5年ぶりの新作映画『スオミの話をしよう』(9月13日公開)の公開を控える三谷幸喜監督が、27日に更新したXで黒澤明監督の映画『天国と地獄』(1963)をモチーフにしたシーンの裏側に触れた。
三谷監督にとって9作目の脚本・監督作品となる本作は、長澤まさみ演じる主人公スオミの失踪から幕を開けるミステリー・コメディー。著名な詩人・寒川(坂東彌十郎)の妻スオミが行方不明となり、寒川の豪邸に刑事の草野(西島秀俊)ら4人の元夫たちが集まってくる。現・元夫たちが「誰が一番スオミを愛していたのか」「誰が一番スオミに愛されていたのか」とマウントを取り合ううちに、それぞれのスオミに抱くイメージが見た目も性格もまるで違うことが明らかになっていく。
公式サイトでは、三谷監督の頭の中にあった最初のイメージは、黒澤明監督の名作『天国と地獄』だったと説明。『天国と地獄』は、とある会社の重役・権藤の息子と間違えて、運転手の息子が誘拐された事件の顛末を描くもので、三船敏郎、仲代達矢、山崎努(※崎は「たつさき」)ら名優が集い、黒澤映画の代表作の一つとして語り継がれている。
三谷監督は『天国と地獄』をイメージしたことについて「恐れ多い話なんですけどね。あの作品の前半はとても演劇的です。ある誘拐事件が起こり、物語はほぼ権藤家のリビングで展開していきますが、全く飽きさせず、ずっと緊張感が続いて、文句なく面白い。事件に巻き込まれた製靴会社の社長を三船敏郎さんが演じ、事件を担当する警部を仲代達矢さんが演じているのですが、何度か観ていてふと浮かんだのが、(この二人が同じ人を愛していたら?)というアイデア。いっそ事件関係者全員が同じ一人の女性を愛していたら、コメディになるぞ……というところから、だんだんと構想がまとまっていきました」と語っている。(公式サイトより)
27日の投稿では三谷監督が、刑事の草野と部下の小磯(瀬戸康史)が寒川邸を訪れ、寒川の世話係である乙骨(戸塚純貴)から状況を聞くシーンに言及。メインキャストの中で最年少でもある戸塚の演技に加え、『天国と地獄』をモチーフにしたことに「やってきた刑事が業者の変装を解いて、すぐに家人にカーテンを閉めるように指示を出すあたりの呼吸は、かなり『天国と地獄』を意識した」と綴り、とある共通点にも触れている。
物語の舞台となる寒川邸の、細かい仕掛けが張り巡らされたこだわりのセットも見ものだ。(編集部・石井百合子)
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