【AFP=時事】2023年10月7日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配しているイスラム組織ハマス(Hamas)がイスラエル史上最多の死者を出す越境攻撃を仕掛けたことを機に、イスラエル軍は報復攻撃を開始した。
ハマスの保健当局によると、イスラエル軍の空爆と地上攻撃によるガザ地区の死者は9月22日時点で4万1000人を超え、国連(UN)も信ぴょう性の高い数字だと認めている。
イスラエル軍とハマスの戦闘開始から約1年。主だった出来事を振り返る。
■ハマスの奇襲
2023日10月7日明け方、数百人のハマスの戦闘員がイスラエルに侵入した。
イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計では、前例のない越境攻撃による死者数は、拘束下などで死亡した人質も含め、1205人。大半は民間人だった。
ハマスは251人をガザ地区に連行。1年後の9月23日時点で117人が解放され、70人の死亡が確認された。64人が依然として拘束されている。
■地上侵攻
イスラエルはガザ地区への爆撃を開始。10月13日には、ガザ北部の民間人に対し、南部に退避するよう要請した。
国連の推計によれば、最終的にはガザ人口240万人のほぼ全員が避難を余儀なくされた。
27日、イスラエル軍は地上攻撃を開始。
11月15日には、ガザ地区最大のシファ(Al-Shifa)病院を急襲。イスラエル側は、同病院にハマスの司令部があると主張しているが、ハマス側は否定している。
■戦闘休止と人質交換
11月24日からは、計7日間に及ぶ戦闘休止が実現。
ハマスはイスラエルの刑務所に拘禁されていたパレスチナ人240人との交換条件として、計105人の人質を解放した。
イスラエルはエジプト経由でのガザ地区への人道支援物資の追加搬入を許可したが、ガザの人道状況は依然として危機的な状態にある。
戦闘休止期間が終了すると、イスラエルはガザ地区南部に軍事行動を拡大した。
■届かない支援物資
2024年2月29日、ガザ保健当局は、ガザ北部で食糧支援物資の輸送車両に殺到した住民にイスラエル軍が発砲し、120人以上が死亡したと発表。イスラエル側の兵士は、ガザの住民が「何らかの危険な行動」を取る可能性があると判断したためと主張した。
3月上旬からは、数か国がガザに支援物資を空中投下し、同15日には、キプロスからの「海上回廊」を利用した最初の支援船が到着した。
しかし4月1日、食料支援を行っていた米慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(World Central Kitchen)」の職員ら7人がイスラエル軍の空爆で死亡。イスラエル軍は「悲劇的なミス」だと発表した。
■対立強めるイスラエルとイラン
4月1日、在シリア・イラン大使館領事部の建物が空爆され、イラン革命防衛隊(IRGC)の幹部を含む7人が殺害された。
イランはイスラエルに報復を行うと明言。同月13日、無人機とミサイルで同国を攻撃した。
しかし、大半のミサイルは迎撃されたとみられている。
■ガザ地区南部に地上侵攻
5月7日、イスラエル軍はガザ地区最南端ラファ(Rafah)への地上侵攻を開始した。
さらに、エジプトとガザ地区を結ぶ検問所のパレスチナ側を占拠。支援物資の主要な搬入口である同検問所を封鎖し、市民が避難生活を送っているテントや学校などの安全地帯を攻撃した。
7月13日には、ガザ地区南部ハンユニス(Khan Yunis)への攻撃でハマスの軍事部門トップ、ムハンマド・デイフ(Mohammed Deif)氏を殺害したと発表した。
■緊張高まる中東
7月20日、イスラエルは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派(Huthis)がテルアビブを無人機で攻撃し、死者が出たことへの報復としてイエメンを攻撃した。フーシ派は、ガザへの連帯を示し、紅海やアデン(Aden)湾を航行する船舶への攻撃を繰り返している。
一方、イスラエルとレバノンの国境では、イスラエル軍と、イランが支援するイスラム教シーア派(Shiite)組織ヒズボラ(Hezbollah)との交戦が激化。
27日、イスラエルが占領するゴラン高原(Golan Heights)でロケット弾攻撃により若者12人が死亡した事態を受け、イスラエルは報復を宣言。ヒズボラは関与を否定した。
30日、ヒズボラのフアド・シュクル(Fuad Shukr)司令官がイスラエルの報復攻撃により、レバノンの首都ベイルート郊外で死亡。
さらに翌日、イランでハマスの政治的指導者イスマイル・ハニヤ(Ismail Haniyeh)氏が殺害された。ハマス側はイスラエルによる暗殺だと非難。後任に、ガザ地区トップを務めるヤヒヤ・シンワル(Yahya Sinwar)氏を選出した。
■進まぬ停戦交渉
8月16日、米国は新たな停戦案を提示したが、ハマスは受け入れ拒否。エジプト、カタールが仲介し、22日に交渉が再開した。
