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大沢たかお「このために6年王騎を演じてきた」 『キングダム』最終章は忘れられないエピソード

シネマトゥデイ 映画情報 2024年7月5日 7時15分

 原泰久の累計発行部数1億部を突破する人気漫画を山崎賢人(※「崎」は「たつさき」)主演で実写映画化したシリーズの第4弾『キングダム 大将軍の帰還』(7月12日公開)で、原作ファンの間でも人気の高いキャラクター・王騎を演じた大沢たかおが、6年にわたって演じてきたシリーズの最終章に込めた想いを明かした。

 紀元前・中国春秋戦国時代を舞台にした本作で大沢演じる王騎は、中華全土にその名を轟かす秦国随一の大将軍。天下の大将軍になる夢を抱く戦災孤児の少年・信(山崎)が憧れる存在でもある。本作では前作『キングダム 運命の炎』(2023)で戦場に本格復帰した王騎がついにその怪物ぶりを発揮し、超重量級のアクションも披露。王騎の過去も明かされる本作は、シリーズ4作目にして初めて見せる姿も多い。王騎は独特の雰囲気を纏い、台詞の言い回しも特徴的なキャラクターだけに、喜怒哀楽、特に今作で印象的な王騎の“怒り”を表現するのは難しかったように思うが、大沢は「1作目の時から王騎は深いところでずっと怒っていた」と明かす。

 「前作までの王騎は、ちょっと笑って高みの見物みたいなことが多かったので、直接的な表現は今回が初めてだけど、その奥底にはずっと怒りや悲しみがベースにあったんです。今回ようやく秘めていた感情を出せたという感覚ですから、奥底の感情を表には見せずに演じていた前作までの方が、実は難易度が高かった。1作目の時から摎(キョウ)との関係や彼女を失ったことへの思いが、常にベースにありました」

 摎は、今作で初めて登場するキャラクター。かつての秦国六大将軍の一人であり、新木優子が演じている。出自に大きな秘密があり謎の多い武将だが、その秘密を知った上で成長を見守ってきた王騎にとって、かけがえのない女性だった。しかし彼女は数年前の戦場・馬陽で命を落とした。

 「王騎は戦場を離れていた間も、摎のかたきを取らないと自分の戦いは終われないと、ずっと一貫して思っていただろうと思うんです。そういうシーンや台詞がなくとも、1作目から摎の存在は大きかった」と大沢が語る通り、王騎が今回の馬陽の戦いで総大将を引き受けたのは摎の死が深く関わっており、そこには因縁の宿敵・ホウ煖(※ホウはまだれに龍)も絡んでいる。大沢はまだシリーズ化が決まっていなかった1作目から、今作に向かって王騎を作り込んできたという。

 「原作を読ませていただいた時も、摎と王騎のエピソードはすごく印象的でしたし、もしもシリーズ化できたら、4作目くらいでそこが描かれるだろうと想像しながら、1作目から演じていました。そういう意味では今作でようやくいろんなものの整理がついた感じでもありますね」

 王騎の宿敵・ホウ煖は、前作のラストで、信らの前に突如現れた圧倒的な武力を誇る敵将で、吉川晃司が演じている。クライマックスでは王騎とホウ煖の一騎打ちも大きな見せ場となっており、大沢は佐藤信介監督の「重量級の戦いがしたい」という要望に応えてみせた。

 「今回は、冒頭からありとあらゆる局面でクライマックスの連続。その中でも最大のクライマックスとなるのが王騎とホウ煖の戦いで、日本映画ではあまり見たことのない超重量級同士の戦いを見せることが一つのテーマでした。90キロ近い僕と体の大きな吉川さんが長い鉾を振り回してバンバン当て合うわけだから、鉾も壊れるし、多少はケガもするし痣もできる。練習でも大きなスタジオを借りないと鉾が振れないし、この戦いがシリーズにとっていかに大事なシーンになるかはみんなわかっていたので、5~6日間かけて朝から晩までキャスト、スタッフ一丸となって撮影しました」

