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シンベト元諜報員が非難 イスラエルの破壊者は「ネタニヤフ首相」

AFPBB News 2024年7月5日 20時39分

【AFP=時事】イスラエルの最大都市テルアビブ(Tel Aviv)の陸橋の上で、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相が率いる国の未来を憂える人々が、小規模の抗議集会を行っていた。


 通りがかる車はこの集団に向けてクラクションを鳴らし、陸橋の下をスクーターで通った男性は「裏切り者!」と叫んでいった。


 グループの中心人物はイスラエルの治安機関シンベト(Shin Bet)の元諜報(ちょうほう)員、ゴネン・ベン・イツハク(Gonen Ben Itzhak)氏(53)だ。


 イツハク氏はかつて、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)の共同創設者の息子を情報提供者として取り込んだこともある。


 だが今は、ネタニヤフ首相と右派連立政権に反対し、街頭で声を上げている。


 イスラエル中部モディイン(Modiin)の自宅でAFPのインタビューに応じたイツハク氏は、「ネタニヤフはイスラエル国家にとって最大の危険人物だ。私は第2次インティファーダ(反イスラエル闘争、2000~05年)のときに大物テロリストたちを逮捕した。テロリストとは何かを知っている。ネタニヤフはイスラエルを破滅に引きずり込んでいる」と述べた。


 また、多くの人がネタニヤフ首相の退陣を望む理由の一つに「非常に重要な米国との関係を破壊していること」があると指摘し、武器供給をめぐる問題でジョー・バイデン(Joe Biden)大統領に不満を表明したことを例に挙げた。




■「ハマスの王子」を協力者に


 イツハク氏は1990年代、イツハク・ラビン(Yitzhak Rabin)首相が暗殺された後にシンベトに入庁した。


 シンベト時代は、ハマスの共同創設者シェイク・ハッサン・ユセフ(Sheikh Hassan Yousef)氏の長男、モサブ・ハッサン・ユセフ(Mosab Hassan Yousef)氏の「ハンドラー(指令役)」となった。息子のモサブ氏は、ハマスのシンボルカラーにちなみ、「緑の王子」と呼ばれていた。


 彼の協力を得たイツハク氏は、パレスチナ武装勢力を追跡し、自治政府主流派ファタハ(Fatah)の指導者マルワン・バルグーティ(Marwan Barghouti)受刑者を逮捕するなどして数々の自爆テロを阻止した。


 イツハク氏は、昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲は、ユセフ氏のような二重スパイから計画が報告されていれば防げたとし、イスラエルの安全保障当局のエリート層はハマスを見くびっていたと指摘する。


「何か問題が起きていることを察知するためには、長い時間をかけて仕込んだスパイが必要だ。しかし、わが国にはそれがなかったようだ」


「わが国は、敵は愚かだと考えている。だが、非常に言いにくいことだが、ハマスの方が賢かった」


 イツハク氏は、今こそガザ地区の状況を変え、紛争に終止符を打ち、マハムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長率いるパレスチナ自治政府(PA)に国際的な支持を集める時だと強く信じている。




■現状は爆発寸前


 イツハク氏は、2018年には反汚職デモで首相の車列の前に飛び出し、自らの古巣である治安機関に拘束されたこともある。


「イスラエル軍は(パレスチナ自治区)ヨルダン川西岸(West Bank)を支配し、ガザを支配している。もうたくさんだ。解決策を見つける必要がある」と語る。


 ネタニヤフ首相は政権を維持するために和平プロセスを阻止し、ハマスを支えているとイツハク氏は非難する。「ネタニヤフは自分のこと、自らの汚職問題、政治的に生き残る方法にしか興味がない」


 また極右イタマル・ベングビール(Itamar Ben Gvir)国家治安相が警察を「私兵」のように使うことを、ネタニヤフ氏が容認し、テルアビブで毎週行われている反政権デモを妨害させているとも主張した。


 イスラエルの極右政党「ユダヤの力」の党首を務めるベングビール氏は、その過激的な思想でイスラエル軍から入隊を拒否され、治安機関の捜査対象でもあった。そのベングビール氏とネタニヤフ首相の忠誠関係に、イツハク氏は疑問を禁じ得ない。


「今日、イスラエルは内部から破壊されている。彼(ネタニヤフ首相)がすべてを破壊している」と述べるイツハク氏。ネタニヤフ氏が超国家主義者になびけばなびくほど、イスラエルの安全保障は弱体化すると指摘した。


 イツハク氏は「今はすべてが爆発寸前だ」とし、「ネタニヤフに言おう、辞任せよ。それがイスラエル国民にとって最大の助けになる」と強い口調で訴えた。

【翻訳編集】AFPBB News

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