一方で25日、イスラエルはレバノンへの空爆で、ヒズボラの大規模攻撃を阻止したと発表。ハマスはイスラエルに対し、数百のロケット弾と無人機で攻撃を仕掛けたと主張した。
■ヨルダン川西岸
イスラエルの治安部隊は8月28日、占領下のヨルダン川西岸(West Bank)北部で「対テロ作戦」を開始した。
ガザ地区から人質6人の遺体を収容したとの軍の発表を受け、9月2日にはイスラエル国内で、人質解放を求めて政府に抗議する大規模抗議が行われた。だが、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、停戦交渉での「譲歩」を拒否する姿勢を改めて示した。
■攻撃がレバノンに拡大
9月17日と18日、レバノン各地でヒズボラのメンバーが使用するポケットベル(ポケベル)やトランシーバーが相次いで爆発し、39人が死亡、3000人近くが負傷した。ヒズボラはイスラエルの犯行だと非難している。
イスラエルは、ガザでの戦闘目標を拡大し、レバノンと国境を接する国内北部の安全を確実にしたいとの考えを示していたが、通信機の爆発に関しては沈黙を貫いている。
20日には、イスラエル軍がレバノンの首都ベイルートを空爆。ヒズボラの精鋭「ラドワン部隊(Radwan Force)」を率いていた司令官を含む、16人の戦闘員を殺害したと発表した。レバノン保健省は、この攻撃で少なくとも45人が死亡したと発表している。
以来、イスラエルとヒズボラの衝突は激化。各国は、全面戦争を回避するよう双方に呼び掛けている。
■ヒズボラ指導者の死
ヒズボラに対する一連の爆撃が激化する中、9月27日、イスラエルがベイルート南郊にあるヒズボラの拠点を攻撃し、同組織の指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師と、イラン革命防衛隊(IRGC)の指揮官が殺害された。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師は「ナスララ師の死は無駄にはならない」と誓った。
■イランがイスラエルに大規模ミサイル攻撃
10月1日、イランはナスララ師とハニヤ氏の殺害に対する報復として、イスラエルに対して大規模なミサイル攻撃を行ったと革命防衛隊が発表。
この攻撃は、イスラエルがレバノン南部でヒズボラに対する限定的な地上作戦の実施を発表した翌日に行われた。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ(Daniel Hagari)報道官は、「イランの攻撃には報いがある。われわれには計画があり、われわれが決めた場所と時間に作戦を実行する」と明言した。
【翻訳編集】AFPBB News
ハマスの保健当局によると、イスラエル軍の空爆と地上攻撃によるガザ地区の死者は9月22日時点で4万1000人を超え、国連(UN)も信ぴょう性の高い数字だと認めている。
イスラエル軍とハマスの戦闘開始から約1年。主だった出来事を振り返る。
■ハマスの奇襲
2023日10月7日明け方、数百人のハマスの戦闘員がイスラエルに侵入した。
イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計では、前例のない越境攻撃による死者数は、拘束下などで死亡した人質も含め、1205人。大半は民間人だった。
ハマスは251人をガザ地区に連行。1年後の9月23日時点で117人が解放され、70人の死亡が確認された。64人が依然として拘束されている。
■地上侵攻
イスラエルはガザ地区への爆撃を開始。10月13日には、ガザ北部の民間人に対し、南部に退避するよう要請した。
国連の推計によれば、最終的にはガザ人口240万人のほぼ全員が避難を余儀なくされた。
27日、イスラエル軍は地上攻撃を開始。
11月15日には、ガザ地区最大のシファ(Al-Shifa)病院を急襲。イスラエル側は、同病院にハマスの司令部があると主張しているが、ハマス側は否定している。
■戦闘休止と人質交換
11月24日からは、計7日間に及ぶ戦闘休止が実現。
ハマスはイスラエルの刑務所に拘禁されていたパレスチナ人240人との交換条件として、計105人の人質を解放した。
イスラエルはエジプト経由でのガザ地区への人道支援物資の追加搬入を許可したが、ガザの人道状況は依然として危機的な状態にある。
戦闘休止期間が終了すると、イスラエルはガザ地区南部に軍事行動を拡大した。
■届かない支援物資
2024年2月29日、ガザ保健当局は、ガザ北部で食糧支援物資の輸送車両に殺到した住民にイスラエル軍が発砲し、120人以上が死亡したと発表。イスラエル側の兵士は、ガザの住民が「何らかの危険な行動」を取る可能性があると判断したためと主張した。
3月上旬からは、数か国がガザに支援物資を空中投下し、同15日には、キプロスからの「海上回廊」を利用した最初の支援船が到着した。
しかし4月1日、食料支援を行っていた米慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(World Central Kitchen)」の職員ら7人がイスラエル軍の空爆で死亡。イスラエル軍は「悲劇的なミス」だと発表した。
