米ソニー・ピクチャーズが製作するマーベル映画『ヴェノム』(2018)シリーズが、最新作『ヴェノム:ザ・ラストダンス』で完結を迎える。主人公エディ・ブロックを演じてきたトム・ハーディは、今回が最終作になることを明言しており、クライマックスにふさわしく、前2作以上にヴェノム愛を注ぎ込んでいる。10月25日からの日本先行上映を前に、一足先にレビューする。
地球外生命体シンビオートのヴェノムと寄生主である人間・エディは、作品を重ねる毎に互いの理解を深め、まるでカップルのような関係性を築き上げてきた。前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)の“ハネムーン”のようなラストシーンから一転、2人は人間と地球外生命体の両方から追われる身となり、アメリカを股にかけた逃避行を繰り広げる。
本作はエディとヴェノムのロードムービーに仕上がっており、目的地を急ごうとヴェノムが馬に寄生したり、ラスベガスのカジノに寄り道して豪遊するなど、相変わらずの凸凹コンビぶりを堪能できる。ヴェノムもより人間らしくなり、旅の途中で「俺もこんな生活がしたかった……」と思わずエディに本音を漏らす一幕も。だからこそ、2人の運命を左右する最終決戦はカタルシスに満ちており、2人が下す決断は涙を誘う。
感動的な最終章のメガホンを取ったのは、シリーズの脚本を執筆してきたケリー・マーセル。前作から主演のトムと一緒に原案にも名を連ね、完結編でついに長編監督デビューを果たした。エディとヴェノムを理解するマーセルが監督に就任したことで、二人のキャラクター像がより鮮やかに描写され、バトルシーンでも二人のコンビネーション技がたっぷりと盛り込まれている。
物語のカギとなるのは、ヴェノムらシンビオートにまつわる“秘密”だ。その秘密を知るのは、彼らの創造主・ヌル。原作コミックでは「キング・イン・ブラック」の異名を持つヌルは、実写映画でもラスボスの風格が漂い、スクリーンに映る度に圧倒的な存在感を放つ。マーセル監督は「たった一回で終わらせるには、あまりにも強すぎる」とヌルの脅威はシリーズ完結後もソニーのマーベル・ユニバース全体に影響を与えることを示唆しており、要注目ともいうべき新キャラクターとして描かれている。
さらなる展開を匂わせながらも、『ヴェノム』シリーズとして納得のいくフィナーレが用意されている。本作を鑑賞した時、改めてエディとヴェノムの愛おしさに気づき、「これで終わってほしくない」と二人の活躍がもっと観たくなるはずだ。(編集部・倉本拓弥)
映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は11月1日全国公開(10月25日、26日、27日に先行上映)
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