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西興一朗「ウルトラマンアーク」で4大特撮制覇 アバレンジャーから20年、未来につなげるヒーローの力

シネマトゥデイ 映画情報 2024年7月13日 9時30分

 ニュージェネレーションウルトラマンシリーズ通算12作目となる、新テレビシリーズ「ウルトラマンアーク」の放送がついにスタートした。同作で怪獣防災科学調査所(SKIP)の所長・伴ヒロシを演じているのは、かつてスーパー戦隊シリーズ「爆竜戦隊アバレンジャー」でアバレッド/伯亜凌駕役を務めた西興一朗だ。ヒーローから一転、本作ではどのような役柄を演じているのか。放送に合わせてインタビューに応じた西が、特撮作品や「ウルトラマンアーク」についての思いを語った。

スーパー戦隊からウルトラマンへ

 西といえば、昨年出演したVシネクスト『爆竜戦隊アバレンジャー20th 許されざるアバレ』も大いに話題になった。「何よりファンの方に喜んでいただけたので、それがすごく嬉しかったです」とその手応えを語る。スーパー戦隊シリーズで主演を務めただけあり、東映特撮のイメージが強い西だが、ウルトラマンシリーズについては「もちろん、子供の頃から大好きでした。僕がよく覚えているのは、当時再放送していた『ウルトラマンタロウ』。後は『ウルトラセブン』も観ていた記憶があります」と振り返る。

 1児の父でもある西だが、近年は親子揃って「ウルトラマンデッカー」にハマっていたという。奇しくも「デッカー」には同じ戦隊OBの谷口賢志がデッカー・アスミ役(第14&15話)で出演しており、「彼はスーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマンと3大特撮を制覇しているんですよね。僕は変身こそしてないけど、宇宙刑事シリーズ(※『宇宙刑事シャリバン NEXT GENRATION』)にも出演しているので、『ウルトラマンアーク』で4大特撮制覇ですよ!」と胸を張る。

 「アーク」への出演は、前述した「デッカー」に興味を持ったことがきっかけになった。「『デッカー』を観て、自分も出てみたいとマネージャーに意向を伝えていたんです。だけど、仮に実現してもゲストくらいで、まさかレギュラーだとは思ってもみませんでした。やっぱり自分の子供に喜んでもらいたかったんですよね」と出演経緯を語る。

コミカルな所長でも「決めるときは決める」

 本作では、いわゆる防衛隊の活躍がメインではなく、怪獣の出現予測や事前調査を担う怪獣防災科学調査所(SKIP)がドラマの中心となる。企画概要を聞いた西は、「SKIPが民間企業のように描かれているのが面白いですよね。怪獣を災害と捉えているのも時代性を感じる要素ですし、その中で人間がどういう風に生活することができるのか。そういったことを踏まえた内容にとても興味を抱きました」と作品についての印象を述べた。

 自身が演じるヒロシ所長については、「SKIPの中ではトップだけど、決して高圧的な人間ではない。若いメンバーにも同じ目線で接していて、SKIP所員同士の仲がいいチームみたいで、そんな中、ヒロシ自身は少しおとぼけなところ、コミカルな部分、その両方を織り交ぜながら、決めるときは決める。そういった役柄です」と力を込める。「最初こそ多少手探りのところもありましたが、レギュラーキャストはみんなフワフワしたところがあって、役柄を通しても、それが見えたほうが家族っぽい感じが見えるのかなって。僕自身は割とみんなの芝居に乗っからせてもらっている気がします」

 SKIPのメンバーには、お揃いのTシャツや帽子、ジャケットが衣装として用意されており、その着こなしも役柄の個性を際立たせるための一要素となっている。「ジャケットも今は割とオーバーサイズで着たりしますが、ヒロシはなんだかんだで、昭和のおっさんなので(笑)、少し小さいサイズを選んで着させてもらいました。髪の毛も全然セットしてないし、あまり格好よく見えない方がいい。あくまで気のいいおじさんです」

おじさんが悪目立ちするのはよくない

 西は本作の直前まで『アバレンジャー20th』の撮影でヒーローを演じていたこともあり、役づくりのためにパンプアップした肉体を「アーク」出演のために削ぎ落す必要があった。

 「なるべく若く見せたくなかったんです。筋肉を落として、少しだけ太りました。それこそ、ヒロシの専門は地質学で、役柄としては学者肌なんです。むしろ、ガリガリに見えるくらい落とした方がいいかな? とも思ったのですが、さすがに無理でした(笑)」

 このように、逆の作業はなかなか珍しいのではないだろうか。「そうは言っても、特に無理はしてないんです。まずは筋トレをやめること。後は普段の生活に戻すこと。この二つですね。無理な摂生はしない。逆に太り過ぎてもそれはそれで違いますから」と肉体づくりについても独自のこだわりをうかがわせる。

