【ワシントン時事】米史上3番目に若い副大統領となるJ・D・バンス氏(40)が存在感の発揮に苦慮している。米国の繁栄から取り残された「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」の白人労働者層の代弁者として抜てきされたが、これまでのところ、トランプ氏(78)の圧倒的な個性に当てられて埋没気味だ。
1984年、中西部オハイオ州生まれ。薬物依存症だった母親に代わり、祖母に育てられた。高校卒業後に海兵隊に入隊。その後オハイオ州立大を卒業、エール大法科大学院を修了し、ベンチャー投資家となった。
2016年に出版した回顧録「ヒルビリー・エレジー」はラストベルトの白人の悲哀を描き、同年の「トランプ旋風」を象徴する文学作品としてベストセラーとなった。当初はトランプ氏に批判的だったが、「(トランプ氏に関して)自分が誤解していたことに気付いた」として、22年の上院選出馬の際にトランプ氏支持に転向。政治家としてのキャリアは浅く、目立った立法実績もなかったが、歯切れの良い弁舌でトランプ氏を擁護し、「忠臣」の地位を確立した。
ただ、副大統領候補に選ばれて以降は、世論調査で一貫して「嫌い」が「好き」を上回る状態が続いている。シカゴ大などが今月16日に発表した調査では「好き」が32%に対し、「嫌い」は47%に上った。
大統領選の期間中は民主党に攻勢の機会を与える「失策」が目立った。子供のいない女性を「チャイルドレス・キャット・レディー(猫好きの子なし女)」と侮辱した発言が人気歌手テイラー・スウィフトさんらに当てこすられ、「ハイチ系移民が住民のペットを捕まえて食べている」と虚偽の情報を拡散したことも批判を浴びた。
トランプ氏の当選後は実業家イーロン・マスク氏らが注目を集める中、バンス氏がメディアの見出しを飾る機会は少なかった。共和党内からは「バンスはどこにいる」とやゆする声も上がったが、目立ちたがり屋のトランプ氏の脇役に徹する方が立ち回りとしては賢いとの指摘もある。
[時事通信社]