【ワシントン時事】トランプ米政権は1日、カナダ、メキシコからの輸入品に25%、中国に10%の関税を課す。米国の二大貿易相手国であるカナダ、メキシコでは、日本メーカーも含めた自動車業界などがサプライチェーン(供給網)の統合を進めており、各国の企業活動や経済への打撃は必至だ。3番目の貿易相手、中国との「貿易戦争」再燃も懸念されている。
トランプ大統領は「短期的な混乱はあるが、関税はわれわれを豊かにする」と意に介さず、欧州連合(EU)にも「関税に関する重大な対応」を取る意向。2月中旬以降、原油や天然ガス、半導体、鉄鋼など幅広い品目で輸入品への関税賦課も検討している。
トランプ氏は、不法移民や合成麻薬「フェンタニル」の米国流入が続いていることに3カ国が責任を負っていると主張。「米国をひどい扱いにしている」と非難してきた。また、巨額の貿易赤字の是正も求めている。
米国では、トランプ第1次政権下の2020年7月に発効した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を受け、両国との経済統合が進んだ。中国との貿易が輸入に偏るのに対し、カナダ、メキシコとは輸出入ともに多く、米国の全貿易量の約3割を両国が占める。報復関税が発動されれば、米企業の輸出にも大打撃となりかねない。
特に影響が大きいのが自動車業界だ。メキシコに生産拠点や部品供給元を持つメーカーも多い。「1台の車を製造するのに、部品が何度も国境を行き来する」(日本企業関係者)とされ、国境に「関税の壁」(トランプ氏)が出現すれば、米企業はコスト高に直面する可能性が高い。
メキシコからは、トマトやアボカドなどの生鮮食品も多く輸入している。関税の消費者価格への転嫁は避けられず、食品価格の値上がりにつながるとの見方が多い。メキシコの輸出業者だけでなく、米国民の食卓にも影響は及ぶ。
エネルギーへの影響も懸念されている。米国は原油輸入の約6割をカナダ、約1割をメキシコに頼る。業界団体の米燃料石油化学製造者協会(AFPM)は、関税は「消費者や製造業のコストを上昇させ、米国のエネルギー安全保障を脅かす」(広報担当者)と指摘している。
[時事通信社]