第49回トロント国際映画祭でスティーヴン・ソダーバーグ監督の新作ホラースリラー映画『プレゼンス(原題) / Presence』の上映が行われた。全編がまさかの幽霊視点で映し出される本作は、ホラーというジャンルを再定義する新しさと面白さに満ちていた。
『セックスと嘘とビデオテープ』『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』『オーシャンズ11』『コンテイジョン』『マジック・マイク』など数々の代表作を持つソダーバーグ監督が、『ジュラシック・パーク』『パニック・ルーム』などのデヴィッド・コープが執筆した脚本を映画化。郊外の家に引っ越してきた家族が、そこに住んでいるのは自分たちだけではないことに気付くことになる。
家族が引っ越してくる前のがらんとした家をゆらゆらと、幽霊ならではの浮遊感で描く冒頭から引き込まれ、誰にも知られずに全てを見聞きすることができるこの“幽霊視点”がユーモアを生む装置として極めて優秀であることに驚かされる。仕事でトラブルを抱えている母(ルーシー・リュー)、母のお気に入りの息子(エディー・マデイ)、親友を亡くし悲しみに沈む娘(カリーナ・リァン)、娘を心配する父(クリス・サリヴァン)の姿と関係性が幽霊視点であけすけに映し出され、プレス試写ではしばしば笑いが起こった。
ゴーストストーリーの陰鬱さとユーモアが奇妙に両立しており、娘に対して保護的な幽霊はかわいらしくすら思えてくるほど。笑いはあれどさすがの緩急のつけ方で一切だれることはなく、スリリングでエモーショナルな展開が待ち受けている。よくあるホラーの設定を視点を変えることで全く新しい映画にした、ソダーバーグ監督の職人技にほれぼれさせられる作品だ。(編集部・市川遥)
第49回トロント国際映画祭は現地時間15日まで開催
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