吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)の24日放送・第45回より、主人公・まひろ(紫式部/吉高)が大宰府に向かうこととなり、かつてまひろを裏切った宋の見習い医師・周明(松下洸平)との再会が描かれた。ドラマの美術を監督する山内浩幹チーフデザイナーと、大宰府のセットデザインを担当した枝茂川泰生デザイナーが、「歴史公園えさし藤原の郷」でのロケも交えた美術の裏側を語った。
松下演じるオリジナルキャラクターの周明が登場するのは、6月16日放送・第24回以来。まひろは「源氏物語」を娘の賢子(南沙良)に託した後、「源氏物語」の中で描いた場所、そして筑前守・大宰少弐として亡き夫・宣孝(佐々木蔵之介)が暮らしていた大宰府に赴く。まひろは、そこで周明と20年以上ぶりに再会する。
まひろと周明が再会したのが、大宰府の市。市は、「えさし藤原の郷」の政庁北側広場を使って既存の朱塗り建築を借景にレイアウト。亭(東屋)を中心に、 唐風家具や陶器、薬種、文房具、化粧品などの露店が立ち並び、柳や竹、太湖石を配した中国色の植栽などで平安京との違いを出している。
山内は「まひろが政庁に行く前にここを訪れます。平安京で育ち、さまざまな市を歩いてきたまひろですが、それらとは全く違った風情にしたいというのがまずありました。チーフ演出の中島由貴も国際色豊かな大宰府を表現したいということで、 市も異国情緒漂う感じにデザインしています」とコンセプトを説明する。
大宰府編では「赤」をテーマカラーとしているが、それは市にも踏襲されている。枝茂川は「赤い傘に関しては清明上河図(せいめいじょうがず)という、北宋時代の町並みを描いた中国の絵巻がありまして、そこに描かれた画を参考にイメージしています。露店の屋根の幕や、亭も赤くしています。さらに、ここにも梅ヶ枝餅、梅文様の装飾など、大宰府を象徴する梅を随所に散りばめています。梅ヶ枝餅は、当時存在したのかリサーチして風俗考証の佐多芳彦先生にもご相談したところ、餅好きの菅原道真に老婆が梅の枝に餅を刺して贈ったのが始まりという逸話もありましたので、もしかしたらあったかもしれないということで飾ることにしました。枝は本物ですが、餅は本物を使うわけにいかないので紙粘土で作っています。あと、乙丸(矢部太郎)が化粧品屋できぬ(蔵下穂波)に紅を買うシーンが出てくるのですが、品物の下の敷物に梅の文様を入れたり、梅の形をした髪留めがあったり、こういったところも装飾スタッフが梅を意識して飾ってくれました」とディテールに触れる。
文房具屋にはすずりやハンコ、水入れなどがあり、一部は動物がモチーフになっているなど見れば見るほど細かい。枝茂川は「まひろが近寄って覗きそうな店ということで文房具を置くことにしました。すずりに関しては為時邸の為時の居室にも亀のすずりが置かれていましたが、あれも中国からきた設定です」といい、「文房具がまひろゾーンとすれば“周明ゾーン”として設けたのが薬屋(漢方薬)です」と話す。
品物はすべて宋から輸入されたものという設定になっており、枝茂川は「大宰府の発掘調査では青磁、白磁も出土されていますので、そういったものも取り入れています。平安時代の吊香炉は屋根裏から吊るすタイプが多いのですが、中国ではスタンドに吊るすタイプもありそれが売られています。こういったものを日常で使うのは上級、中級貴族ぐらいです」と語る。
さらに、商品の展示にもこだわりが。お店の人が商品を運ぶために入れた収納箱をテーブルに見立てて、商品を並べているなど、一瞬の隙もない小道具の使い方や創意工夫のこだわりに美術チームの情熱、誇りを感じた。(取材・文:編集部 石井百合子)
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