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【レビュー】『デッドプール&ウルヴァリン』はFOXユニバース真の完結編、『ノー・ウェイ・ホーム』級の衝撃再び

シネマトゥデイ 映画情報 2024年7月24日 18時2分

 マーベル・スタジオ最新作『デッドプール&ウルヴァリン』が24日、ついに日本公開を迎えた。旧20世紀FOXを代表する二大ヒーローが、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)初のR指定劇場映画として待望のタッグを結成した本作は、旧FOX作品へのラブレターであり、FOXユニバース真の完結編ともいえるMCU渾身の一作だ。

 下ネタ&Fワード上等、第四の壁を破壊して観客に語りかける“俺ちゃん”ことデッドプールが、家族向けのコンテンツを展開するディズニー傘下に入り、満を持してMCU入りを果たした。ディズニー作品になってもデッドプールのR指定ノリは健在で、序盤から血しぶき&残虐描写満載のアクション、ディズニー映画では考えられない過激な下ネタを連発し、変わらぬ暴れっぷりを見せてくれる。『アナと雪の女王』などの名作ディズニー映画にとどまらず、他社の話題作や人気キャラクターをスレスレの範囲でいじり倒すなど、切れ味が増したジョークに笑いが止まらない。一方で、MCUの複雑な事情や難解な固有名詞を自ら説明するなど、ストーリーテラーとしての役割も果たしてくれるので、マーベル初心者も安心して物語に入り込める。

 そんなデッドプールとタッグを組むことになるのは、『LOGAN/ローガン』(2017)で壮絶な最期を迎えたヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンだ。同作で華々しく引退したヒューが、再び肉体改造に励み、劇中ではFOX時代を彷彿する、キレのあるアクションを披露している。『LOGAN/ローガン』を敬愛するショーン・レヴィ監督が、同作に傷をつけず、リスペクトを込めてウルヴァリンを再登場させていることも評価に値する。また、本作のウルヴァリンは歴代で最も苦悩するヒーローとして描かれており、過去と向き合うシーンでのヒューの演技は観客の感情を何度も揺さぶる。

 レヴィ監督は、二大ヒーローを通して男の友情を活写している。序盤こそ自由奔放なデッドプールと怒りMAXのウルヴァリンは水と油な関係性だが、行動を共にする中で徐々に友情が芽生え、MCUにおける新たな名コンビとして成長していく。プライベートでも親交が深いライアン・レイノルズとヒューのやり取りをそのまま反映したかのような、スピーディーな会話劇も心地いい。息がピッタリな二人のバディアクションも爽快で、コメディーパートとの緩急も絶妙だ。ライアン&ヒューと何度もタッグを組み、キャリアを通して二人の姿を撮り続けてきたレヴィ監督の手腕が、遺憾無く発揮されている。

 そして、本作はディズニーのFOX買収によってマーベル・スタジオが所有することになった、20世紀FOX時代のヒーローに対するリスペクトも忘れない。ウルヴァリンはもちろん、彼が活躍した『X-MEN』シリーズにまつわる小ネタが散りばめられているほか、崩壊したFOXの企業ロゴを戦いの背景にするなど遊び心も満載だ。FOXユニバースへの愛は、映画の最後まで感じ取ることができるため、本編が終わった直後の退席は禁物。映画が終わった時、初めてこの作品が真の完結編だったということが実感できるはずだ。

 また、レヴィ監督が予告していたカメオ出演も随所で用意されており、そのボリュームや衝撃度は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に匹敵する。ネタバレは避けるが、全てのサプライズがストーリーに上手く結びつき、一切の無駄がない。MCU/FOXのヒーロー作品に造詣が深いほど、アッと驚く仕掛けになっており、全マーベルファンを満足させることだろう。

 “スーパーヒーロー映画疲れ”が指摘される昨今、MCUも『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)以降、マルチバースを展開するフェーズ4&5で苦戦を強いられ、劇場映画の興行成績にも影響が見られた。『デッドプール&ウルヴァリン』では、自虐ネタとしてこれらの問題に触れつつ、“マーベルの救世主”と自負するデッドプールが、観客に再び感動と興奮をもたらすことに成功している。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、本作からMCUのミュータント時代が開幕すると宣言しており、デッドプールやウルヴァリンを中心とするミュータントたちの今後の活躍が大いに期待できそうだ。(編集部・倉本拓弥)

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