オスロ国際平和研究所(PRIO)のジョルゲン・ジェンスハウゲン上級研究員(パレスチナ問題)は、イスラエルで30日施行の国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内活動を禁止する法律を巡り、パレスチナ自治区ガザなどに対する「支援のインフラを壊そうとしている」と批判した。28日に時事通信のオンライン取材に応じた。一問一答は以下の通り。
―イスラエルは、UNRWAのガザへの支援物資が全体に占める割合は少なく、法施行後の支援に支障はないと説明している。
UNRWAは長らく、イスラエルから支援物資搬入を拒否されるのを回避するため、物資のラベルを国連世界食糧計画(WFP)など他組織のラベルに貼り替える手法を取ってきた。ラベルだけで判別すればイスラエルの主張は正しいが、実際は大半をUNRWAが担っている。
禁止法では、イスラエルとの調整や倉庫の管理といった、UNRWAが支援物資を届けるための体制が制限されるだろう。他の支援組織はこうした体制を備えていない。停戦によってガザへの支援搬入が認められた一方で、イスラエルはそのためのインフラを壊そうとしている。
―他の組織はUNRWAを代替できないということか。
UNRWAは、現地職員を多く雇用していることや、長期契約と大量購入の仕組みによって、人件費や経費を抑えてきたが、他の国連機関や新規参入の支援組織には難しい。コストが倍増することになる。セキュリティーの観点でも、現地で非常に信頼されているUNRWAと異なり、安全確保のためにより費用が必要となる。
―パレスチナ難民への影響は。
ヨルダン川西岸では、UNRWAが運営してきた難民に対する教育や保健医療システムに深刻な影響が及ぶ。パレスチナ自治政府にはそれを代替する財政力はない。ガザでも戦後にそうしたシステムを再び築かねばならないが、UNRWAなしでは困難だ。
―国際社会はどう対応すべきか。
まず、禁止法を撤回するようイスラエルに強い政治的圧力をかけなければならない。国連機関を葬り去ることは、これまで築かれてきた国際的な枠組み全体に反する。UNRWAがこのような政治的な危機と同時に財政危機に見舞われないよう、資金供与を続けることも重要だ。
[時事通信社]