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『キングダム』山崎賢人が「頑張ろう」と言わない理由 信とシンクロする座長のスタンス語る

シネマトゥデイ 映画情報 2024年7月15日 7時15分

 原泰久の人気漫画を実写映画化したシリーズの第4弾『キングダム 大将軍の帰還』(公開中)で主演を務めた山崎賢人(※「崎」は「たつさき」)。同シリーズをはじめ『ゴールデンカムイ』『陰陽師0』など大作の主演が続く山崎が、座長として貫いていることを語った(※一部ネタバレあり)。

 紀元前の中国春秋戦国時代が舞台の『キングダム』シリーズは、天下の大将軍になる夢を抱く元下僕の少年・信(山崎)が、秦国の若き王・エイ政(後の始皇帝/吉沢亮※エイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくり)の中華統一を目指す戦いの中で成長していくアクション。

~以下、ネタバレを含みます~

 シリーズ最終章となる本作を鑑賞した山崎は、前作『キングダム 運命の炎』(2023)のラストから続く冒頭、野営中の飛信隊を襲撃した敵将・ホウ煖(吉川晃司※ホウはまだれに龍)の攻撃で意識を失った信を、飛信隊の仲間が身を挺して守る場面で「まずひと泣きした」そうだが、実はその撮影時にも泣いたという。撮影中に芝居以外で思わず泣くことは他になかったそうだが、それほど気持ちが入った理由とは?

 「“信を絶対に生かす、信を守る”という飛信隊の熱い思いや団結力をひしひしと感じたんですよね。“みんな優しいなあ”“いいシーンだなあ”と。撮影現場では、ずっと信として居るので飛信隊の仲間を演じる皆さんもそれぞれの役にしか見えないんです。だからみんなと過ごしてきた日々を思い出したりもしていたのかも。でも、気絶した芝居を継続しなければという冷静な気持ちもあるので号泣ではないです(笑)。この時は信と自分が混ざり合って、どっちかわからない感覚かもしれないし、めちゃくちゃ原作漫画を読みこんでいるだけに、読んだ時の思いも浮かんでいたのかも。その撮影現場の雰囲気自体もめっちゃよかったので、いろいろな思いが積み重なったんでしょうね」

 飛信隊を率いる信は、隊長としても成長してきた。山崎は自身と信がシンクロしている部分が多いことを常々語っているが、座長としても学んだことはあるのだろうか。

 「信は隊長でリーダーではありますが、自分自身が一番頑張る人。だから自分もシンプルに撮影現場では一生懸命に一番頑張ろうと思っています。信の立ち位置は物理的にも先頭ですから、先頭で思いっきりアクションを成功させる姿を見せたい。そうすればみんなの士気も上がるかなと。ですから“みんな頑張ろうぜ!”みたいなことは言いません。もともと、この作品への熱が高くやる気に満ち溢れている方たちばかりですから、“じゃあ撮影行きますか~!”“頑張りましょうね~”くらいの感じで、あとはもう自分が信としてやるべきことをやるだけです」

 率先して頑張る背中を見せることでスタッフやキャストも盛り上がり、ついてくる。それを見て自分自身もまた頑張ろうと思えるという山崎に対して、撮影現場では常に平常心で、難しいアクションシーンの撮影などでもその成功や失敗に動じないと佐藤信介監督も語っている。それは意識的に心がけていることなのだろうか。

 「平常心は大事だと思います。それはこの作品に限らず、どの撮影現場でも頭の中は冷静でクールにいないとダメだなと。でもいいシーンを撮るためのプレッシャーも感じていますから普通に疲れていたり、失敗した時は“やだなあ”と思っていますよ(笑)。ただ、思い悩んでもしょうがないから、“やるしかないじゃん!”と自分の中で1個1個消化して、“次だ次!”と思って取り組んでいるのが、動じないように見えているのかもしれません。あとは、カットの声がかかっても監督からOKの声がかかるまでは次も行ける準備をしているから冷静でいられるんでしょうね」

 最終章の公開にあたり、シリーズを通して印象深いシーンを振り返ってもらうと、思い入れの強い作品だけに「難しいですね……」と悩みつつ、第1作に登場した信の亡き親友でエイ政と瓜二つの漂(吉沢亮)との場面をあげた。

 「信の原点には漂との関係があるので、漂とどれだけ仲良く見せるか、その別れをどれだけ悲しく見せるかという、漂との関係の描き方は大事だったなと。1作目の撮影は、先にエイ政との場面を撮っていましたから、信としてエイ政との関係を築き上げてから漂と向かい合うことができたのも逆に良かったのかなと思いますし、すごく印象に残っています」

 本作でニューヨーク・アジアン映画祭の「Best from the East Award」(素晴らしい演技を披露した俳優に与えられる賞)を日本人として初受賞した山崎は、「20代は『キングダム』シリーズとずっと一緒に生きてきた。ひねくれず真っ直ぐな信は、その立場やいろんなものが自分とリンクしているし、この作品にはずっと“成功するのか?”と疑われていた未知の領域を、みんなでぶち壊して作ってきた自信と喜びがある」とも述べ、約7年にわたって関わってきた長さも含めて特別な作品になったようだ。「最初は、信が“天下の大将軍になる”と言うのと同じように、自分も“すごい日本映画を作って、すげえ奴になりてぇ!”ぐらいの感じだったのが、次第にみんなで作ってきたことへの思いや、観てくださった人に感動を与えたいなど、いろんなことを思うようになってきました」と、観客の反響を実感した山崎自身が、多くの人の思いを背負って成長する信とシンクロするように取り組んできたのもわかる。

 「原作漫画にもある場面を演じる時には原作に答えがあると思っているので、自分の中でもその答えに自信を持った状態で演じることができたけど、2作目『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)の羌カイ(清野菜名※羌カイのカイはやまいだれに鬼)との洞窟での場面など、映画オリジナルのシーンやセリフでは難しく感じたこともありました。二人の距離の縮まるスピードが原作より速く、会って間もない人に“(死ぬなんて)ふざけんじゃねぇ! んなこと俺が許さねえぞ。おまえは間違ってる”なんて急に言えるのかなと。“このセリフ言いづらいな”とも一瞬思ったけど、“信だったら言えるな”とも思えたし、自分自身もファンの方々も信に言ってほしい言葉だろうなとも思えた。観ていただく方へのメッセージだとも思ったので、そういうこともすごく大事だなと思って演じるようになりました」

 「作品に込めた思いがこれだけストレートに観客の方に伝わる作品は少ない」「シリーズを重ねれば重ねるほど、スタッフやキャストみんなの気持ちが乗るし、観客の皆さんも一緒になって思いを重ねられる作品だから、どんどん面白くなるし感動する」とも語る山崎の熱い言葉の数々には、最終章を迎えたとはいえまだまだ尽きないシリーズへの溢れる意欲が感じられ、新章のスタートも期待せずにはいられない。(取材・文:天本伸一郎)

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