マーベルの人気ダークヒーロー、ヴェノムを描く人気シリーズの完結編『ヴェノム:ザ・ラストダンス』のファイナル予告編で登場が発表された地球外生命体シンビオートの創造主・ヌル。長い白髪で顔は見えず、演じている俳優も公式発表されていない。ヴェノムが恐れるこのキャラクターは、一体何者なのか。原作コミックにおける設定や歴史を踏まえて紹介する。
「シンビオートの神」「深淵の支配者」の異名を持つ闇の王
ヴェノムは、人間のジャーナリスト、エディ・ブロックにシンビオートが寄生して誕生したダークヒーローだが、シンビオートはヴェノムの他にも多数存在する。その全てのシンビオートを創造したのがヌルだ。そのため、ヌルは自らを“シンビオートの神”と呼ぶ。また、暗闇世界の支配者なので“黒の王”とも呼ばれている。
コミックでの歴史は比較的新しく、初登場は2018年の「Venom(Vol. 4)#3」。ヌルは、この宇宙が生まれる前から存在し、暗黒の世界で眠りについていた。しかし、セレスティアルズ(=この宇宙の創造より前に出現した種族)が宇宙を創り始めたために光が生まれ、その光がヌルの支配する闇の領域を侵食し始めたので、宇宙を闇の世界に戻すため、セレスティアルズと戦うようになる。ちなみに、セレスティアルズはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画『エターナルズ』で、エターナルズの創造主として少しだけ姿を見せている。
この歴史を見るだけでも、ヌルのパワーの強大さがよくわかる。例えば、これまでMCUのラスボスだったサノスと比較してみよう。サノスは、セレスティアルズが創造した種族・エターナルズの一人だ。一方ヌルは、セレスティアルズによるこの宇宙の創造以前から存在し、彼らと互角に戦い、倒してもいる。サノスとは格が違うのだ。
MCUに登場した「暗黒の剣」との意外なつながり
そんなヌルが、セレスティアルズとの戦いのために創造したのが、無数のシンビオートたちだった。しかし、シンビオートたちはヌルに叛逆(ほんぎゃく)し、ヌルをある惑星に幽閉し、宇宙に散らばったのだ。ちなみに、ヴェノムのコミック初登場は、ヌルよりずっと前の「Amazing Spider-Man #299」(1987)。ヴェノムという名称以前のエイリアン・コスチュームとしての初登場は「Amazing Spider-Man #252」(1984)。なので、ヌルがシンビオートを創造したというのは後付けの設定だ。
実は、ヌルのパワーを象徴するアイテムが、すでにMCUで描かれている。それは『ソー:ラブ&サンダー』のヴィラン・ゴア(クリスチャン・ベイル)が持っていた暗黒の剣“ネクロソード”。同映画では言及がなかったが、この剣はコミックではヌルが最初に創造したシンビオートで、「オール・ブラック」と呼称される。また、ヌルがこの剣を使ってセレスティアルズと戦ったことから、“神殺し”とも呼ばれている。コミックでは、ヌルが戦闘後に意識を失っていた時、近くを通りかかったゴアがこの剣を手に入れ、その力を得てゴア・ザ・ブッチャーとなった。
そんなヌルが登場したとなると、気になるのは、今後のMCUとのつながりだ。コミックでのヌルの敵はヴェノムだけではなく、マイティ・ソーとも戦っており、さらにシリーズ第4作が進行中のスパイダーマンや、2025年公開予定のMCU新作映画、『ザ・ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップス(原題)The Fantastic Four: First Steps』に登場するシルバーサーファーとも戦っている。となると、ヌルは今後のMCUにも登場するのだろうか。まずは『ヴェノム:ザ・ラストダンス』で彼の力を確認しておきたい。(文・平沢薫)
映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は11月1日全国公開(10月25日~27日まで先行上映中)
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