1996年に日本で公開されロングランヒットを記録した名作『イル・ポスティーノ』が、製作30周年を機に4Kデジタル・リマスター版として11月8日より公開されることが決定した。あわせて、修復された本編より新たに制作された予告編映像、ポスタービジュアルが公開された。
本作は、ナポリ沖合いの小島を舞台に、偉大な詩人と、内気な郵便配達人の間に芽生えた友情を描くストーリー。高名な詩人パブロ・ネルーダが、祖国チリを追われ亡命してやって来る。内気な青年マリオは、ネルーダへ手紙を運ぶ郵便配達人となり、彼との交流を通じて詩の魅力を知っていく。やがてマリオは、バーで働くベアトリーチェに一目惚れし、ネルーダに恋の相談をする。
主人公の郵便配達人を演じたマッシモ・トロイージは、撮影終了の12時間後に、完成作品を観ないまま41歳の若さでこの世を去った。もともと心臓に病があり、本作の撮影中には体力の限界に達し、1日2時間しか演技ができなかった。そして主人公に心を許しメンター的な存在となってゆく詩人のパブロ・ネルーダに扮したのは、名作『ニュー・シネマ・パラダイス』の映写技師役などで知られるフランスの名優フィリップ・ノワレ。撮影中は、今にも倒れそうなトロイージを現場で励まし続けたという。
イタリアで尊敬される映画監督・俳優だったトロイージは、20世紀最大の詩人と言われたチリの国民的詩人であり政治家でもあったパブロ・ネルーダ(1904~1973)を敬愛し、彼をモデルにしたアントニオ・スカルメタの小説「バーニング・ペイシェンス」に感銘を受け、自ら本作の企画を立ち上げ脚色チームにも参加。ネルーダが数年間イタリア南部の小島で過ごした事実を基に映画化を実現した。1995年度のアカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、作曲家ルイス・エンリケス・バカロフが作曲賞を受賞。またトロイージからの要請を受け、互いにリスペクトする間柄だった『1984』のマイケル・ラドフォードが監督と共同脚色を務め、アカデミー賞監督賞と脚色賞にノミネートされ、英国アカデミー賞監督賞を受した。
2024年はネルーダ生誕120周年。映画完成時、ネルーダの熱心なファンを名乗るジュリア・ロバーツ、スティング、グレン・クローズ、マドンナ、レイフ・ファインズ、イーサン・ホーク、サミュエル・L・ジャクソンらがアメリカ版のサウンドトラックへ詩の朗読に参加したことも話題を呼んだ。(編集部・石井百合子)
映画『イル・ポスティーノ 4Kデジタル・リマスター版』は、11月8日より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
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