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『八犬伝』動員50万人を突破!なぜ今、愛されるのか

シネマトゥデイ 映画情報 2024年11月22日 12時33分

 役所広司が主演を務める映画『八犬伝』(公開中)が、公開4週間目を迎えても、その勢いは衰えず、11月21日時点で総動員数50万人を突破したことが発表された。

 本作は、世界に誇る日本ファンタジーの原点ともいえる「南総里見八犬伝」の作者・滝沢馬琴の執筆への情熱を、浮世絵師・葛飾北斎との交流を交えて壮大な構成で現代に蘇らせた山田風太郎の「八犬伝 上・下」を実写映画化。八つの珠に引き寄せられた八人の剣士たちの戦いをダイナミックなVFXで描く“虚”パートと、その物語を生み出す馬琴(役所)と北斎(内野聖陽)の奇妙な友情を通じて描く“実”パートが交錯する。『ピンポン』や『鋼の錬金術師』シリーズの曽利文彦がメガホンを取った。

 先日発表された第37回日刊スポーツ映画大賞では、最多の5部門5ノミネート(作品賞、監督賞、石原裕次郎賞、主演男優賞、助演男優賞)された本作。観客からは「人々を勇気づけ生きる希望を与える」「挫けそうな時に支えになってくれる」など、失明してもなお信念を貫き通した馬琴の実話と、馬琴が描いた八犬士たちが巨悪に立ち向かう“勧善懲悪”の物語に、勇気づけられたという声が後を絶たない。

 なぜ、この物語が今、愛されるのか。本作が人々を魅了する理由を「苦しい時代に燦然と輝くやさしい映画だ」と映画評論家の前田有一は評する。「映画界では、大衆向けのエンターテインメントは一段低く見られ、いくらかの興収をあげたところで、アート系作品にくらべればどこかバカにされがちである。だが、人々を喜ばせるためだけの作品づくりだって立派なのであり、かけがえのない仕事である。ことは映画産業だけではない。業界は違えど、ほとんどのすべての人が似たようなことを感じた経験があるのではないか」

 続けて、これまで様々な制約の中で多くのエンターテイメント映画を作ってきたであろう曽利監督の作品について、「彼の作品すべてに通ずるのは、私は『優しさ』だと思っている。この映画は彼の持つそうした特性が、これまで最も生かされた作品であることは疑いない。そして、この監督がおそらくキャリアの中で、もっとも作りたかったのは本作だったのではないか」と私見を述べた。

 また、本作の実話とファンタジーが交錯するという構成に鑑賞者の満足度が繋がっているのではとも分析する。現在同じくヒット中の『侍タイムスリッパー』やエミー賞を獲得した配信ドラマ「SHOGUN 将軍」など、本格的な時代劇に注目が集まっている中、『八犬伝』は馬琴役の役所、北斎役の内野が演技合戦を繰り広げる見ごたえある本格時代劇ドラマと、馬琴作の劇中劇をVFXを駆使して映像化したアクション時代劇が交錯する。

 いわば1作品で2本分楽しめるその独自の構成が、観客の満足度に直結しているのではないかと洞察している。現代につながる時代劇の骨太なテーマと、自由な発想で描かれるファンタジー。この両方を高い品質で幅広い世代の共感を得ているのではないだろうか。(高橋理久)

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