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ソニン、多くの試練があったからこそ今がある「すべて女優としての引き出しに」

シネマトゥデイ 映画情報 2024年12月7日 6時15分

 パワフルな歌声と確かな演技力で、ミュージカル女優としての地位を確立してきたソニン。ディズニー・アニメーション最新作『モアナと伝説の海2』では声優業に初めてチャレンジし、また新たな扉を開いている。2000年に「EE JUMP」としてデビューして以降、数々の荒波を乗り越えて自ら進む道を切り開いてきた彼女だが、「若い頃に試練が多かったからこそ、今でも女優業をやることができている」と笑顔を見せながら、「迷ったっていい。自分が選んだ道なら後悔しない」とソニン流“人生の歩き方”を語った。

ディズニー作品で初声優「全力を注いだ」

 本作は、美しく壮大な海を舞台に、“海に選ばれた少女”モアナの奇跡の冒険を描いたミュージカル・アドベンチャー映画『モアナと伝説の海』の続編。人間を憎み世界を引き裂いた“嵐の神の伝説”を知ったモアナが、その呪いを解くため、マウイや新たな仲間と共に航海に繰り出す姿を描く。

 オーディションを経て、モアナが旅の途中で出会う謎の女性マタンギ役に抜擢されたソニン。「マタンギの楽曲は、ものすごい難曲で。オーディションで曲を頂いた段階で、すごくハードルが高いなと思いました」と打ち明けるも、「『モアナと伝説の海』が大好きでしたし、ディズニー作品に出演するチャンスがあるなんて、誰しも憧れることで、誇りに思うようなことです。初めての声優業でドキドキもありましたが、精一杯のリスペクトを込め、わたしの持っている時間、力、そのすべてを費やそうと思ってオーディションに臨みました」と熱っぽく回想。「『どうしよう』というプレッシャーを感じる余裕もないというか、とにかく目の前のこの役に対して向き合おうという気持ちでした」と突き進んだ。

 悪女のように見えつつ、モアナの背中をそっと押していくマタンギは、魅惑的なオーラのある女性だ。ソニンは「右にいたと思ったら左にいて、上に行ったり、下に行ったり、気付いたらモアナの傍にいたり。まるでコウモリのようで、フィジカル的にもマインド的にも軽やかな女性」と役柄を分析する。マタンギの歌う「迷え!」という楽曲も彼女の性格を表現した1曲となっているが、「プレッシャーをかけすぎずに、マタンギがモアナを自然と励ましているような楽曲」だと印象を語り、「マタンギの軽やかさを意識して歌いました。ミュージカルって思いを乗せて歌うので重たくなりがちなものですが、マタンギとしての歌唱ではエネルギーをプッシュしすぎず、むしろ抜いたりしながら妖艶さを表現したいと思っていました」と明かした。

「迷え!」というメッセージに共鳴

 マタンギの楽曲「迷え!」には、「迷ってもいい。道はひとつではない」というモアナだけでなく、観客にとっても胸に響くメッセージが込められている。ミュージカル女優として数々の舞台に立ちつつ、最近では連続ドラマへの出演が続々と決定するなど、充実の今を過ごしているソニンだが、「わたしは優柔不断で、迷ったり、悩んだりすることも多いです」と告白する。

 「でも、迷った時にこそいろいろなことが見えてくると思っていて。ポジティブに捉えると、迷うほどいろいろな選択肢があるということだし、視野が広くなっている証拠でもある。それ以上に、迷った結果どの道も選択しなかったり、“人にこうした方がいいと言われたから、この道を選んだ”と思いながら進んだりすることの方がよくないと感じていて。迷いながらも、自分の信念を持って、自分で選択していくことが大事」とキッパリ。「わたし自身、誰かに言われるままに動いたり、10代や20代の前半は環境に振り回されていたところがあったと思います。20代後半くらいから、わたしがこの世界にいる理由みたいなものを見つけ始め、自分の意志を持って選択していけるようになった」と数々の舞台を踏むことで、意志を握りしめられるようになったと打ち明ける。

 同年代であるSPEEDのコンサートを観て「わたしも人に感動を与えられるような存在になりたい」と夢を抱いたことをきっかけに、芸能界に飛び込んだソニン。選択をする際に大事にしているのは、「その原点を思い出すこと」だ。「原点を思い出すと、このお仕事を続けていく意味を確かめられます。また、自分のバックグラウンドを活かすことができる作品や、自分の感性と共通した作品には出たいという思いもあります」と核となる信念について語っていた。

若い頃の試練は「糧」

 これまでのキャリアを振り返ってみると、2000年にダンスボーカルユニット「EE JUMP」としてデビューを果たすも、2002年に解散状態に。同年「カレーライスの女」でソロ活動をスタートさせた際には、インパクトあふれるジャケット写真も話題となった。その後はミュージカル界へと進出し、2012年からは芸能活動を休止して演劇留学へと旅立つなど、波瀾万丈とも思える道のりを辿ってきた。「出来事を並べてみると、波乱万丈に見えるかも」と笑い飛ばしたソニンは、マタンギの口にする「危険を恐れるな」という言葉にも「大いに共鳴します」と目尻を下げる。

 「マタンギの教えって本当にすごい」と舌を巻きながら、「ニューヨーク留学も、旅立つ時にはもちろん恐怖もありました。海外に住んだこともなければ、何も得られずに帰ってくる可能性だってある。自分でも思い切った決断をしたなと思いますが、長く日本を離れることで『この業界に居場所がなくなるんじゃないか』という不安は不思議とありませんでした。自分の直感と信念を尊重したいし、そのためにもやっぱり努力していたい」と力を込める。体からあふれ出すようなストイックな前進力が、なんとも魅力的だ。

 ソニンは「そういう自分になれたのは、この世界に入った若い頃に試練が多かったからだと思います。その中で何とか希望を見つけて、前を向くしかなかった。あのタフな時代を過ごしたことは、すべて女優としての引き出しにもなっていて。間違いなく糧になっていますし、試練を味わったことは遠回りをしていたようで、今の自分になるための近道だったのかなと思っています」と輝くような笑顔で、胸を張っていた。(取材・文・撮影:成田おり枝)

映画『モアナと伝説の海2』は公開中

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