■対立強めるイスラエルとイラン
4月1日、在シリア・イラン大使館領事部の建物が空爆され、イラン革命防衛隊(IRGC)の幹部を含む7人が殺害された。
イランはイスラエルに報復を行うと明言。同月13日、無人機とミサイルで同国を攻撃した。
しかし、大半のミサイルは迎撃されたとみられている。
■ガザ地区南部に地上侵攻
5月7日、イスラエル軍はガザ地区最南端ラファ(Rafah)への地上侵攻を開始した。
さらに、エジプトとガザ地区を結ぶ検問所のパレスチナ側を占拠。支援物資の主要な搬入口である同検問所を封鎖し、市民が避難生活を送っているテントや学校などの安全地帯を攻撃した。
7月13日には、ガザ地区南部ハンユニス(Khan Yunis)への攻撃でハマスの軍事部門トップ、ムハンマド・デイフ(Mohammed Deif)氏を殺害したと発表した。
■緊張高まる中東
7月20日、イスラエルは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派(Huthis)がテルアビブを無人機で攻撃し、死者が出たことへの報復としてイエメンを攻撃した。フーシ派は、ガザへの連帯を示し、紅海やアデン(Aden)湾を航行する船舶への攻撃を繰り返している。
一方、イスラエルとレバノンの国境では、イスラエル軍と、イランが支援するイスラム教シーア派(Shiite)組織ヒズボラ(Hezbollah)との交戦が激化。
27日、イスラエルが占領するゴラン高原(Golan Heights)でロケット弾攻撃により若者12人が死亡した事態を受け、イスラエルは報復を宣言。ヒズボラは関与を否定した。
30日、ヒズボラのフアド・シュクル(Fuad Shukr)司令官がイスラエルの報復攻撃により、レバノンの首都ベイルート郊外で死亡。
さらに翌日、イランでハマスの政治的指導者イスマイル・ハニヤ(Ismail Haniyeh)氏が殺害された。ハマス側はイスラエルによる暗殺だと非難。後任に、ガザ地区トップを務めるヤヒヤ・シンワル(Yahya Sinwar)氏を選出した。
■進まぬ停戦交渉
8月16日、米国は新たな停戦案を提示したが、ハマスは受け入れ拒否。エジプト、カタールが仲介し、22日に交渉が再開した。
一方で25日、イスラエルはレバノンへの空爆で、ヒズボラの大規模攻撃を阻止したと発表。ハマスはイスラエルに対し、数百のロケット弾と無人機で攻撃を仕掛けたと主張した。
■ヨルダン川西岸
イスラエルの治安部隊は8月28日、占領下のヨルダン川西岸(West Bank)北部で「対テロ作戦」を開始した。
ガザ地区から人質6人の遺体を収容したとの軍の発表を受け、9月2日にはイスラエル国内で、人質解放を求めて政府に抗議する大規模抗議が行われた。だが、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、停戦交渉での「譲歩」を拒否する姿勢を改めて示した。
■攻撃がレバノンに拡大
9月17日と18日、レバノン各地でヒズボラのメンバーが使用するポケットベル(ポケベル)やトランシーバーが相次いで爆発し、39人が死亡、3000人近くが負傷した。ヒズボラはイスラエルの犯行だと非難している。
イスラエルは、ガザでの戦闘目標を拡大し、レバノンと国境を接する国内北部の安全を確実にしたいとの考えを示していたが、通信機の爆発に関しては沈黙を貫いている。
20日には、イスラエル軍がレバノンの首都ベイルートを空爆。ヒズボラの精鋭「ラドワン部隊(Radwan Force)」を率いていた司令官を含む、16人の戦闘員を殺害したと発表した。レバノン保健省は、この攻撃で少なくとも45人が死亡したと発表している。
以来、イスラエルとヒズボラの衝突は激化。各国は、全面戦争を回避するよう双方に呼び掛けている。
■ヒズボラ指導者の死
ヒズボラに対する一連の爆撃が激化する中、9月27日、イスラエルがベイルート南郊にあるヒズボラの拠点を攻撃し、同組織の指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師と、イラン革命防衛隊(IRGC)の指揮官が殺害された。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師は「ナスララ師の死は無駄にはならない」と誓った。
■イランがイスラエルに大規模ミサイル攻撃
10月1日、イランはナスララ師とハニヤ氏の殺害に対する報復として、イスラエルに対して大規模なミサイル攻撃を行ったと革命防衛隊が発表。
この攻撃は、イスラエルがレバノン南部でヒズボラに対する限定的な地上作戦の実施を発表した翌日に行われた。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ(Daniel Hagari)報道官は、「イランの攻撃には報いがある。われわれには計画があり、われわれが決めた場所と時間に作戦を実行する」と明言した。
【翻訳編集】AFPBB News