【ワシントン時事】トランプ次期米大統領は政権の最優先事項に、バイデン政権で急増した不法移民の送還を掲げる。「史上最大の作戦」を予告し、国家非常事態宣言の発令や軍の動員も辞さないと表明。就任初日に関連の大統領令に署名し、早くも着手する構えだ。
「作戦」の全容は不明だが、不法移民の拘束や一時施設への収容、国外移送を段階的に実施するとみられる。連邦当局によると、2024年時点の不法滞在者は推計1330万人。トランプ氏や政策責任者は犯罪歴のある者の摘発を優先する考えで、来週以降、中西部イリノイ州シカゴなどの大都市で一斉検挙を始めると報じられている。
送還計画にかかるコストは莫大(ばくだい)だ。移民擁護派団体「米移民評議会」は、3150億ドル(約49兆円)に上ると試算。移民規制派の「移民研究センター」も1620億ドル(約25兆円)と見積もる。トランプ氏は「金に糸目は付けない」と意に介さないが、議会がどこまで予算確保に応じるかは見通せない。
米メディアによると、政権は巨大プロジェクトの一環として、1期目の新型コロナ流行下で適用した公衆衛生法上の移民退去措置「タイトル42」を復活させる方針。さらに、人員不足が指摘される移民税関捜査局(ICE)への支援、「国境の壁」の建設再開、一時収容施設の増設も検討しているという。
より野心的な目標として、トランプ氏は米国で生まれた子へ自動的に国籍を付与する「出生地主義」の見直しも視野に入れる。ただ、出生地主義は憲法修正14条に明記されており、実現のハードルは高い。
米国への移民希望者は受け入れに寛容なバイデン政権下で急増し、保護施設が飽和状態になるなど社会問題化した。地域社会の負担が増す一方、農業や建設業で移民が貴重な労働力となっている現実もあり、急激な政策転換は混乱が避けられないと予想される。
[時事通信社]