第37回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が25日、東京ミッドタウン日比谷の BASE Q HALL にて開催された。映画祭のメインとなるコンペティション部門には、片山慎三監督の『雨の中の慾情』、大九明子監督の『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』、吉田大八監督の『敵』の邦画3作品をはじめとする全15作品が選出された。会見には、片山監督、大九監督、吉田監督が出席し、作品への思いや映画祭への期待を語った。
第37回東京国際映画祭は、昨年ミッションに掲げた「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する」に則り、「世界との交流」、「未来の人材育成」、「女性への視座」というポイントで映画祭を開催。コンペ部門は、2024年1月以降に完成した長編作品が対象となり、世界110の国と地域から応募があった2,023本から、15本に厳選された。国際審査委員長のトニー・レオンを筆頭に、ハンガリーのエニェディ・イルディコー監督、日本から俳優の橋本愛、フランスの女優キアラ・マストロヤンニ、香港の映画監督・プロデューサーのジョニー・トーが国際審査委員を務める。
『雨の中の慾情』の片山監督は、第31回東京国際映画祭で『岬の兄妹』が上映されているが「東京国際映画祭で上映をしていただき、すごく作品の広がりを感じたので、今回またこうしてコンペに参加させていただき、本当に光栄です」と語る。
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の大九監督は、過去の東京国際映画祭において、『勝手にふるえてろ』が第30回のコンペ部門で観客賞、『私をくいとめて』が第33回のTOKYOプレミア2020部門で観客賞を受賞するなど、本映画祭とは縁が深い。大九監督は「二度も賞を頂戴しているので、お声が掛かることはないだろうと思っていたのでとても光栄です」と驚きがあったことを明かし、「しっかりと映画祭に貢献できることがあればやっていきたい」と思いを述べる。
『敵』の吉田監督は、第27回に出品された『紙の月』以来2度目のコンペ参加。「当時は六本木で開催されていましたが、いい意味で浮ついたお祭りのような感じで楽しかった。普段大勢の人の前に出ることはほぼないので、晴れがましい感じが続くのが楽しいですよね」と笑顔を見せていた。
作品について片山監督は「撮影の9割が台湾」と述べると「なかなか見ることができない町の風景を楽しんでいただければ」と見どころを語ると、大九監督は「(萩原利久や河合優実といった)若い俳優たちと作った映画。若い人たちだからこそ、普段思っている些細なこと、嫌だと思うことなどをどんどん盛り込んでいこうと、今まで以上に私の言いたいことを盛り込んだわがままな映画になっています」とアピール。
吉田監督は、筒井康隆の同名小説を映画化したが「コロナが始まったころ、少し早めの老人生活が始まったと思ったんです。そのとき昔読んでいた本を読み返しました。筒井さんの小説は若いころから読んでいたのですが、すごくハマった」といきさつを明かし、モノクロの映像に「主人公のストイックな生活を描くのに抑制的なモノクロがあっているのかなと思ったんです。モノクロ映画は初めてだったのですが、撮ってみて観る側の想像力が最大限に持ち上がる。思った以上に豊かだった」と満足そうに語っていた。
また今年から新たに「ウィメンズ・エンパワーメント」部門を設立。ドイツから香港、テヘランから近未来的日本まで、女性の複雑な諸相を描いた女性監督による作品を特集する。シニア・プログラマーのアンドリヤナ・ツヴェトコビッチ氏は「いまデジタルテクノロジーの貢献により、個性的で豊かな女性クリエイターたちがたくさん台頭しています」と期待を口にしていた。(磯部正和)
第37回東京国際映画祭コンペティション部門出品作
『アディオス・アミーゴ』(イバン・D・ガオナ/コロンビア)
『小さな私』(ヤン・リーナー/中国)
『死体を埋めろ』(マルコ・ドゥトラ/ブラジル)
『士官候補生』(アディルハン・イェルジャノフ/カザフスタン)
『娘の娘』(ホアン・シー/台湾)
『英国人の手紙』(セルジオ・グラシアーノ/ポルトガル)
『彼のイメージ』(ティエリー・ド・ペレッティ/フランス)
『雨の中の慾情』(片山慎三/日本・台湾)
『わが友アンドレ』(ドン・ズージェン/中国)
『お父さん』(フィリップ・ユン/香港)
『大丈夫と約束して』(カタリナ・グラマトヴァ/チェコ)
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(大九明子/日本)
『敵』(吉田大八/日本)
『トラフィック』(テオドラ・アナ・ミハイ/ルーマニア・ベルギー・オランダ)
『チャオ・イェンの思い』(ミディ・ジー/中国)
第37回東京国際映画祭は10月28日~11月6日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて開催
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