能登半島地震で全半壊した建物の公費解体の申請数が増え続けている。被害を受けた家屋には古民家が多く、解体が進めば地域の景観や文化的価値が損なわれかねないとの懸念が広がる。石川県は、修理して住み続けることや宿泊施設などへの活用を検討してもらおうと支援を始めた。
県内の公費解体の申請数は1月末時点で3万6304棟に上る。県は昨年8月の段階で解体数を3万2410棟と見込んでいたが、今年1月に3万9235棟に修正。10月の作業完了を目指している。
被災した家屋の住民からは「誰も住まない家を子に残すより、公費で更地にしてほしい」との声が上がる。住居の再建を支援する団体の関係者によると、能登半島には木造の大きな家屋が多く、修理に高い費用がかかる。「住民にとっては『解体した方が得』と映りやすい」という。
輪島市白米町で1月、建築士らのグループと県、住民が意見交換会を開いた。建築士らが文化的価値のある古民家の解体を急がないよう求めると、区長の白尾友一さん(61)は「公費で解体できるなら解体するつもりでいた。具体的な道筋が分かれば活用も考える」と応じた。
県は昨年12月、被災家屋の修理・活用などについて、建築士らによる無料相談や調査の支援を始めた。政府にも支援策を講じるよう求めている。
全壊や半壊と判定されても修理すれば住み続けられる家屋はあるという。県は、いったん解体を申請しても申し出があれば留保できると説明。馳浩知事は「修繕して住めるなら住みたい、宿泊所として使いたいという声もある。その選択肢をぜひ提示したい」と話している。
[時事通信社]