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『ブレイド』から26年…ウェズリー・スナイプス62歳の波瀾万丈な役者人生

シネマトゥデイ 映画情報 2024年8月19日 7時3分

 ウェズリー・スナイプス主演のマーベル映画『ブレイド』(1998)が19日、テレビ東京系「午後のロードショー」(月~金、午後1時35分~)で地上波放送される。全世界で大ヒット中の新作映画『デッドプール&ウルヴァリン』のサプライズで再注目されているブレイドだが、スナイプスはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)よりずっと前に、この役を3度も演じているのだ。公開から26年、その後の彼には何があったのか。(以下、『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含みます)(文/猿渡由紀)

 スナイプスは、フロリダ州オーランド生まれ、ニューヨークのブロンクス育ち。12歳でマーシャルアーツを始め、空手5段の腕前を持つ。芸術に力を入れる高校に通い、ニューヨーク州立大学パーチェイス校でも芸術を専攻した。

 映画デビューは、スポーツコメディー『ワイルドキャッツ』(1985)。1987年には、マーティン・スコセッシが監督したマイケル・ジャクソンの「バッド」のミュージックビデオに出演。それがスパイク・リーの目に止まり、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)に声をかけられるも、もっと出番の多い『メジャーリーグ』(1989)を選ぶべく辞退。だが、その翌年には、リーの監督作『モ’・ベター・ブルース』(1990)でデンゼル・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ジャンカルロ・エスポジートらと共演。その次のリーの作品『ジャングル・フィーバー』(1991)では主演を獲得した。この映画はカンヌ映画祭でお披露目されている。

 その一方では、ストリート・バスケットボールプレイヤーを演じた『ハード・プレイ』(1992)、シルヴェスター・スタローンとの共演作『デモリションマン』(1993)をはじめ、『ボイリング・ポイント』(1993)や『マネートレイン』(1995)などでアクションの実力を発揮。ハリウッドの主役級スターにしっかり仲間入りをした彼に訪れたのが、マーベルのコミックを映画化する『ブレイド』だった。

 『ブレイド』では主演のほか、プロデューサーとマーシャルアーツ・コレオグラファーも兼任。マーベル・スタジオが最初の映画『アイアンマン』(2008)を送り出す10年前に公開されたこの映画は、ニューライン・シネマが製作した。批評はまずまずだったが、観客の評価は「A-」と高く、予算4,500万ドルにして全世界で1億3,000万ドルを売り上げるヒットとなった。

 2002年公開の『ブレイド2』は、ギレルモ・デル・トロが監督。全世界興収は1億5,500万ドルで、3部作で最高だ。その2年後には、このシリーズの脚本を書いてきたデヴィッド・S・ゴイヤーが監督も兼任する最終章『ブレイド3』(2004)が公開された。共演には、当時主にコメディー番組で知られていたライアン・レイノルズが名を連ねている。

 だが翌年、スナイプスは、ニューライン・シネマ、ゴイヤー、エグゼクティブ・プロデューサーのトビー・エメリッヒを相手に、500万ドルの損害賠償を求める訴訟を起こすのだ。スナイプスによれば、ゴイヤーが監督するとは撮影開始の6週間前まで知らされず、脚本への不満も聞き入れてもらえなかったとのこと。それらは契約に反する。ギャラの一部は未払いのままで、過去2作と比べて共演者が白人だらけで居心地が悪く、クルーの中に人種差別的なTシャツを着ている人がいてもゴイヤーは注意しなかったとも主張した。

 しかし、それからまもなく、スナイプス自身が裁判所に呼ばれるはめになってしまう。ふたりの仲間と共謀して行った脱税が発覚し、起訴されたのである。スナイプスは、1996年と1997年、多くのお金が戻ってくるよう虚偽の申告をしたほか、1999年から2004年にかけて、一度も税金申告をしていなかった。結果、スナイプスは有罪判決を受け、3年の懲役を言い渡された。

 刑務所入りをしたのは2009年12月。2013年4月に出所し、その後3か月は自宅監禁。裁判の間は国外に出ることができなかったため、ブラジルでロケを行う『エクスペンダブルズ』(2010)への出演は諦めざるを得なかった。だが、2013年の『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』で、ついにスタローンとの再コラボレーションが実現する。『ブレイド3』以降、『クロッシング』(2009)以外はすべてビデオスルーだったスナイプスにとっては、久々の劇場復帰となった。

 近年は、スパイク・リーの『シャイラク』(2015)、エディ・マーフィが主演する 『ルディ・レイ・ムーア』(2019)、やはりマーフィ主演の『星の王子ニューヨークへ行く2』(2021)などに出演してきた。『ルディ・レイ・ムーア』は賞レースで健闘したし、『星の王子2』はヒットしたとはいえ、これら3作はすべて配信だ。そんなところへ、期待の超大作『デッドプール&ウルヴァリン』でブレイド再演の話がやってきたのである。

 存在すら忘れていたところへ、彼の全盛期の象徴であるブレイドが突然スクリーンに現れたのだから、その頃のスナイプスを知る映画ファンは、懐かしさに浸ったに違いない。しかも、単にウケ狙いのカメオではなく、ストーリーの中でしっかり活躍するのだ。『ブレイド3』についての訴訟では白人のキャスティングに文句を言った彼だが、そのレイノルズが自分の映画に招いてくれたのだから、もうあれは古い話なのだろう。

 さらに、スナイプスはこの出演で、実写のマーベルキャラクターにおける史上最長のキャリア(25年と340日)を更新。ギネスブックに載ることにもなっている。それまでの記録は、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンだった。『ブレイド3』から『デッドプール&ウルヴァリン』まで、19年231日の年月が経過しているのも、ドクター・オクトパス役のアルフレッド・モリーナを抜いて最長のブランクだ(モリーナは『スパイダーマン2』の後、17年後に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で復帰)。

 こうして改めて脚光を浴びたスナイプスは、これからまたビッグスクリーンで活躍するのだろうか。そもそもアメリカは(性犯罪者は別として)カムバックストーリーが大好きだ。だが、MCUのブレイドにはマハーシャラ・アリが決まっているので、それ以外の役になるはず。先月末に62歳になったばかりの彼は、今、何を夢見ているのか。

【関連情報】
ライアン・レイノルズ公式Instagram(英語)
【画像】かっこいい!『ブレイド』当時のウェズリー・スナイプス
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