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『ダークナイト』でキャリア一変 デヴィッド・ダストマルチャン、奇妙な役も恐れない理由

シネマトゥデイ 映画情報 2024年10月5日 10時0分

 テレビの生放送中に起きる怪奇現象を描いた新作ホラー映画『悪魔と夜ふかし』が日本でも公開中だ。主演を務めるのは、マーベル映画やDC映画でのアクの強いキャラで人気を集め、先日、Netflixドラマ「ONE PIECE」のMr.3役に抜擢されたことでも注目を浴びたデヴィッド・ダストマルチャンだ。常に強烈な存在感を放つ個性派俳優が、自身の役とキャリアの共通点を語った。

 『悪魔と夜ふかし』は、1977年10月31日のハロウィンに放送された、あるトークバラエティー内で起きた怪奇現象を収めた、“封印されたマスターテープ”という設定のファウンドフッテージホラー。デヴィッドは、視聴率獲得のために、少女に憑依した悪魔を生出演させようと目論み、思いもよらぬ惨劇を巻き起こすことになる司会者ジャックを演じる。

 作品の舞台となる1970年代が大好きだったというデヴィッドは、本作について、監督・脚本・編集を兼任したコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟の映画にかける情熱に引かれたという。「何と言っても、この題材に対するケアンズ兄弟の情熱にひかれました。僕も1970年代という時代が大好きで、彼らの脚本にはそうした要素と良質なドラマの全てがあった。こんなものは読んだことがないと感じるほど良い脚本で、本当にワクワクしたんです」

 生放送で起きる怪奇現象は多種多様でどれもリアル。ケアンズ兄弟は、可能な限りリアルな撮影にこだわっていたといい「まさに、僕の大好きな70年代に映画を作ってるような感覚でした」というデヴィッド。70年代当時のオカルトブームを背景にした、怪しい超能力者やオカルト否定論者が次々に登場するトークショーの雰囲気も魅力的だ。

 また、ジャックの波瀾万丈な人生や、視聴率低迷からの起死回生を狙う番組の舞台裏もリアルで、人間ドラマに引き込まれる。デヴィッドが演じるジャックは、自身のトークショーがキャリアのブレイクスルーになる一方で、現在は大切な存在を失い、番組も存続の危機に立たされている。デヴィッドも「この仕事が最後になるんじゃないか」と思いながらすごす時期が長かったことから、ジャック役に共感する点が多かったようだ。

 「俳優としてみじめに失敗して、僕を使おうなんて思う人はいなくなるんじゃないかと考えていた時期がありました。家賃も払えるかわからないし、食べ物を買えるかもわからないといった生活をしていたあの時期のことは、よく覚えています。1人目の子供を病院から連れ帰った時、僕ら夫婦が持っているお金はたったの200ドル(3万円・1ドル140円計算)くらい。これからどうすればいいんだ……と思ったものです。そうしたジャックの抱える恐怖心はすでに経験していたので、演じるうえで非常にアクセスしやすかったですね」

 そんなデヴィッドにとって、キャリアの大きな助けとなったのが、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008)だったという。同作でデヴィッドは、ハービー・デント(アーロン・エッカート)に銃で脅迫を受けるジョーカー(ヒース・レジャー)の信奉者として出演。出番は短いが、鮮烈な印象を残した。

 「シカゴで舞台に立ちながら、俳優としてキャリアを積もうとしていたころにめぐってきた機会でした。役は小さいけれど、オーディションを経てキャスティングが決まって、ノーランやヒースといった、本当に素晴らしいアーティストたちと仕事をすることができた。その経験が僕の人生を変えました。役のためであれば、奇妙であったり、ダークであったりといった、(自分の内面の)異質な場所へ行くことをいとわない。そういう、性格俳優としてのキャリアを立ち上げる、きっかけになる映画だったんです」

 それからもデヴィッドは、『アントマン』シリーズのカート役や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のポルカドットマン役などのエキセントリックなキャラクターでファンから愛され、『オッペンハイマー』や『DUNE/デューン 砂の惑星』『プリズナーズ』などでも強烈な印象を残す性格俳優として活躍している。

 「ジャックの抱えているような恐怖心とか不安というものから解き放たれたくて、たくさんのことをしました。感謝すべきことに、そういったことを重ねた現在は、すごく気持ちが落ち着いています。そういうところまで、たどり着くことができました。やっぱり、そういう心持ちの方が、アーティストとして自由な心をもって演技もできるものなんです」(編集部・入倉功一)

映画『悪魔と夜ふかし』はTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

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