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『ジョーカー2』ホアキン・フェニックス、“笑い”のシーンは現場で生まれた あらゆる感情が込められた瞬間

シネマトゥデイ 映画情報 2024年9月7日 19時32分

 DC映画『ジョーカー』(2019)で第92回アカデミー賞主演男優賞に輝いたホアキン・フェニックス。あれから5年。前作で最高賞にあたる金獅子賞を手にしたベネチア国際映画祭に、“ジョーカー2”こと『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(10月11日全国公開)を引っ提げて訪れたホアキンが、日本向けの合同会見に出席し、レディー・ガガとの共演や撮影の裏側について語った。

 大都会ゴッサムの片隅で、コメディアンを夢見ながら孤独に生きる男アーサー・フレック(ホアキン)が、次第に“ジョーカー”へと変貌していく姿を追った前作。“ジョーカー2”では、アーカムに収容され裁判を待つ身となったアーサーが、謎の女性リーとの出会いから真実の愛を見出し、自身の内にあった音楽を見つけ出す。

レディー・ガガの提案に驚き

 今回のアーサーの変化についてホアキンは「変わったのは、アーサーの新たな自己表現である歌です。音楽は常に彼の一部でしたが、本作では初めて愛が成就するかもしれないという要素が人生に入り込んだことで、彼の中の歌が目覚め、新たな方法で自分を表現することになります」と明かす。「1作目のアーサーは、愛を見つけようとしたけれどアプローチが間違っていた。本当の愛を知らなかったからです。しかし今回は、リーという女性との出会いによって、彼の声を見つけることになり、それが物語の核となるのです」

 それだけに歌唱シーンは本作の重要なパートとなった。ホアキンは「歌と音楽を通じて、キャラクターを再発見する感覚でした」と制作過程を振り返る。「『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(2005)でも組んだ、ロジャー・ラヴという素晴らしいボーカルコーチとの練習が始まりました。フランク・シナトラやサミー・デイヴィス・Jrを参考にしながらね。その過程で、それがアーサーの音楽に対するアプローチではないことに気がついたのです。ボーカルとしての筋肉を強化しながら、彼がどのように歌うのかも見出していかなければなりませんでした」

 「アーサーが歌っているときは、大切なことを音楽で表現している時です。そのためには、(彼の歌が)フランク・シナトラのように快適に聞こえてはならない。パフォーマンスは脱構築的で、完璧ではないことこそ、キャラクターに忠実だと感じたからです」

 また、歌唱シーンについて「撮影はすべてライブで録音されたもの」と明かしていたホアキンは、そのアイデアはもともと、リーを演じたレディー・ガガからの提案だったとも明かした。「初期段階で、ステファニー(ガガ)から『ライブで(歌を)録音すべきだ』と言われました。最初は、とても無理だって感じでしたよ。酷いことになるだろうと思ったからです。でも実際には、彼女が正解でした」

 「普通の歌唱シーンなら、レコーディングされた楽曲に合わせて歌うのが一般的です。それは生歌であっても同じで、テンポは一貫しています。しかし僕らは、セットの別の部屋で演奏するピアニストと、お互いの歌と曲を聴くことができるようにして撮影しました。これによって、テイクごとに曲のテンポや強度を変えることができたのです。僕も、歌のシーンでは事前にどんなパフォーマンスするかを決め込まずにやることができた。例えば曲の終わりに、大きな声で強烈に歌い上げるバージョンをやりたい時もあれば、非常に静かに歌うバージョンにしたい時もありました。ピアニストも僕も、お互いがどんなことをするのかちゃんとわかっていない状態です。それによって、ある種の即興的なエネルギーが生まれたと思います」

 もちろん、前作でも鮮烈な印象を残したダンスシーンにも挑んでおり「ダンスについては、前作でも一緒に仕事をした、マイケル・アーノルドという振付師と今回も組んで仕事をしました。脚本を読むとタップダンスのシークエンスがあることがわかり、非常に早い段階で彼と仕事を始めました。タップダンスをやったことがある人ならわかると思いますが、本当に難しいです。少なくとも僕にとってはそうでした。でも、最終的には非常に報われたし、楽しい経験になりましたよ」と振り返った。

即興的だった“笑い”のシーン

 また、前作に続いて鮮烈な印象を残すのが、アーサーの“笑い”のシーン。ホアキンは「“笑い”は1作目でも非常に重要な部分でしたが、多くの場面は、撮影現場で即興で作り出した瞬間でした。そして今回もそうです。いくつか脚本に書かれている場面もありますが、多くの場合は『ここがその瞬間だ』と見つけたような感じです」と明かす。

 “ジョーカー2”の予告編にも、屋外のフェンスにつながれたアーサーが雨のなかでずぶ濡れになって笑う、印象的な場面が使われている。「アーカム矯正施設の外のシーン。ロサンゼルスにしては寒い気候で、降雨機を使っていました。『あと1時間、撮影時間が余っているから何かやろう』ということになり『じゃあ外にいるアーサーが、雨の中で縛られたまま笑っているシーンはどうだろう?』という話になりました。正直に言うと、その時の笑いは何か計画していたとうよりも、水の冷たさにただ反応していただけかもしれません」と振り返るホアキン。

 さらに「ただ、彼の“笑い”というのは常に非常に複雑なもので、そこには痛みや喜びなどさまざまな思いが込められていると思います」と付け加える。「アーサーが笑っているとき、彼が何を感じているのかを正確に特定するのは難しい。それこそがこのシーンを興味深いものにしているのかもしれません。重層的で、深い痛みや反逆的気持ちなんかが混ざり合った笑いだからこそ、皆さんにとって印象深いものになっているのかもしれません」

重要なのは過程

 前作はベネチアで最高賞にあたる金獅子賞を受賞し、今回も受賞が期待される『ジョーカー2』。しかしホアキンにとっては、新たなアプローチでアーサー役を再訪できたことが、何より重要なことだったようだ。「正直なところ、僕はあまり作品に対する反響などは気にしないし、期待することもありません。マーケティングや配給の仕組みなんて理解できていないのですから。ただ、実際にどんな映画を作るのかという、プロセスを重視しています」

 「でも、多くの人々に『ジョーカー』という作品が響き、この作品を共有できたことは意義深いことだったと思います。それはキャラクターとの深い繋がりを生み出し、非常に感動的なものでした。この作品が誰かに対して強烈なインパクトを与えているんだという実感をかみしめることができたことは充実感があって面白かったですし、特別な経験だと思っています」(編集部・入倉功一)

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