 また、そうした役づくりは、若いキャストとのバランスを考えてのことでもあり、自身もヒーロー経験者だけに「こういう作品は特に、おじさんが悪目立ちするのはよくないんです」と謙虚な姿勢をのぞかせる。さらに、ウルトラマンアークに変身する主人公・飛世ユウマ役を務める主演の戸塚有輝にも、大きな期待を寄せている。

 「飛世ユウマは子供なら絶対に感情移入してくれるキャラクターで、有輝の純粋な気持ち、彼が本来持っている優しい心が役柄を通して表れています。とにかく有輝が主役で出てくれたことが、『アーク』が成立する上で、一番いいことだと思いました。『アーク』のレギュラー陣は有輝も含めて、3人ともとてもいい子たち。現場で心が浄化されました」

 撮影現場で奮闘する戸塚をはじめとした若手の仕事ぶりを、西は先輩俳優としてどのように見ていたのだろうか。「僕なんかは(「アバレンジャー」出演)当時は割と暗かったし、芝居だけしか頑張ってなかった。だけど、彼らは本当に真面目だし、こうした取材も含めて、与えられた全ての仕事に対して常に全力で取り組んでいる。時代の違いもあるかもしれないけど、やっぱり今の子たちは、仕事に対しての向き合い方が全然違います」

全映像作品の関係者が一度は見るべき!円谷プロの現場

 初回3話の監督を務めたのは、「ウルトラマンX」からニュージェネレーションシリーズに関わり、本作で初のメイン監督に抜擢された辻本貴則。初メイン監督作にかける辻本監督の意気込みは、西も撮影現場でひしひしと感じていた。

 「辻本さんは、随所で昭和のウルトラマンのテイストを狙っていて、たとえば、ウルトラマンアークのタイトルバックはCGではなく、カメラで素材撮りしているんです。それがまたすごく綺麗。そういったところひとつ取っても、強いこだわりを感じます。芝居に関しては、特に最初の頃は、役柄についてディスカッションを重ねて詰めていきました。主に話したのは、セリフの言い回しや『ヒロシはここまで強く言わない』といったニュアンスの部分。その辺りは今後の展開も見据えて判断してもらったところがあります」

 特撮作品に限らず、数多くのドラマや映画の現場を経験してきた西だが、円谷プロダクションの現場については「最高です。全映像作品の関係者は一度見たほうがいい」と強調する。「非常に撮影しやすい環境で、キャストに対してこんなにも気遣ってくれるのかと思いました。だいたい夜遅くなったりすると、現場はどうしても、人と人の集まりだから、ギスギスするものだけど、およそ半年にわたる撮影期間中、そういうことは一切ありませんでした。何よりどのスタッフもウルトラマンに対する愛情が深く、後はとにかく弁当が美味い(笑)。俳優としては、それだけでテンションがあがるものなんです! 本当にご褒美みたいな現場でした」

 また、ウルトラマンエックスからアークまで、ニュージェネの主役ウルトラマンの大半でスーツアクターを務めている岩田栄慶とは『アバレンジャー20th』でも共に仕事をしていた。「岩田さんは『アバレンジャー20th』でアバレキラーを演じていました。彼は本当に動きがキレイで、他のアクターさんとは一線を画す魅力があります。今回、ウルトラマンアークが怪獣と戦う場面の迫力はもちろんのこと、アークを見ていると、人間とヒーローのいい感じの間を狙っているというか。動きの綺麗さにはヒーロー要素を感じるし、細かな動作から人間味を感じます。あとは、やっぱりウルトラマンは大きいのがいいですよね。戦隊にもロボが登場するけど、ウルトラマンは巨大戦がメインじゃないですか。そこに独特のリアリティーやカタルシスを感じます」

 『アバレンジャー20th』から「アーク」まで企画段階も含めると、ここ4年近くは特撮ヒーロー作品に関わり続けている西。「やはりお子さんに喜んでもらいたい気持ちが強くあったからです。そして、その思い出が未来につながれば……。それこそ『アーク』もいつか20周年ができたらと思うくらいで、彼らにも是非僕らが味わった気持ちを体験してもらいたい」と前のめりな姿勢を見せる。

 「『アーク』はユウマの想像力で変身する設定なので、いわば誰もがヒーローになれるチャンスがある。お子さんにはそういった視点で是非観てもらえればと思いますし、とにかく『世の中のヒーローは君たちだよ』といったメッセージが伝われば嬉しいです。僕が演じるヒロシに関しては、後々一味違う面が描かれる機会があるのですが、あくまで面白いおじさんだと思ってもらえれば。悪目立ちしないように頑張っています!」と気さくな笑顔で語っていた。(取材・文:トヨタトモヒサ)

「ウルトラマンアーク」毎週土曜午前9時~テレ東系6局ネットほかにて放送中

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