日銀は29日、2014年下半期(7~12月)の金融政策決定会合議事録を公表した。4月に消費税率が5%から8%に引き上げられ、黒田東彦総裁は就任直後の「量的・質的金融緩和(異次元緩和)」を大幅に拡大する「黒田バズーカ」第2弾に突き進む。しかし、市場機能の低下など「副作用」を懸念する声も強く、10月末の会合では5対4と賛否が割れた。
消費増税に関しては、駆け込み需要の反動で個人消費に弱さが見られたが、日銀は「基調的には緩やかな回復を続けている」との景気判断を維持。ただ、1%台半ばまで上昇していた全国消費者物価指数(生鮮食品・消費税増税の影響を除く)の上昇率は8月に1%近辺まで低下、「2年程度で2%」とした物価目標の実現が危ぶまれる事態に、10月7日の会合では「量的・質的緩和は正念場にある」(中曽宏副総裁)と危機感が広がった。
これを受け、同月31日の会合ではマネタリーベース(資金供給量)の年間増加額を80兆円(従来60兆~70兆円)へ拡大する追加緩和策を議論。中曽氏は「(追加緩和は)可能な限り大きな規模を目指すべきだ」と指摘し、岩田規久男副総裁も「(目標実現の)後ずれリスクに適切な対応を取らなければ、日銀の金融政策に対する信頼性が大きく低下する」と主張した。
一方、木内登英審議委員は「戦力(緩和策)の逐次投入はしないとの当初の方針に反し、いたずらに副作用のリスクを高める」と批判。森本宜久審議委員も「市場機能が大きく阻害される恐れや、(国の借金を中央銀行が穴埋めする)財政ファイナンスとの見方をされる懸念も大きくなる」と強調した。
結局、「デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕在化を未然に防ぐ」(黒田総裁)として追加緩和が決まった。バズーカは再びサプライズをもたらし、市場は円安・株高に振れた。しかし、物価押し上げ効果は乏しく、日銀はその後、マイナス金利や長短金利操作など、さらなる「異形」の政策に踏み出していくことになる。
[時事通信社]