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『踊る大捜査線』史上最悪の殺人犯・日向真奈美とは 12年ぶり新作に娘が登場

シネマトゥデイ 映画情報 2024年9月28日 12時3分

 27年前にドラマ「踊る大捜査線」(1997)が放送され、その後の映画シリーズでも社会現象を巻き起こした「踊る」プロジェクト。今年12年ぶりの再始動が発表され、室井慎次(柳葉敏郎)が主人公の新作映画『室井慎次 敗れざる者』(10月11日)、『室井慎次 生き続ける者』(11月15日)が連続公開される。この2作品で注目すべき人物は、福本莉子ふんする少女・日向杏(ひゅうが・あん)。彼女は、「踊る」史上最悪の猟奇殺人犯といわれる日向真奈美(小泉今日子)の娘なのだ。警視庁湾岸署を恐怖に陥れた日向真奈美とは、いったい何者なのだろうか。(以下、映画シリーズのネタバレを含みます)

無関係な人間さえも犯罪者に…日向真奈美の底知れぬ狂気

 日向真奈美の初登場は、1998年に公開された映画第1作『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間』。遺体の腹を切り裂き、胃にくまのぬいぐるみを詰め込む“手術”を施した猟奇事件の犯人だった。しかも被害者は、自身が運営するwebサイト「仮想殺人事件ファイル」に参加していた自殺志願者で、真奈美は彼の望みを叶えたわけだ。シリーズの主人公・青島俊作(織田裕二)ら捜査員が囮捜査で接触した際の、目の前にいるのにチャットでの会話をうながす異常性と、昆虫のような真黒な瞳、歯の矯正用ブリッジが見える不気味な笑顔のアップは強烈だった。

 真奈美は映画中盤、片手にくまのぬいぐるみ、片手に拳銃を持って湾岸署に乗り込み、「早く私を死刑台に連れていけ」と自らに拳銃を向ける狂気を見せた。さらに投獄後、青島に同作で起きた副総監誘拐事件の犯人像を相談された際は、「だから警察は無能なんだ」「人が事件を起こすんじゃない。事件が人を起こすんだ」などと不敵に笑いながらも、プロファイリングの捜査員が特定できなかった犯人像を言い当てる。実は、誘拐の実行犯らも「仮想殺人事件ファイル」のアクティブな参加者だった。彼女は、犯罪に無関係な人間さえも犯罪者に変貌させてしまう、Web上に多くの信者を持つ存在だった。

 白い服をまとい、美しい顔で底知れない高笑いをし、知能の高さを見せつつも幼児性の抜けない支離滅裂な言葉の数々を放つ。当時から、いわゆるアイドルやタレントとは一線を画した存在感を見せていた小泉だったが、「居るだけで不気味」というこのサイコな演技は高く評価された。のちの俳優としての彼女の躍進に、拍車をかけた役だといっても過言ではないだろう。

服役中も信者が増加

 無期懲役囚となって服役しているはずの真奈美が、犯罪マニアや破壊願望者などのファンをいまだに集め続けていることが判明したのは、2010年公開の映画第3作『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』だった。同作で、彼女ら犯罪者の解放を要求し、引っ越した先の新湾岸署を占拠した犯人らの中心人物・須川圭一(森廉)もまた、彼女の信望者。真奈美は、ソーシャルワーカーだった彼に逆転移を施し、“汚染”していたのだ。医療刑務所で一見おだやかに暮らしているように見える真奈美だが、面会に訪れた青島に向かって、再び「手術してやろうか?」と不気味な笑みを浮かべた。

 ちなみに、圭一は連ドラ第1話で青島に補導された小学生。「歳末特別警戒スペシャル」でも登場し、青島に影響されていたが、もっと強烈な真奈美に取り込まれてしまったのだろう。

 真奈美の目的は脱獄ではなく、自身が捕まった旧湾岸署で美しく死ぬことだった。「私が死んで、たくさんの私が生まれる」と笑う彼女を、青島はかろうじて大爆発から救い出す。「圭一はまだいるぞ。いたるところに」。再び逮捕された真奈美は、青島にそううそぶいた。

まさかの獄中出産…新作映画で娘が登場

 『室井慎次』の予告編では、真奈美がこの段階で獄中出産していたことが明かされている。“事件の被害者家族・加害者家族を支援したい”という想いで、2人の少年と故郷・秋田県で暮らす室井のもとに、突如現れた日向杏の経歴として語られた。予告編では、相手の男性は不明で、精神鑑定を担当していた医師か看守の可能性があること、獄中妊娠が世間に知られたら大問題になるため隠ぺいされていたことが、捜査資料管理センターから室井に報告されている。

 杏は、室井の里子である森貴仁(齋藤潤)たちを戸惑わせる言葉を多々発しているようで、彼女の裏の顔を察知した貴仁が「あの子、怖いよ。室井さんも感じてるよね」と語る様子も予告編で確認できる。人心を操る真奈美をほうふつとさせる杏は、なぜ室井の前に現れたのか。その目的は何なのか。そして、母・真奈美は関与しているのか。謎はまだまだ多い。

 『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は、「踊る」の中核をなす本広克行監督、脚本家の君塚良一、亀山千広プロデューサーが手掛けたシリーズ最新作。映画第2作『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が、興行収入173.5億円という日本実写邦画史上最高の大記録を樹立し、20年以上経ったいまも破られていないことは特筆すべきことだろう。織田裕二の「レインボーブリッジ、封鎖できません!」という名台詞を覚えている人もいるかもしれない。2012年の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』で一度幕を閉じたコンテンツの再始動は、どんな衝撃を与えてくれるのだろうか。(文:早川あゆみ)

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