テレビ朝日は23日、「華麗なる一族」「白い巨塔」などのベストセラー作家・山崎豊子の直木賞受賞作を北川景子主演で映像化した、ドラマプレミアム「花のれん」を2025年に放送すると発表した。
本作は、吉本興業の創業者・吉本せいさんをモデルに、ショービジネスに人生を捧げたひとりの女性を描いた、山崎の初期代表作のドラマ化。女性プロデューサーの先駆けとして道を切り拓いた稀代の女性興行師・河島多加(かわしま・たか)の生涯を追う壮大なヒューマンドラマ。
主人公の多加は、21歳で大阪・船場の呉服店に嫁ぐが、怠け者の夫・吉三郎は花街、寄席通いに明け暮れ、経営は傾く一方だった。「いっそ、道楽を本業に」と多加が勧めたのをきっかけに吉三郎は場末の寄席小屋を買い、夫婦で寄席商売をはじめるが、吉三郎は愛人を作った末に他界してしまう。亡き夫が遺した借金のため、より寄席商売に注力し、持ち前の根性と商才で小屋を拡大していく多加。そんな中、彼女は、窮地を救ってくれたある男性客に淡い恋心を抱く。義理、人情、恩義に厚い多加の姿を通して、日本人が失いかけた“心”を活写。また、華やかな世界の陰で、心にひそかに明かりを灯した淡い恋も描き出す。
多加を演じる北川は、もともと山崎文学の大ファンだったといい「まさか自分が山崎先生の作品に出演できるなんて……」と歓喜。本作では、21歳から晩年まで多加の40年の半生を演じており、撮影について「朝夕で一気に年齢を重ねるような状況があるので、毎日が“激動”です」と告白。ドラマについて「女手ひとつで寄席を大きくしていった商売人としての顔と、妻としての顔、また母親としての顔、女性としての生きざま、いい塩梅で描かれたヒューマンドラマです。涙あり笑いありのあっという間の2時間になると思います」と視聴者に呼びかけている。
脚本は、近年だけでも映画『Dr.コトー診療所』、ドラマ「友情 ~平尾誠二と山中伸弥 『最後の一年』~」「Destiny」などの話題作を手がけるヒューマンドラマの名手・吉田紀子。北川とは「みをつくし料理帖」(2012年、2014年)でタッグを組んだ間柄で、山崎作品のけれん味はそのままに、人間ドラマをより豊かに膨らませる。また共演者には山崎作品ゆかりの俳優陣が名を連ねるほか、お笑い界からも個性豊かなキャストが集結するという。(編集部・入倉功一)
山崎豊子生誕100年記念 テレビ朝日ドラマプレミアム「花のれん」は2025年放送予定
北川景子(河島多加役)コメント
ーーオファーを受けたときのお気持ちを教えてください
私は元々、「大地の子」や「二つの祖国」など山崎豊子先生の作品の大ファンなんです。実は両親も先生の作品が好きで、実家には文庫本が揃っていたので中学時代、夢中になって読んだことを覚えています。だからオファーをいただいたときは、まさか自分が山崎先生の作品に出演できるなんて…と驚きましたし、とてもうれしかったです。
ーー女性プロデューサーの先駆け的存在・河島多加という役柄を演じて感じることは?
彼女の人生の“濃さ”ですね。この作品で私は多加の40年間の半生を演じるのですが、朝、子ども時代の久男とかるたで遊ぶシーンを撮影したと思ったら、夜には成長した久男に召集令状が舞い込む辛い場面を撮るなど、朝夕で一気に年齢を重ねる状況があるので、毎日が“激動”です。1シーンごと体当たりで挑むのが精一杯の日々ですが、それだけ多加の人生が激動かつ濃密だったんだなと感じています。
演じていて感じるのは、多加はとても強い女性だなということ。特に夫亡きあと、息子を育てながらひとりで寄席を拡大していったところは気丈でタフだなと思いますし、明るく前向きな女性なので演じながら彼女に励まされ、勇気をもらっているような気がします。
ーー演じる上で心がけているところがあれば教えてください
多加は大阪・船場の商人なので、まずは船場ならではの言葉を忠実に表現したいという思いがあります。今回、船場の言葉を初めてきちんと勉強したのですが、私たちが知っている大阪弁でもなく、京都の言葉とも違って、初めて聞くイントネーションもありました。船場の言葉は多加という女性を演じる上で大切な要素ですので、そこはできるだけ丁寧にやりたいと思って気をつけています。あとは、この作品は京都で撮影する正当派時代劇でもありますので、伝統美、形式美をしっかり表現するため、お芝居とは別に所作や佇まいにも気をつけています。
ーー本作は東映京都撮影所で撮影が行われていますが、京都で楽しみにされていることは?
とにかく撮影所での撮影が楽しいですね。私は時代劇が大好きなのですが、セットも小道具も、この京都の撮影所で撮影できるのが本当にうれしくて、スタッフの皆さんと久しぶりにお会いするのも楽しみでした。あとは時間ができたら、大好きなおうどんのお店に行きたいぐらいですね(笑)。
ーー視聴者のみなさまにメッセージをお願いいたします!
私が演じる多加は、“日本のエンターテインメントの母”とよばれる吉本せいさんがモデルだといわれています。女手ひとつで寄席を大きくしていった商売人としての顔と、妻としての顔、また母親としての顔、女性としての生きざま、いい塩梅で描かれたヒューマンドラマです。涙あり笑いありのあっという間の2時間になると思います。ぜひたくさんの方に見ていただきたいですね。
吉田紀子(脚本)コメント
ーー山崎豊子さんの名作「花のれん」のドラマ脚本を執筆することが決まったときのお気持ちを教えてください。執筆の際、意識したこともお聞かせください
まさか、私に山崎豊子さん原作のドラマ依頼が来ると思わなかったので、正直ちょっと驚きました。山崎先生独特の、けれん味溢れる作品は、視聴者としては面白く拝見していますが、いざ自分が脚色するとなると、かなりの力技(ちからわざ)が必要だなと、覚悟をして臨みました。
原作は、主人公・多加の一代記。結婚前(明治時代)から、亡くなるまで(第二次世界大戦後まで)の長いスパンの話です。それを、2時間にどうまとめていくか。結婚、出産、破産、夫と二人三脚で始めた寄席、その夫との死別、その後、女ひとりで寄席を切り盛りし、成功し財を成し、だが、その財産を、戦禍によりすべて失ってしまう。まるで、『風と共に去りぬ』のような話だなと…。
背景にある“笑いの歴史”も押さえておかなければならなかったので、落語や色物、漫才についても史実を調べた上で、執筆にかかりました。
また、多加という仕事をもつ女性の生き様、キャラクターをどう表していくか。多加の中にある、今の世の中で薄れつつある“情”の部分を強調したいと思いました。“大阪女の情”を。
ーー主演・北川景子さんの印象を教えてください。主人公・多加を演じる北川さんに期待していることもお聞かせください
「目力の強い、真っすぐな人」という印象です。吸い込まれそうに美しい目ですよね。20代から60代までの多加の変化を、どう演じてくださるのか。どんどんたくましく強くなっていく多加の、特に晩年が、楽しみです。また、多加には、大阪人独特のおちゃめな部分、かわいらしいところもありますので、そこも楽しみです。
ーー視聴者のみなさまにメッセージをお願いいたします!
明治、大正、昭和という激動の時代に翻弄されながらも、“お笑いの世界”で、女ひとり、興行師として、ぶれずに真っすぐ生きて行く多加というたくましくもかわいらしい女性を、北川景子さんがどう演じてくれるか。お楽しみいただければと思います。
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