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『ボルテスV レガシー』一筋縄ではいかなかった実写映画化 構想から20年、監督が直面した問題

シネマトゥデイ 映画情報 2024年10月17日 7時10分

 1977年から1978年にかけて放送された東映のロボットアニメ「超電磁マシーン ボルテスV」がフィリピンで実写映画化され、『ボルテスV レガシー』(10月18日全国公開)として誕生の地・日本に凱旋した。半世紀前のアニメが、なぜフィリピンで実写化されたのか? メガホンを取ったマーク・A・レイエス・V(正式表記はマーク A. レイエス V)監督が来日時にインタビューに応じ、一筋縄ではいかなかった実写化までの道のりを語った。

 「超電磁マシーン ボルテスV」は、選ばれし5人の若者が合体ロボットに搭乗し、地球に襲来したボアザン星の侵略軍に立ち向かう物語。ロボットアニメの魅力である変形合体はもちろん、敵味方双方のドラマ、主人公・健一ら剛三兄弟の家族にもスポットが当てられるなど、ストーリー性を重視した構成が人気を博し、今なお熱狂的なファンから支持を得ている。

 同作は日本放送と同時期に海外展開され、特にフィリピンでは爆発的な人気を獲得。国内での原作認知度は驚異の94パーセント、堀江美都子が歌う「ボルテスVの歌」は“第2の国歌”と言われるまでに浸透した。

 マーク監督も「ボルテスV」を愛する熱狂的なファンの1人だ。「フィリピンでは1980年代~2000年代にかけて放送され、私の人生の一部でもあります」と切り出したマーク監督は、「初めて『ボルテスV』を観た時、間違いなく私のお気に入りの作品になると確信しました。作品は兄弟の絆、家族のドラマ、5機のマシーンが合体するロマンはもちろん、独裁者からの自由をかけた戦いはフィリピン人の心に刺さり、多くのファンに支持されるようになりました」とフィリピン人気の背景を説明する。

 総監督・長浜忠夫が手がけた「超電磁ロボ コン・バトラーV」「闘将ダイモス」といった他のロボットアニメも国内で放送されていたが、「ボルテスV」の人気は圧倒的だったという。幼少期から「ボルテスV」に夢中だったマーク監督は、いつしか「もしも、この作品を実写化することができたら?」と映像化を夢見るようになっていた。

 マーク監督によると、実写化の構想は2004年から練り始めたという。当時のフィリピンでは、CGIなどのテクノロジーが発達しておらず、実際に製作会社に売り込んだのは10年後の2014年だった。

 「私がスタジオに直接売り込んだのですが、最初は『野心すぎる企画で、莫大な製作費がかかる』と却下されました。それでも、実写化を諦めきれなかったので、シニア・エグゼクティブ・プロデューサーのラーソン・チャンに自ら相談しに行きました。彼もまた、『ボルテスV』を国内で実写化できる人材を探していたのです。その後、(同作を製作した)GMAネットワークと話し合いを重ね、東映に承認を求めました」

 2020年にようやく承認が得られ、『ボルテスV レガシー』の製作がスタート。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、製作はすぐに休止せざるを得なくなった。「何もかもストップしました。店は全て休業状態なので、機材やセット材料、コスチュームの生地などが一切入手できなくなってしまったのです」

 コロナ禍で製作陣を悩ませたのは、それだけではない。アームストロング家の三男、“リトル・ジョン”・アームストロングを演じたラファエル・ランディコくんは当時子役だったため、ロックダウン下で撮影に参加することが禁止されていた。

 「私たちはラファエル不在で撮影を進めて、彼が参加できるようになってから全員のシーンを撮ることにしました。しかし、(コロナ禍が明けて)3年が経つと、ラファエルは成長してしまい、衣装を3回も作り直す必要があったんです。彼の母親には『あまり太らせすぎないように』とお願いしました(笑)」

 2023年、無事にテレビシリーズ全90話と映画1本が完成し、フィリピン国内で放送された。構想期間を含めると、約20年という長い道のりだった。渾身の一作を完成させたマーク監督は「日本のみなさんにも、気に入ってもらえることを願っています。チャンさんも(『ボルテスV レガシー』は)『日本への贈り物』と話していました。私たちフィリピン国民が、どれほど『ボルテスV』を愛しているのか。長い年月をかけて情熱を注ぎ込んだこの作品を観て、確かめてほしいです」と日本の「ボルテスV」ファンにアピールしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

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