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三谷幸喜監督にとって長澤まさみが特別である理由

シネマトゥデイ 映画情報 2024年9月14日 7時15分

 三谷幸喜監督にとって9作目となる映画『スオミの話をしよう』(公開中)。本作で主演を務めるのは長澤まさみ。三谷監督が作・演出を務めた舞台「紫式部ダイアリー」(2014)をはじめ、大河ドラマ「真田丸」(2016)の主人公のパートナー・きり役、「鎌倉殿の13人」(2022)では語りを務めるなど所縁が深い。三谷監督が「長澤まさみを主演にした映画を作りたい」と熱望した理由とは……? その真意を語った。

長澤まさみの何が凄いのか

 三谷監督にとって『記憶にございません!』(2019)以来5年ぶりの新作映画となる『スオミの話をしよう』。昨年12月に行われた東宝ラインナップ発表会の場で三谷監督が「ミステリー」「コメディ」「恋愛映画」「長澤まさみ作品」そして「三谷幸喜作品」と5つの要素から作品を説明したが、その一つに挙げられた“主演・長澤まさみ”。

 三谷監督は「初めてしっかりとご一緒させていただいたのが、自分が演出家として関わった舞台『紫式部ダイアリー』でした。その作品でもとても素敵だなと思ったのですが、その後も大河ドラマ『真田丸』や『鎌倉殿の13人』でご一緒して、いろいろな引き出しがある方だなと感じていました。さらに他の方が演出した作品も拝見していても、スキルがどんどん上がっている」と語ると「長澤さんの魅力が最大限に活かされる作品をいつか作ってみたいと思っていたんです」とかねてから感じていたそう。

 三谷監督が長澤が技術的に優れていると感じた点について「俳優さんって、意外と自分の持ち味や面白さを把握できていない人が多いんです。それを分かっている人といない人では全然違う」と前置きすると「彼女はそれをとても理解していると感じるんです」と語る。

 続けて三谷監督は「特に彼女の舞台を観ていると顕著なのですが、長澤さんの一挙手一投足から本当に目が離せない。それはたぶん彼女がどういう行動をとると、みんなが自分を見てくれるのかということが分かっていると思うんです」と指摘し、「もちろん、長澤さんに聞いたら“そんなことないです”と言うかもしれませんが、そうだとしたら本当に天性のものなのかもしれません。手足が長くエレガント。頬杖のつき方一つをとっても、すごくキレイ。もちろんセリフの発し方や感情の持っていき方を含めて、本当に自分の見せ方を分かっていらっしゃる」と絶賛する。

優れているのは技術面だけではない

 さらに三谷監督は、長澤の技術面のみならず役に向き合う真摯な姿勢にも惹かれたという。「僕はあまり俳優さんと密に接することをせず、一定の距離を置くんです」とスタンスを述べながら「でも長澤さんとは舞台のときいろいろ話をする機会があって……。そのとき女優としての腹のくくり方というか意気込みを聞き“この人は仕事に人生を捧げているんだな”と感じたんです。あまり僕はそういう俳優さんと出会ったことがなかったので、すごく新鮮でした」と三谷監督にとって特別な存在だったことを明かす。

脚本執筆にかなりプレッシャーがあった

 そんな長澤を主演にした『スオミの話をしよう』。三谷監督はクライマックスの長澤の芝居のシーンに触れ「コロコロキャラクターが変わっていく場面がありますが、ワンカットの長回しで撮りました」と解説する。約4分半以上に及ぶ長澤の独壇場のシーン。三谷監督は「カットを割って一つ一つ撮ることもできたのですが、僕はしたくなかった」と言い「長澤さんも長回しの方が絶対面白くなると納得してくださって“分かりました”と言ってくださいました。ご本人はかなり緊張していましたが、とにかく集中力の極みのような迫力で演じていただきました。みんなすごいものを見たな……と拍手が起きたぐらい」と鬼気迫るシーンだったことを強調する。

 2022年に第29回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど、舞台俳優としても高い評価を受けている長澤にとって、長回しでの撮影は「それほど大変なことではないと思う」と実力を評価しつつも「それにしても覚えたセリフをそのまま言うといったレベルではなく、その場その場で頭に浮かんだ形としてしゃべるところまで持っていけるというのは本当に大変な作業だったと思います」と慮ると「テストは重ねましたが、本番が一番素晴らしかった」と、長澤の集中力に脱帽したという。

 「長澤まさみの映画を撮る」という三谷監督の思い。そこには大きなプレッシャーもあったという。「僕以外の演出家に対してどういうスタンスかは分かりませんが、僕とご一緒するとき、長澤さんは脚本に関して何か言うことはこれまで一切なかった。100パーセント僕が書いた通りに演じようとしてくださる。でもそれって逆に僕は責任を感じるんです。脚本ができた段階で彼女がやることは決まってしまうから」

 本作で長澤が演じたスオミは、物語の設定としては“不在のヒロイン”であるが、常にスオミの存在を感じさせる三谷監督の創意工夫がなされており、「その場におらずとも長澤さんは純然たる主役ですし、長澤さんありきの作品になっていると思います」と自信を見せた。(取材・文:磯部正和)

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