 今作で描かれる物語は、原作漫画でも特に人気の高いエピソード。大沢も7~8年前に王騎役のオファーを受けた際に原作を読み、衝撃を受けたという。

 「僕が演じるかどうかにかかわらず、長い原作シリーズ中でも特に大事な、忘れられないエピソードで、おそらく原作ファンの方にとっても特別なもの。あまり見たことのないすごい展開だった。ここまで実写化できるかは夢でしかなかったけど、万が一できた時には、読後に僕が感じた感情かそれ以上のものを、観客の皆さんに受け止めてもらえたり、残せるように実写化したい。それが最初に決めた僕が王騎を演じる上でのルールであり、使命だと思った。それが果たせれば、自分がやった意味が少しはあるし、役割として正しかったと思えるだろうと。そのためにずっとやってきたので、長かったですね(笑)」

 これまでも大沢は王騎を演じることについて、事前に芝居を固めず、撮影現場でも常に試行錯誤してきたというが、それは1作目から高めてきた感情をようやく発揮できた今作でも変わらなかったようだ。

 「これだけ長く演じてきた役ですから、馴染ませて自然に演じることも芝居の選択肢としてはあるのでしょうが、それだと見てくれた方に大事なものが届かない。特に王騎は、僕が頭の中の計算だけでやったような芝居では難しい。想像がつかない“バケモノ”のような王騎将軍を演じるには、毎シーン、毎カット、計算からわざとはみ出していくような表現にチャレンジして、ある種、自分も“バケモノ”にならないといけない。だから、毎日の撮影が終わると『困ったなあ、王騎将軍こっちへ行っちゃったかあ』『明日の撮影どうしよう』みたいになる(笑)。でもその連続が、“バケモノ”を作りだし、山崎君をはじめ共演者の皆さんも何が飛び出してくるかわからない王騎の芝居にリアクションしてくれた。そういう連鎖が作品自体を見たことのないすごいものにしていくことにもなると思ったんです」

 前作『キングダム 運命の炎』公開時の大ヒット御礼舞台挨拶で主演の山崎と大沢が登壇した際、大沢からねぎらいの声をかけられた山崎が感極まり涙したエピソードが話題を呼んだが、大沢はこの時の思いをこう振り返る。

 「『キングダム』の実写化が発表された頃は賛成の声が少なかった。特に漫画の実写化作品の主演も多い山崎君には、作品の成否の責任を背負わせるような理不尽な声も多かったし、辛かったと思うんですね。彼をこの作品で成功させるのも助演の僕の仕事だと思ったし、彼の過去の作品も全部観て、どうしたら今までの山崎君とは違うような表情を引き出せるのかなとも考えた。それで王騎と信のような距離感でいることを意識していたんだけど、彼にとっては冷たく思えたかもしれない。でも僕は最終的に彼が勝てばいいと思った。そういう考えで距離をとって接していたこともあるので悪かったなとは思ったけど、『キングダム』という超大作を引っ張る絶対的主役として成長した立派な彼の姿を見て、さまざまなことを乗り越えて素晴らしい俳優になったという、それまで言ったことのない言葉をかけました」

 原作ではまだ序盤だが、実写映画シリーズとしては一つの区切りを迎える最終章。これだけの超大作シリーズを原作ファンも満足させ、興行的にも成功させてきたことは、観客を楽しませる作品にこだわってきた大沢にとっても大きな財産になったようだ。「7~8年位前から、今作にまで辿り着くのが目標だったので、この『キングダム』シリーズは、自分が俳優をやってきた中での宝物というか、人生にとっても大きな誇りになった作品」だと言い、信頼するスタッフ、キャストと共に作り上げた映画『キングダム』の集大成的な本作の出来栄えに大きな自信を窺わせていた。(取材・文:天本伸一郎)

ヘアメイク:神川成二 スタイリスト:黒田領

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