池松壮亮が9日、都内で行われた主演映画『本心』の公開記念舞台あいさつに登壇し、「最初は味方が見つからなかった」という本作がついに公開を迎えたことに対して感無量の思いを口にした。この日は三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督も来場した。
平野啓一郎の同名小説に基づく本作は、自らの意思で死を選んだ母・石川秋子(田中)の気持ちを知りたいと願う石川朔也(池松)が、母親をAIでよみがえらせる選択をするさまを追う。
昨日公開を迎え、池松は「感無量と言いますか、なかなか言葉がありません。石井さんと僕がこの原作に出会って、公開まで4年かかりました。(制作)途中、映画と時代が追いかけっこのようになって、世界的にも昨年は『AI元年』と呼ばれ、自分たちの生活に(AIが)どんどん寄ってきている中で、こうして映画として同時代の観客の方と共有できることをとてもうれしく思っています」としみじみと語る。
また、「最初は味方が見つからなかったんですけど、その中で石井さんが一人でこの映画を実現すべく力を注いでくれました。一緒に初日を迎えられて、素晴らしい共演者の方と多くのみなさんに観てもらえて誇りに思いますし、とても幸せです」と喜んだ。
石井監督は「池松くんから『原作が素晴らしいから読んでほしい』と言われたのを昨日のことのように覚えている」と言いつつも、どこで声をかけられたのかは「近所のバー」「タクシーの中」と池松とでは記憶違いが起きていることを明かし、「記憶はものすごくあいまいで、それを搭載している我々の存在もあいまい。人間や本心ってなんなんだろう? とここでも感じる。そういう映画を目指そうと思っていました」と制作当初を振り返る。
また、池松と「今のままだったら間に合わなくなる」「制作を急がないと」「公開を急がないといけない」などとメールを送り合っていたことも打ち明ける。そして、「(公開は)ドンピシャのタイミングだったと思います。AIは今後さらに発展すると思いますが、一番の問題は人の心。本心が必ず問われると思いますので、それを先んじて映画で描けた意義をものすごく感じます。映画制作者として立ち向かうべき最大のテーマに挑めたことは誇りです」と充実した表情をのぞかせた。(錦怜那)
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