ティム・バートン監督のハロウィンお騒がせ映画『ビートルジュース ビートルジュース』(全国公開中)で、ヒロインの母リディアを演じるウィノナ・ライダー。今やNetflixドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」でもおなじみの彼女の若手人気女優時代から、万引き事件での転落、そして大復活まで、波瀾万丈の半生を振り返ってみたい。
ティム・バートン作品で大ブレイク
1971年10月29日、ミネソタ州ウィノナ生まれの彼女は、生後すぐに一家でサンフランシスコに移り住みそこで成長。父は出版者、母は作家でビデオ制作者、名付け親は、ドラッグ服用による意識変革を提唱してヒッピー世代に大きな影響を与えた元ハーバード大学教授ティモシー・リアリー、両親はビートジェネレーションの詩人アレン・ギンズバーグの友人という、文化的環境の中で育つ。
演技を始めたのは早く、10歳の頃から劇団で演技を学び、15歳のころ『ルーカスの初恋メモリー』(1986)で映画デビュー。すぐに10代で出演したティム・バートン監督の2作でブレイク。真っ黒なゴス系の服を着る屈折した少女を演じた『ビートルジュース』(1988)の公開時は17歳、両手がハサミの人造人間と恋する少女を演じた『シザーハンズ』(1990)公開時は19歳。ウィノナはこの2作で、可愛いだけではない、ユニークな魅力を持つ女優として人気を集めた。
その後もジム・ジャームッシュ監督『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)、フランシス・フォード・コッポラ監督『ドラキュラ』(1992)、ビレ・アウグスト監督『愛と精霊の家』(1993)と有名監督の映画に続々出演。演技も評価され、『恋する人魚たち』(1990)でゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネート、アカデミー賞でも『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(1993)で助演女優賞ノミネート、『若草物語』(1994)で主演女優賞ノミネートを果たす。ウィノナは若くして人気を手にし、演技も絶好調だったのだ。
華やかな交際歴
当時の私生活も華やか。『ヘザース/ベロニカの熱い日』(1988)で共演したクリスチャン・スレイターと1989年頃まで交際。そして、別の映画のプレミアでウィノナに一目惚れしたジョニー・デップと『シザーハンズ』で共演し、交際がスタート。ジョニデが腕に「Winona forever(ウィノナよ永遠に)」とタトゥーを入れた(破局後にWino forever(アル中よ永遠に)に修正)ことも話題を集めた。2人は交際開始からわずか5か月後の1990年7月に婚約するが、当時、ジョニーは26歳、ウィノナは18歳。交際は長続きせず、1993年にジョニーが破局を明かしている。
その後、1994~1996年頃には人気バンド、ソウル・アサイラムのボーカル、デイヴ・パーナーと交際。1997~2000年頃は、共通の友人グウィネス・パルトローを通して知り合ったマット・デイモンと交際している。
万引き事件の衝撃
しかし、2001年に雲行きが怪しくなる。まず、ロンドンで新作映画の撮影開始直前に、体調を崩して入院し、映画を降板しなくてはならなくなる。映画はお蔵入りになったが、ウィノナはこの映画に情熱を注いでいたという。
そして、大事件が起きたのは、この年の12月。ウィノナはロサンゼルス・ビバリーヒルズの店で、4,700ドル(約66万円・1ドル140円計算)相当の服やアクセサリーを大型バッグに入れてそのまま店を出たとして、万引き容疑で逮捕されてしまう。L.A. Timesなどによると、この時、彼女のカバンからは鎮静剤も見つかった。そして裁判で、3年間の保護観察と480時間の社会奉仕活動、1万ドルの罰金の有罪判決が下されたのだ。その後、出演作は激減し、2000年代には大きな出演作がなくなってしまう。
そんな彼女の転期となる出来事が起きたのは、2010年。ウィノナがヒロインをいじめる人気バレリーナを演じた、ダレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』(2010)のプレミアでのこと。ここでウィノナは、サスティナブルなファッションを提唱する衣料会社ルームステイト(Loomstate)の共同経営者兼デザイナー、スコット・マッキンレー・ハーンと出会い、それから現在まで14年間にわたって交際を続けることになる。当時の彼はウィノナのことをよく知らず「『フィフス・エレメント』(ウィノナは出演していない)のあなたは素晴らしかったです」と、別の女優と間違えていたと、ウィノナ自身が楽しそうに語っている。
その後のウィノナは絶好調。Netflixドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016~)が世界中で大ヒットし、ウィノナもゴールデン・グローブ賞テレビシリーズ部門女優賞にノミネートされた。
そして、16歳で演じた『ビートルジュース』のヒロイン、リディアのその後を演じた『ビートルジュース ビートルジュース』(2024)が、全米ボックスオフィスランキングで初登場から3週連続1位に輝くという快挙を達成。この映画がプレミア上映されたベネチア国際映画祭のレッドカーペットでウィノナは、パートナーのスコットと手をつないで登場。『ビートルジュース ビートルジュース』のリディアは、不運を乗り越えて幸せを見つけるが、ウィノナ自身も同じ。いろいろあったが、今はハッピーな状態に落ち着いている。(文・平沢薫)
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