堂本剛の27年ぶりとなる単独主演映画『まる』(10月18日全国公開)の主題歌が、堂本が2002年に発表したソロデビュー曲「街(movie ver.)」に決定した。堂本が映画のために再レコーディングした音源で、現状リリースの予定はなく、フルバージョンは映画本編でしか聴くことができない。あわせて、レコーディング風景や劇伴制作の様子を捉えた主題歌発表映像も公開された。
『まる』は、現代美術家のアシスタントを務める主人公・沢田(堂本)が、1匹のアリに導かれるように描いた○(まる)を発端に、日常が○に浸食され始める奇想天外な物語。主演の堂本は「.ENDRECHERI./堂本剛」のダブルネームで、映画音楽にも初挑戦している。
「街」は、堂本が作詞・作曲を手がけたシンガーソングライターとしてのソロデビューシングル。プロデューサーを務める山田雅子(アスミック・エース)は、「もし、堂本剛がスーパースターじゃなかったら? というパラレルワールドともとれるもの」としたうえで、主題歌について「剛さんが辛かった時期の心情が投影された楽曲が、20年以上たった今≪沢田≫という剛さんのあて書きだが剛さんではない、ある男の人生の物語を締めくくる楽曲として新たな存在感を獲得する……、元の楽曲が素晴らしくないとそうそうできることではありません」と語る。
監督の荻上直子が堂本と向き合い、沢田というキャラクターを立体化させていく過程で、山田プロデューサーは荻上監督に「『街』を主題歌にしてはどうか」と相談を持ち掛けた。すると、荻上監督は「実は脚本を書きながら聞いていたのが『街』でした」と奇跡的な返事があったという。堂本は、「街」の起用について「『街』という楽曲を沢田が歌っていると錯覚するような着地の仕方をした気がするので、歌えて幸せだったなと思っています」とコメントしている。
堂本、山田プロデューサーのコメント全文は以下の通り。(編集部・倉本拓弥)
堂本剛
楽曲そのものは僕自身が人のことが好きじゃなかった時期に書いた曲で、傷つけられたり傷ついたりもするけれど、自分の中にある痛みを忘れたくないなという想いが宿っているんです。若い頃の自分の燃えたぎる闘いの痕跡と言いますか、痛みを忘れてしまうと人を傷つけてしまうかもしれないから、見失わないようにという強い心を歌っている曲なんですよ。だから、歌うたびに若いときの自分と対話することになるんですけど、その構図って『まる』という作品と一緒なんですよね。そうやって自分と向き合ってみて……当時からすごく変わったかと言うと、そんなに変わっているわけでもなくて。そこも沢田と重なるんです。たまたま描いた「○」で脚光を浴びていきますけど、「いや、こういうことじゃないのにな」と思って、描きたい絵を描くことで自分にとっての幸せ、喜びを実感するようになっていったのと、すごく似ているんですよね。「街」という楽曲も歌うたび、若いながらに自分自身であろうとした頃に戻っていけるからこそ、今回の映画のためだけのバージョンを歌う意味があると思ったので、考えるよりも感性的なものを大事にする、といったゾーンの中で歌唱させていただいて。ラストを自分の歌で締めさせてもらえるという、とてもぜいたくな作品になりましたし、「街」という楽曲を沢田が歌っていると錯覚するような着地の仕方をした気がするので、歌えて幸せだったなと思っています。
プロデューサー:山田雅子(アスミック・エース)
今回、荻上監督と堂本剛さんのコラボが実現するのであれば、演出家と主演俳優という決められた役割にとどまらせたくないなという、プロデューサー目線での欲がありました。
映画を主戦場としてきた荻上監督と、今はお芝居から少し距離をおき、音楽をメインに活躍している堂本剛さん…それぞれ強い世界観を持ったお二人がタッグを組んで、それぞれの作家性で新しい地平を切り開くことはできまいか。ミュージシャンの剛さんに映画音楽をお願いすることは必然、主演のオファーと同時に相談させていただきました。
そして、普段ほぼあて書きをしない荻上監督が、ずっと気になっていたという存在の剛さんと向き合い、お互いを人間同士として理解し合い、沢田というキャラクターを立体化させていく過程で、主題歌は剛さんの代表的な楽曲でもある「街」はどうだろうか、と荻上監督に相談したところ……「実は脚本を書きながら聞いていたのが『街』でした」というお返事。
ここだけの話、荻上監督は主題歌に積極的なタイプの作家ではないのが分かってはいたので、その前向きな返答に驚きました。とはいえ、剛さんが最もしんどかったであろう時期にかかれた、思い入れのあるソロデビュー曲を主題歌として使わせていただけるだろうか。私としては、だからこそ、という気持ちが強くありました。このタイミングで荻上監督と堂本剛という2人のアーティストが引き寄せ合い、27年ぶりの単独主演作品が実現した。その物語は、もし、堂本剛がスーパースターじゃなかったら? というパラレルワールドともとれるもの。剛さんが辛かった時期の心情が投影された楽曲が、20年以上たった今≪沢田≫という剛さんのあて書きだが剛さんではない、ある男の人生の物語を締めくくる楽曲として新たな存在感を獲得する……、元の楽曲が素晴らしくないとそうそうできることではありません。この提案に剛さん自ら「それなら45歳の今の自分の声で新録したい」と言っていただき、今回の、映画館でしかフルで聞けない幻の主題歌「街(movie ver.)」が誕生しました。
その説得力は凄まじく、主人公がこの先どう生きていくのか、物語が終わった……。(まる)……の先を想像させてくれる、物語の一部として確かに存在している、そんな唯一無二の主題歌になっていると思います。
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