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【特集】農業被害相次ぐイノシシ…「嗅覚は人間の1億倍から4億倍」有効な対策は?

ABS秋田放送 2024年9月17日 18時5分

クマと同様に生息域の拡大が懸念されている、イノシシ。

今年も春から各地で農業被害が確認されています。

県は、イノシシをわなで捕獲するための講習会を開くなど、対策に乗り出しています。

深刻さを増す農業被害の現状と、イノシシを捕獲する担い手の育成の現場を取材しました。

梅雨が明ける前の7月中旬。

取材を続けてきた猟友会のメンバーから連絡が入り、湯沢市の山に向かうと…。

「オスでたぶん 3、40キロ」

わなにかかっていたのは、野生のイノシシです。

イノシシがかかった近くの畑を見てみると。

「まさかジャガイモまでやるとは思わなかった。あ~、腹悪くて。こういうふうに育って、さぁ収穫するって時にやられると、本当に悔しいっていう。憎たらしい」

収穫を間近に控えたジャガイモが、イノシシによって辺り一面掘り起こされ、食べられていました。

湯沢市南部猟友会 高橋俊一さん

「今年は多いと思うよ。去年の秋かなりうりぼう結構いたから」

2022年に、エサとなる山の木の実が豊作だったことで、クマと同様に多くの子どもを産んだとみられるイノシシ。

農作物の被害額は昨年度、県のまとめによりますと、950万円あまりでした。

今年も春先から被害が相次いでいて、さらなる深刻化が懸念されています。

かつて県内に生息していなかったイノシシの数を減らし、農業被害を抑えるには、捕獲する担い手の確保が欠かせません。

県 自然保護課 長岐昭彦さん

「くくりわなというのは、銃以外の捕獲ツールとして大変有効だということが西日本の方でも実績がございます」

県は今年度、猟友会などを対象にした、くくりわなの講習会を県内各地で開いています。

全国でイノシシの捕獲などに広く用いられているくくりわな。

イノシシがわなの板を踏み抜くと、バネがつながったワイヤーが瞬時に巻き付き、足をとらえる仕組みです。

この日、横手市で開かれた講習会には、これまで20頭を超えるイノシシをくくりわなで捕獲してきた湯沢市南部猟友会の高橋俊一さんが講師に招かれ、イノシシの生態や、わな使用時の注意点などを伝えました。

高橋俊一さん

「桁違いの嗅覚持ってる。目はいいし、警戒心は強いし、足速い。箱わなには入りません。簡単ではない。クマなば意外と簡単なもんで」

イノシシを捕獲するために最も重要なこと。

それは、臭いの対策です。

「汗をつけない。ぽたっと一滴の汗で掛からないからなって言うから、いかに鼻がいいか。オレは徹底的にわなの臭いを消すこと。掛ける3日、1週間くらい前からもう自分の池に池漬けするのわな。わなと使うバネ全部。イノシシの嗅覚って、人間の何倍あるかというと大体1億倍から4億倍と言われています。嗅覚対策徹底的にやらないと、なかなかイノシシは捕獲できないと思います」

講習会では、実際にイノシシの目撃情報があった場所でわなの設置方法も紹介されました。

横手市職員

「こちらの湿地のところ一帯が掘り返されていまして、かなりの数来てるんじゃないかなということで、ブロック動かしたのもイノシシだそうです。ここ人歩けるようにブロックきれいに並べてたんですけども、掘り返されちゃって」

高橋さん

「丁寧に見れば何本か獣道あるはずだから、そこ見つけられるかだ。良くここ掘られたからここにわなかけてくれっていうども、まず掛かる確率はほとんどないと思う。ずーっとこれ際全部見ていくな、基本的にどっから出入りしてるか」

イノシシに直径12センチ以下のくくりわなを踏ませるために大切なことは、イノシシが移動するルート・獣道を特定することです。

被害があった場所の周辺を注意深く見ると…。

「これ泥だべ?乾いたやつ」

「体さ泥つけて帰った時にここ通ったっていう、通ったっていう証拠だ」

素手で触れただけで人間の匂いを嗅ぎ分け、仕掛けたわなを避けて通るというイノシシ。

わなを持ち運ぶ段階からゴム手袋が欠かせません。

わずかな痕跡からイノシシの移動ルートを特定したら、わなを設置していきます。

「掘りながら下げていくんだ。カンカン。せば隙間なくピタッと設置できるから。こういうのでカモフラージュして。自分もやってこれなば、オレもここさ足置きたくなるようなイメージであれば。仮にイノシシが右足ついて左足来いばバッシ。こういうふうになる」

「失敗したらこういうこともあったな、こうやってみようかとか向上心持てばだんだんレベルアップできると思いますので。年配の人はマスターして若い人さ伝授してあげるようなスタイルとってもらえればありがたいと思います。まずみなさんがんばってください。この通りイノシシ増えて参りましたので、ハンターしかいないから駆除するのは」

くくりわなへの理解を深めた参加者たち。

今後、それぞれの地域でイノシシの捕獲などの対応にあたっていきます。

女性参加者

「イノシシが通るところをなるべく人の匂いがつかにようにするっていうところが結構難しいかなと思いました。一歩一歩技術を習得できたらなと思いますけど」

男性参加者

「いずれこっちの方さは相当渡ってきてるんじゃないかと思われます。出没する箇所、そういうところをよく観察しながら、地元の方々にそういう情報網を持って対応していきたいなと思っています」

県のまとめによりますと、昨年度、捕獲されたイノシシは238頭で、前の年度の3倍ほどにのぼっています。

生息域を広げて数を増やしているとみられているイノシシ。

農業被害を抑えるための取り組みが、県内でも進められています。

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