トム・クルーズの出世作『トップガン』(1986)36年ぶりの続編として大ヒットを記録した映画『トップガン マーヴェリック』(2022)が、日本テレビ系・金曜ロードショーで地上波初放送。本物にこだわった迫力の飛行シーンと、世代を越えた戦闘機乗りたちのドラマが胸を打つ本作において、特にシリーズファンの感動を誘うのが、主人公マーヴェリック(トム)のかつてのライバル、アイスマンを演じたヴァル・キルマーの出演だろう。
若きパイロットたちの教官としてトップガンに戻るマーヴェリックだが、その決め手となったのが、海軍大将にまで登り詰めたアイスマンによる推薦。劇中におけるマーヴェリックとアイスマンの再会シーンは、公開当時に大きな話題を呼んだ。
2014年に喉頭がんが見つかったヴァルは、闘病を経て本来の声を失っていたが、アイスマン役に復帰。セリフを発するシーンもあり、その声はAI技術によって復元されたものであることが明かされている。トムにとって、ヴァルの存在は続編に不可欠だった。プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、来日時のインタビューで「続編を作ろうとなった時に、トムはヴァルなしではできないと言いました。それほど彼の存在は重要だったんです。ヴァルとも話し合いを重ね、彼もこの役に尽力してくれました」と語っている。
実際、アイスマンは病気のため声を発するのも難しいという設定で登場するが、それはヴァル自身のアイデアだったという。監督のジョセフ・コシンスキーは、Deadlineのインタビューで「私たちみんながヴァルの出演を願っていました。しかし、どんなことができるのかわからなかった。そこでヴァルに来てもらい『ぜひこの映画に出演してほしい』と直接伝えたんです。そこで彼が提案してくれたのが、できるだけリアルな設定にすることだった。(アイスマンが病気であるという)アイデアが生まれたことで、物語がさらに広がり、より良い形で語ることができるようになりました。彼の提案には本当に感動しましたよ」と語っている。
見事にアイスマンとして復帰したヴァルに、トムも涙を抑えきれなかったようだ。2023年に出演したトークショー「ジミー・キンメル・ライブ!」内でトムは「とても感動的な瞬間でした。ヴァルのことは何十年も前から知っているわけですから」「彼がカムバックしてあのキャラクターを再演するなんて……本当に素晴らしい俳優だから、一瞬であのキャラクターに戻りましたよ。まさにアイスマンそのものを見ていましたね」と語り「どうしても感情が込み上げてきて、泣いてしまいましたよ」と撮影当時を振り返っている。(西村重人)
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