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藤ヶ谷太輔、デビューから初の決断 「自分で動くべき時が訪れた」

シネマトゥデイ 映画情報 2024年9月1日 8時2分

 アイドル活動、MC業に加え、俳優としても存在感を発揮している藤ヶ谷太輔。直木賞作家・辻村深月の小説を映画化する『傲慢と善良』(9月27日公開)では奈緒とダブル主演を務め、傲慢な男の心情や変化を鮮やかに体現している。もともと原作の大ファンで、自ら映画化について原作関係者にアプローチしていたという彼。本作は「やりたいと思うことがあったら、自分から動かなければいけない時がある」と仕事に対して強い意志を握りしめるきっかけになった、特別な1作だと明かす。

デビューした頃の気持ちを代弁するかのような原作

 原作は、2019年に単行本が発売されるや、20代、30代を中心に多くの共感を呼び、累計発行部数100万部を突破した同名小説。マッチングアプリで出会った架(藤ヶ谷)と真実(奈緒)がようやく婚約した直後、真実が失踪。架が真実の両親、友人、同僚、婚活相手を訪ねて居場所を捜すうちに、彼女の過去と嘘が明らかになっていく。監督は、『ブルーピリオド』(公開中)などの萩原健太郎が務めた。

 映画化が決まる前から、「人生で一番好きな小説」として挙げるほど原作に惚れ込んでいたという藤ヶ谷。人間が潜在的に抱く感情が生々しく描かれている小説に、ハッとさせられることが多かったと話す。

 マッチングアプリで婚活をしているハイスペックな架は、無意識のうちに「自分に合う相手はどのような女性なのか」と選抜をしているが、藤ヶ谷は「仕事柄、ポスターや表紙を飾るとなると“隣にいる相手が誰ならば釣り合う、もしくは釣り合わない”という話を耳にすることもあって。デビューした頃には、“釣り合う、釣り合わないってどういうことなんだろう”と思うこともありました。そういった気持ちを見事に言語化してくれている小説」だと感心しきり。

 藤ヶ谷がKis-My-Ft2のメンバーとしてCDデビューしたのは2011年のこと。「デビューしてこの世界に飛び込んだ時には、“バラエティーの立ち位置ではこうあった方がいい”とか“あなたはこういう仕事をやっていった方がいい”“あなたはこう見られている”と言われることがどんどん増えていって。気づいたら、“そういうふうにした方がいいのかな”と感じている自分もいました」と打ち明ける藤ヶ谷。「架も、友人に真実を紹介した時に“あの子には架はもったいない”“もっといい女の子がいるよ”と言われて、“そうなのかな”と思ったりしてしまう。“みんなが自分のためを思って言ってくれているのだから、きっとそうに違いない”と妄信してしまうことって、僕にもあったなと思うんです。そうやって知らず知らずのうちに、自分が“作られている”感覚。それは“作ってもらった”とも言えると思うんですが、そういった感覚にはとても共感できました」と架と同じように“人から見られる自分”を意識してしまう時期もあったという。
 
 藤ヶ谷がしっかりと自分の考えを持つようになったのは、「30歳を過ぎてから」とのこと。「30歳くらいまでは、カッコつけのキャラで、まずは覚えてもらうことが大事だなと思っていました。30歳を過ぎてからは肩の力が抜けて、周りからどう思われるかもまったく気にならなくなって。エゴサーチもしません」と穏やかな笑顔を浮かべる。

女性の気持ちがわからず困惑

 都会的でスマートだったはずの架は、失踪した真実を捜す中でカッコ悪い自分とも向き合っていく。その過程では、男女それぞれの視点でのリアルな恋愛観や、価値観のすれ違いが浮き彫りになっていく。

 架を演じる上で、藤ヶ谷は「原作を何度も読み返した」と回想。「優しさと鈍感さのバランスを大事に演じていました。女性から見ると、架の行動や言動にはかなり“いや、それは違うよ”と思うところがあるらしいんです(笑)。女性が“察してほしい”と思うようなところを、男性からすると“言ってくれないとわからない”と感じてしまったり……。僕自身、原作を読みながら真実が不満を抱くことに対して“言ってくれないとわからない”と思ったので、その感覚は大事にしたいなと思いました」というように、男女で見方や意見が変わってくるのも本作の面白いポイントだ。

 1年の交際を経ても結婚に踏み切れない架にモヤモヤする女性も多いかもしれない。藤ヶ谷は「架が真実に誕生日プレゼントとしてネックレスを渡すシーンがありますが、架は指輪が入っているような四角い箱に入れて渡すんです。奈緒ちゃんや女性スタッフさんからは“あの箱を選ぶセンスはおかしい。ネックレスなら長方形の箱にしてほしい”とかなり責められました。僕が選んだんじゃないのに!」と苦笑い。

 また、友人たちに真実と結婚したい気持ちはどれくらいかと聞かれた架が“70%”と答えたことに対し、“真実は70点”と彼女に点数をつけたも同然だと指摘されるというシーンがあるが、「女性スタッフさんの中には“70点なら、まだ0点をつけられた方がうれしい”という人もいましたし、男からすると“70点ならば、高い方だ”という人も多い。いろいろな話が出てきて、ものすごく面白い」と撮影現場で盛り上がることも多かった様子。「監督、奈緒ちゃん、僕の間でもたくさん話をしました。この作品について話していると、お互いの恋愛観や結婚観、人間関係まで自然と話してしまう。監督には奥さんとの出会いまで、聞いちゃいましたから。『傲慢と善良』って、それをきっかけとして誰かと話したくなるし、人生において必要なものがたくさん散りばめられている作品なんだと感じています」と撮影を通じてさらなる気付きがあったと熱を込める。

バラエティーのMCを経ての気付き

 惚れ込んだ原作の映画化への参加が叶ったが、藤ヶ谷にとって、本作の実写化に向けて自ら動き出したことは「大きな選択だった」と振り返る。

 「発売された当初に読んで、そこで“実写化される際には出たい”と思っていたわけではないんです。衝撃的に面白いから“とにかく読んで”と勝手にいろいろな人に勧めていました」と切り出し、「でも(MCを務める番組)『A-Studio+』などでいろいろな方に取材をさせていただくと、どうやら俳優さんが自分から動いているんだなと気づいて。“こういう作品がやりたいな”と待ちの姿勢でいるのではなく、自ら企画書を作って関係者に持って行ったり、チームを組んでものづくりを進めている人もいる。ひと昔前では、そういうことってなかったと思うんです」と刺激を受けたそう。「そういう風に気づいていく中で、“自分よりも先に他の人にやられたとしたら、後悔として残ってしまうものって何だろう”“自分がやりたいことって何だろう”と考えた時に、『傲慢と善良』だなと。そこで版権元を調べたり、関係者の方に“やりたいです”と伝えに行こうと思いました。事務所内だけではなく、外に向けて自分から“やりたい”と意志を見せたのは初めてです」と告白。

 「今まではありがたいことに待ちの姿勢でもお仕事をいただくことができていましたが、本当にやりたいことを見つけたら、自分で動かなければいけないタイミングが訪れるものなんだなと感じています」と新たな一歩について、力強く語っていた。(取材・文:成田おり枝)

ヘアメイク:大島智恵美 スタイリスト:横田勝広(YKP)

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『傲慢と善良』公式サイト
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