吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で平安中期の公卿、歌人の藤原公任を演じる町田啓太。主人公・まひろにとって公任は“好ましくない”人物として描かれているが、町田と吉高は連続テレビ小説「花子とアン」(2014)や映画『きみの瞳が問いかけている』(2020)などでたびたび共演しており、気心の知れた仲。「光る君へ」での数少ないながら強烈な共演シーンについて、町田が振り返った。
町田演じる公任は、関白・藤原頼忠(橋爪淳)を父に持つエリートで、同い年の藤原道長(柄本佑)とは少年期より友情を育む一方でライバル関係にあった。後に父が隠居し後ろ盾を失ってからは人生が大きく変化していくこととなるが、初期の自信に満ち溢れていたころの公任を、町田はこう振り返る。
「エリート街道まっしぐらで何も疑うことのない青年だったので、そのころの勢いに関しては三郎(道長の幼少期の名)との対比も含め、思いっきり出せたらいいなと思っていました。公任からすると本気で自分が一番だと、ただただ思っている。ひけらかしているような感じもありますし、嫌味ったらしいというか、そこまで言っちゃうんだみたいな正直過ぎるところもあったりしましたけど、一切悪びれていない感じがあったので、逆に気持ちよく見せられたらいいなと。少し面白みが出ればいいなと思っていました」
そんな自信に満ちあふれていた公任の心無い一言に、人知れず傷ついていたのがまひろだ。第7回で道長、公任、斉信(金田哲)らと打毬(だきゅう)が行われたのち、公任と斉信が姫たちの品定めをするシーンがあった。その際にまひろもやり玉にあがり、公任が「あれは地味でつまらん」「女ってのは本来、為時の娘みたいに邪魔にならないのがいいんだぞ。あれは身分が低いからダメだけど」「女こそ家柄が大事だ。そうでなければ意味がない」など言いたい放題。まひろが偶然この会話を聞いてしまい、心が折れるという展開だった。そうとは知らない公任は後にまひろの書いた「源氏物語」をいたく気に入り、関心を寄せることとなる。
まひろと公任が初めて言葉を交わしたのは第33回。左大臣・道長の依頼を受けて「源氏物語」を書くために藤壺に上がり、中宮・彰子(見上愛)の女房として働き始めたころ、公任が斉信と共にまひろの局を訪ねる。この時、二人は彰子の女房たちが「頼りにならない」と悪口を言い出し、それを聞いていたまひろがかつての恨みを晴らすかのように「わたしのような“地味でつまらぬ女”は己の才を頼みとするしかございませぬ。左大臣様のお心にかなうよう精一杯励みます」と“逆襲”した。
3月に行われたトークショーでは、吉高が町田に「本当に格好いいし、優しい。顔も心もキレイなので嫌いになる方法を教えてほしいぐらい」と褒め殺しにしていたが、町田は初めてまひろと会話を交わした第33回のシーンをこう振り返る。
「吉高さんとは以前も共演させていただいて、その時もそうだったんですけど、率先してコミュニケーションを取ってくれて救われる場面がたくさんあったので、今回も楽しみにしていたんですね。本当に変わらない感じで嬉しかったんですけど、ふと過去に共演した時のことを思い返してみると僕、結構いじられるというか突っ込まれていたなと(笑)。だから、公任とまひろの関係とあまり変わらないかもしれないです(笑)。もちろん、悪態をついたりはしないですよ!(笑)。33回でようやく言葉を交わすことが出来て。公任が『藤壺にあがれてよかったな』と偉そうにほざいていましたが、まひろに思い切りちくりとやられて楽しかったですね(笑)」
また、第36回では宴席の場で酔った公任がまひろに絡むシーンが話題に。道長が、孫である敦成(あつひら)親王の誕生50日を祝う「五十日の儀」を開いた際、公任はまひろの近くによると「このあたりに若紫はおいでかな? 若紫のような美しい姫はおらぬなぁ」といい、またしてもまひろが「ここには光る君のような殿御はおられませぬ。ゆえに若紫もおりませぬ」とピシャリ。顔を合わせるとそんな調子の二人だが、町田からすると公任はまんざらでもないのではという。
「斉信とまひろの局に行った時も“丁寧に”返されていましたけど。逆に公任、ちょっとクセになっているんじゃないかなという感じもあって。というのも、公任の周りにそこまで返してくれる人がいないんですよ。道長には割と放任されているし、斉信とは張り合っているだけなのでちょっと違いますし、行成(渡辺大知)は苦笑いみたいな。だから、もしかしたらスパッと言われてうれしかったのかもしれないなと。公任自身、結構言うタイプですし」
まひろ自身は知らぬことだが、公任はまひろが「源氏物語」を書くきっかけを作った人物でもある。第30回で道長が娘・彰子のもとに一条天皇(塩野瑛久)が渡ろうとしないことに頭を悩ませていた時、行成が帝は書物を好むため(亡き中宮・定子のために書かれた)「枕草子」を超える面白い読み物があればと提案し、公任が妻・敏子(柳生みゆ)が行う学びの会に“面白い物語を書く女”がいると道長にまひろを紹介した。
「公任、意外ときっかけを作っているんですよね。公任はまひろの物語を書く能力をとてもかっていて、だから道長にまひろの存在を話したわけで。一時期は公任の屋敷でまひろの面倒を見ていたわけだから、普通は噛みつかれたりしたら黙ってはいないですよね。でも、公任はおかまいなしな感じなので、いわゆる“おもしれぇ女”みたいなことなのかはわかりませんが、“面白いな、この人”っていうのは思っていたんじゃないですかね。この時代の中で唯一男女関係ないのが芸事で、だからこその関係性だったのかもしれません」と公任とまひろの不思議な縁に思いを馳せていた。(編集部・石井百合子)
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