【ワシントン時事】トランプ米大統領が、米国が輸入するすべての鉄鋼とアルミニウムに25%の追加関税を課すことを決めた。カナダやメキシコ、欧州連合(EU)などに認めていた適用除外などの例外措置は廃止する。EUなどが検討する報復措置については「心配していない」と一蹴。これまで言及してきた医薬品や半導体だけでなく、自動車への関税賦課にも意欲を示し、製造拠点の米国回帰を目指す考えを示した。
トランプ氏は、貿易相手国の関税率に応じて米国も同水準の関税を課す「相互関税」を近く導入する考えも改めて表明した。相手国が報復に動けば「自動的に米国も関税を引き上げる。報復は自分たちのためにならない」とけん制。「貿易戦争」の懸念が強まる中、強気の姿勢を維持した。
世界各国・地域からは反発の声が上がる。カナダのシャンパーニュ革新・科学・産業相は声明で「カナダの鉄鋼・アルミは防衛から自動車まで米国の産業を支えている」と指摘。関税措置は正当化できないと批判し、他国と協議の上、「明確で的確な対応をする」と警告した。
EUは関税決定に先立ち「非合法で経済的に逆効果だ」と非難声明を発表。米メディアによると、フォンデアライエン欧州委員長はフランスを訪問中のバンス米副大統領と会談する意向だ。欧州で対米鉄鋼輸出が最も多いドイツのショルツ首相は報復関税の発動を予告している。
鉄鋼・アルミへの追加関税は、トランプ第1次政権の2018年に発動された。当時、EUは鉄鋼・アルミだけでなく自動二輪車やウイスキーなど幅広い品目に報復関税を課し、貿易摩擦に発展。バイデン前米政権が、一定量まで鉄鋼・アルミへの追加関税を免除する「関税割当制度」を導入するまで続いた。同制度は日本や英国にも適用された。
また、米国と貿易協定を結んだカナダ、メキシコは追加関税そのものを適用除外とされていたが、今回のトランプ氏の決定により再び対象となった。貿易摩擦が再燃する可能性がある。
トランプ氏は「例外はない」としつつも、適用除外を求めるオーストラリアについては「米国は貿易黒字がある。多くの航空機を買ってもらっている。大いに検討する」と例外措置の導入を示唆した。新関税発効まで約1カ月。関税を突き付けて譲歩を引き出す、同氏得意のディール(取引)を仕掛けるとの観測もくすぶる。
[時事通信社]