏と共にグリーンランドを今月訪問した政治活動家チャールズ・カーク氏は、鉱物資源独占などのために「米国の51番目の州にする必要がある」と訴える。
トランプ氏の発言について、交渉での取引材料にするのが狙いとの見方もある。だが、ニューヨーク・タイムズ紙は、軍事力を背景にした領土拡大を公言することは「中国に台湾占領の許可証を与えたようなものだ」とするコラムニストの見解を掲載。東アジアを含む世界情勢に、影響が波及しかねないと警鐘を鳴らした。
[時事通信社]