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青春ラブストーリーのキラキラ感、どう生まれる ヒットメーカー・新城毅彦監督が語る

シネマトゥデイ 映画情報 2024年11月17日 8時15分

 田村結衣の人気ラブコメ漫画を八木勇征(FANTASTICS)主演で実写化する映画『矢野くんの普通の日々』(公開中)。本作のメガホンをとったのがラブストーリーの名手として知られる新城毅彦監督。『四月は君の嘘』(2016)は興行収入14.2億円、『午前0時、キスしに来てよ』(2019)は11.7億円、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023)は10.1億円とヒット作を多く生み出してきた。『矢野くんの普通の日々』では多くのキャストが「映画初出演」となったが、青春ラブストーリーの要ともなる“きらめき”を生む撮影の裏側を、新城監督が語った(※数字は日本映画製作者連盟調べ)。

 本作は、なぜか毎日ケガまみれになってしまう超不運体質な男子高生・矢野くん(八木)と、超心配性なクラス委員長・吉田さん(池端杏慈)ら高校生たちの恋や友情を描く学園モノ。ヒロインの池端杏慈(17)は実写映画初出演。吉田さんの恋する学園一のモテ男・羽柴役の中村海人(27・Travis Japan)、吉田さんの親友・メイ役の新沼凛空(16)、矢野くんの過去を知る岡本役の筒井あやめ(20・乃木坂46)、お調子者のクラスメイト・田中役の伊藤圭吾(18・龍宮城)ら多くのキャストが映画初出演となった。

 新城監督は、いわゆる王道のラブストーリーとは異なる本作の持ち味をこう語る。「僕は若い子たちのラブストーリーをやらせていただくことが多いのですが、これまでと少し違うのが、主人公の矢野くんがイケメンはイケメンなのですがちょっと天然というか可愛いキャラクターであるところ。例えば『午前0時~』で片寄涼太が演じたスーパースター、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』で高橋恭平が演じた学園一の人気者とは違う。それと、矢野くんを取り巻くキャラクターも皆純粋で、王道のラブストーリーにあるような恋敵が出てきて争うような展開ではなく、登場人物皆を応援したくなるような、ほっこりする味わい。こういう仲間、クラスだったら楽しいだろうなみたいなところが面白かったですね」

 主演の八木は27歳、ヒロイン役の池端は17歳と10歳の年齢差がありながらも、劇中では違和感なく同級生として存在する。撮影現場での雰囲気を問うと、新城監督は「八木くんは単独での映画主演は初で座長という思いもあっただろうし、池端さんはいい意味でイマドキの子。くったくなく明るい子で、助けたいと思わせる妹感がある。最初の頃はかなり緊張していたと思います。当初、スケジュールの関係で八木くんの出演シーン以外から撮り始めて、徐々に現場が温まったころに八木くんがインしたのですが、彼と会ってからはちょっと変わりました。八木くんが矢野くんになっているからだと思うんですけど、池端さんがだんだん伸び伸びしていって、近すぎることもなくいい距離感でやってくれていたように思います」と振り返る。

 「ポカリスエット」(2023)のCMで注目を浴びた池端は、「ニコラ」の専属モデルとして活躍。ドラマ「オールドルーキー」(2022)でゲスト出演、アニメーション映画『かがみの孤城』(2022)で声優の経験があるが、女優としては走り始めたばかり。本作でヒロインに大抜擢となったが、新城監督は想像以上の健闘に圧倒されたという。

 「正直なところ、最初は大変だなと思っていたんです。台本読み、リハーサルをしたんですけど、八木くんと白宮(みずほ)さん以外はほとんど芝居経験のない子ばっかりだったから危機感もありました。そんななかで池端さんには『ひるなかの流星』(2017)とか『午前0時~』とか、僕がこれまでに撮った作品を観て勉強してほしいと。“永野芽郁ちゃんみたいな女優にしたい”といったことも言いました。それで1か月後ぐらいにインしたときにはもう……若い子の伸びってすごいんですよね。 ガラッと変わったから。まだ引き出しはないけど、旬の子たちで華があるので、もともと持っている個性を生かせたらいいのかなと思いました」

 とりわけ少女コミックを原作にしたラブストーリーに欠かせないのが青春の“きらめき”。多くのラブストーリーを成功させてきた新城監督は、どのように取り組んでいるのか?

 「もちろん画の力とか、ライティングといった技術的なこともありますが、とにかくキャストたちに思いきりやってもらうことですね。僕は現場であまり怒ることもないし、 褒め殺しにするのでもなく、さほど距離を縮めるようなこともしません。今回のキャストは皆、娘、息子ぐらい年が離れていて純粋に可愛いとは思っていて。“変に悩まないで伸び伸びとやってほしい”“ダメだったらその時は言うから思いっきりやってほしい”と。それは、引き算をしていく方がやりやすいというのもあります。芝居の経験は少ないかもしれないですけど、例えば池端さんだったら「ポカリスエット」のCMをやっていたりモデルとして活動していたりして表現力は当然あるので、17歳の今しかない輝きを引き出せたらと思いました」

 なお、映画は海辺の町が舞台となっており、矢野くんや吉田さんの通学路は鎌倉や江の島で、夏祭りは大宮八幡宮で、林間学校は八ヶ岳で撮影。四季の移ろいを感じさせるロケーションも美しく、とりわけ夏祭りは射的やダーツ、金魚すくいなど昔ながらの風景が広がり、多くが懐かしく感じ入るはずだ。新城監督いわく「ロケハンが一番大変」なのだそう。

 「ライティングをうまく使える、グリーンを綺麗に撮れるとか。あと、“普通の日々”とは言いながら、映像ではリアルに普通の場所で撮るわけにはいかないわけで。かといってあまり特別すぎてもいけないし、普通の中の“いいとこ取り”の積み重ねにしていく。それはこの作品に限らずで、難しいです」と地道な苦労を語っていた。(取材・文:編集部 石井百合子)

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