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『ハリポタ』の部屋を飾り付けていく!セットデコレーターの仕事とは?

シネマトゥデイ 映画情報 2024年10月23日 8時13分

 「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下、スタジオツアー東京)のセットデコレーターであるロージー・グッドウィンがロンドンで取材に応じ、自身の仕事内容や映画『ハリー・ポッター』シリーズ制作時の秘話を語った。

 グッドウィンの『ハリー・ポッター』人生は、シリーズ第4弾『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)から始まった。当時、大学でアートとデザインの学位を取得したばかりだった彼女は、映画業界のことも『ハリー・ポッター』のことも何も知らなかった。しかし、紙素材を使った物作りやインスタレーションは大好きで、“友達の友達”から教えられた人物に履歴書を送ってみたところ「三大魔法学校対抗試合のバナーを作ってほしい」と連絡があり、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の制作に加わることになった。

 「『やった!』と思いました(笑)。最高だったのは、毎週のように『〇〇を作らないといけないからもう少し長くいて』と言われたことで、結局『炎のゴブレット』の制作期間はほとんどいましたね。さまざまな部署を転々としたので、美術とセット装飾部門がいかに小道具部門、そしてその他全ての部門と連携しているのかを知ることができたんです。その時にセット装飾という仕事があることを知り、自分にとって夢のような仕事だと気付いたんです」

 それが『ハリー・ポッター』シリーズ全作を手掛けたセットデコレーターの故ステファニー・マクミランさんとの出会いだ。第5弾『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』からはマクミランさんのアシスタントの仕事をオファーされ、彼女の仕事ぶりを間近で見ることになった。セットデコレーターの仕事は、セットを特徴付ける全ての要素を提供すること。それは家具から小道具、室内装飾、生地、照明まで多岐にわたる。

 「セット装飾部門はまず何が必要なのか、かなり長いリストを作ります。買えるもの、小道具部門に発注するもの、特殊なスキルのある会社に外注するものを判断するんです。可能な限り既製品を購入しようとしますが、どうしても作るしかないものもありますからね。アイテムの優先順位や予算を考えて判断を下していくのが、わたしたちの仕事の大部分を占めています」

 家具の調達のために、アンティーク・フェアやマーケット、オークションなどにもよく出向く。『ハリー・ポッター』シリーズでは魔法界であることに説得力を持たせるために、そうした家具にさらに手を加えることも多かった。「誇張することで、魔法的に見せるんです。グリモールド・プレイス(ブラック家に受け継がれてきた家。不死鳥の騎士団の本部)用に四柱式ベッドを購入した時は、職人のところへ持って行って高さを2倍にしてもらいました。普通のベッドに見えるけれど、変化させています。そんな変化が大切で、安価な家具に特別な形で手を加えるというのが、まさに魔法なのです」

 マクミランさんはそうした場でこれぞという一品を見つける力がずば抜けていたそう。グッドウィンは「スラグホーン(『ハリー・ポッターと謎のプリンス』での魔法薬学教授)用のスチーマートランクが必要で、それをその日に買わないといけないということがあったんです。そしていつも行くマーケットに行くと、まさに完璧なトランクがありました。ステファニーには必要なものを引き寄せる魔法を使えるんじゃないかと思いました」と尊敬を込めて語る。

 「この仕事を始めた当初は、フェアに行くと『こんなにある中から一体どうやって選んだらいいのだろう!』と思ったものですが、セットに何が必要なのかを理解するようになると、自然と引き寄せられるものなんです。勘が冴えて、物から『あなたはわたしを必要としているでしょ?』と話し掛けられているような不思議な感じで、何を選べばいいかすぐにわかるようになるんです」

 グッドウィンは現在、映画『ハリー・ポッター』シリーズの制作の舞台裏に足を踏み入れ、映画制作の驚くべき世界を体験できるウォークスルー型のエンターテインメント施設「スタジオツアーロンドン」と「スタジオツアー東京」の両方でセットデコレーターを務めている。「スタジオツアー東京」ではこの冬、クリスマスシーズン限定の特別企画「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」が11月9日から2025年1月5日まで待望の初開催。第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』のクリスマスシーンを再現する特別企画だ。

 グッドウィンは「今回のクリスマスでは、1作目に登場したものを継承しています。伝統的なクリスマスのゴールドといった美しいものですよ。わたしたちの部署は小道具を依頼しただけでなく、飾りつけ用の数々のアイテムも調達しました。多くのアイテムを購入し、それらにさらに要素を加えたり、変化させたりしたのです」と明かす。「クリスマスツリーに飾る金のヤマウズラは小道具で、それ以外の星のようなアイテムは当時購入したものだったので、同じ星を探してそれらを塗装し、テクスチャーを全く同じにしました」

 「『ハリー・ポッター』で制作されるものは全て独特であるということにつながるかと思いますが、規模が大きいことが多いんです。クリスマスツリーの飾りも全て家庭用の大きさではなく、一風変わったものになっています。だからこそ素晴らしいですし、ある意味、大変な仕事でもあるわけです。ディテールこそが非常に重要なのです」とグッドウィン。「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」は、そんなホグワーツのクリスマスを肌で感じることができるまたとない機会。グッドウィンたちの徹底した仕事ぶりに目を見張るはずだ。(編集部・市川遥)

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