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「踊る大捜査線」遠山俊也、森下は“僕の恩人” ライバル・緒方がいなければ「生き残れなかった」

シネマトゥデイ 映画情報 2024年11月11日 7時3分

 社会現象を巻き起こした「踊るプロジェクト」12年ぶりの最新映画『室井慎次 敗れざる者』。柳葉敏郎が主演を務める本作には、27年前の「踊る大捜査線」テレビシリーズから引き続き出演している俳優が複数いる。そのうちの一人が、森下孝治役の遠山俊也だ。「踊るプロジェクト」再始動を受け、遠山が長く同じ役を演じ続けること、「踊る大捜査線」におけるライバル的存在・緒方薫(甲本雅裕)について語った。(以下、「踊る大捜査線」シリーズと『敗れざる者』のネタバレを一部含みます)

緒方がいてこその森下

 連続ドラマの第1話冒頭、「パトカー出して!」と張り切る主人公の青島俊作(織田裕二)の出鼻を、「警務課へ行って(書類書いて)ください」とくじいたのが森下だ。「こんなふうに、何十年とやらせていただけている役は、後にも先にも森下だけなので、本当にありがたいし、役者冥利に尽きます。そういう役を与えていただけて、あらゆる方に感謝しかないです」と感慨深げに語る。そのうえで、「森下という役は、緒方があってのものなんです」と同じく第1話から登場しているライバル的存在の名前を出した。

 「役柄でも、役者としても、森下を演じる遠山は、緒方を演じる甲本ちゃんにどんどん引っ張ってもらったし、お互い切磋琢磨しながら芝居をしてきました。甲本ちゃんは、あらゆる役者のいいところをミックスした、稀有な役者だと思うんです。『踊る』後の彼の活躍を見れば言わずもがなですよね」と最大級の賛辞を捧げる。「そんな役者さんとここで出会うことができ、“緒方森下”とセットで呼ばれる関係性を作れて、本当に幸福だったと思っています。相手が甲本ちゃんじゃなかったら、森下はこんなふうに生き残れなかっただろうな」と思い返した。

 当初は特にライバル関係ではなかった2人がだんだんとそうなっていったのは、脚本の力も大きいが、撮影現場のスタッフ陣の采配もあった。「僕らを信頼してくださる演出陣、制作陣がいらしたおかげです。甲本ちゃんと事前に緻密な話し合いや計算はほとんどしたことがない。テストや本番で『ヨーイ、ドン!』って芝居を作っていきました」と証言。例えば、『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』の冒頭、川を挟んで勝どき署と争いになったシーン。「小道具さんが、緒方と森下にわざと違う長さの棒を渡してきたんです。当然『何でおまえのほうが長いんだよ』って芝居が生まれてくるわけです。それを本広(克行)監督が活かしてくださった。それどころか、僕らの想像なんて全部超えたことをまた仕掛けてくる。だから、それをさらに超えなきゃいけなかったんです」とまさに戦いのような現場だったことを明かした。

度肝抜かれた連ドラ最終話

 27年間で思い出深いシーンはどこなのか。「室井さんときりたんぽ鍋を食べる約束を交わすやりとりと、それを引っ張った『敗れざる者』でのシーンを別格とすれば、第9話冒頭のビルから飛び降りようとする青年(つぶやきシロー)を止めようとしている一連のシーンです。未来に大きく羽ばたけ、いや羽ばたいちゃダメだとか、勝手にアドリブで言っていたんですけど、あれは本来、甲本ちゃんの役だったんです。僕の別のシーンとテレコ(入れ替え)になった。珍しいし楽しかったのでよく覚えています」

 さらに「連ドラ最終話の最後のほうで、お店の全員が捜査員で、銃を出したところも印象深いです。台本読んでいたはずなのに、あれは度肝抜かれました」と思い返した。「でも、そもそも連ドラの湾岸署のセットもすごかったんです。フジテレビがお台場に移って最初のドラマで、天井のある広いセットを組んで。気合入っているなドラマだな、一役者としても頑張らないとなと思いました」と語る。通常、ドラマのセットは照明や機材の関係で天井はつけないのだが、カメラワークなどを自在にしたいという意向で湾岸署には天井があったのだ。

 森下は前述の約束があるため室井にあこがれているが、同時に「現場の人間として青島さんを敬愛していました。演じる織田さんは、ものすごく熱心な役者さんでした」と証言。「『踊る』は撮影が長くて、役者さんの中には、朝、入ってきた瞬間に『今日は何時に終わるかな』って(笑)。それは俳優としても人間としてもふつうの感覚なんです。でも織田さんは『早く帰りたいですか? 僕はずっと現場にいたいです』『現場、楽しくてしょうがないです』って本当に心からおっしゃっていました。後にも先にも、そんなことを言う役者は、僕の知る限り、織田さんだけです」と明かした。

森下は“恩人”、「踊る大捜査線」は“財産”

 なぜ「踊る」がこんなにも人々から愛されたのか。「やはり、細かい部分を大事にして、ファンの方に楽しんでいただけているからじゃないでしょうか? 『踊る』は昔から、ものすごく熱心なファンの方がたくさんいらっしゃいます。僕はネットとかぜんぜんわからなかったけど、君塚(良一・脚本)さんや本広監督はそれをちゃんと先取りして、そこで応援してくださる方々を大事にしていました。いまもそうですよね。当時すごく驚いたのは、ネットでエキストラさんを募集すると何百人、何千人と来てくださるんです。いまならネットの力のすごさもわかりますが、あの頃はぜんぜん。『え、みなさんギャラ無しなの!?』って(笑)」と笑う。「しかも、みなさん暴走しないで、ちゃんと作品を壊さないいい仕事をしてくださる。すごいことですよね」と感心していた。

 「『踊る』がなかったら、僕は役者をやり続けられていたか、わからないです」と遠山は断言する。「フジテレビのプロデューサーさんで、室井さんとのきりたんぽのシーンで僕のことを知ってくれて、それ以降ずっと作品に呼んでくださった方がいました。『踊る』に出ていましたよね、とあちこちで言われましたしね。森下を演じていなかったら、僕のことを知っている方はいまの100分の1しかいなかったと思います。森下は僕の恩人であり、『踊る』は僕の財産です」としみじみ語る。「ただ、僕が『踊る』ってこうだよな、こうなったらいいなとか考えても、それは1つも反映されないし、100倍も200倍も超えてくる。だからもう『踊る』には何も期待しません(笑)」ときっぱり。「でも、たとえば僕らがみんなじいさんになっても、違う新しい人が『踊る』を継いで、物語が続いていったらカッコいいなと思っています。タイトルは変わらずに、つながれていくんです。そんな作品、なかなかないでしょ?」と笑い、「もちろん、遠い将来の話ですけど」と付け加えた。(取材・文:早川あゆみ)

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