【カイロ時事】トランプ米大統領は4日、パレスチナ自治区ガザの住民を近隣諸国に移住させる一方、米国がガザを「所有」して経済復興を進めるという構想を示した。米国が土地を占拠して一方的に立ち退きを求めるかのような提案に対し、ガザ住民は怒りをあらわにした。
ガザ北部ガザ市のガマルさん(56)は5日、通信アプリで取材に応じ、「誰がパレスチナという故郷からの移住を受け入れるというのか」と述べ、トランプ氏の提案は「狂っている」と憤った。たとえ米軍がガザに部隊を展開しても「ガザを離れない。私はここで死ぬ」と訴えた。
ガザ住民の多くは、1948年のイスラエル建国に伴い、現在のイスラエル領内にあった故郷を追われてガザに移り住んだ難民やその子孫だ。トランプ氏の構想は、こうした人々に改めてパレスチナ域外への退去を要求するもので、国際法、人道上の問題が生じる恐れがある。
ただ、1月に停戦が発効するまでの1年3カ月にわたるイスラエルの軍事作戦でガザは荒廃した。大半の住民は家族や知人の命を奪われ、家も失った。
電話で自身の境遇を語った看護師のアフマドさん(32)は、中部デイルバラで避難生活を送り、居住可能な家屋も仕事もないと嘆く。何よりも気がかりなのは3歳の息子の未来だ。戦争がない環境で「より良い将来を与えたい」と切に願う。「ガザに帰還できる権利」が保証されるならば、安定した場所への移住も選択肢に入ると、揺れる胸の内を語った。
アフマドさんは、イスラエル人や同国のネタニヤフ政権は「信用できない」とも指摘する。移住後に「あらゆる条件がほごにされる」可能性もあると述べ、現段階で移住を進んで受け入れる考えはないという立場を示した。
[時事通信社]