大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で主人公まひろ(紫式部)を演じる吉高由里子と、藤原道長を演じる柄本佑が15日、滋賀県大津市で行われたトークショーに登壇し、同日に迎えた最終回のまひろと道長の別れのシーンの裏側を振り返った(※ネタバレあり。最終回の詳細に触れています)。
平安時代に1000年の時を超えるベストセラーとなった「源氏物語」を生み出した紫式部(まひろ)の生涯を、「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルともいわれる藤原道長との関係を交えて大石静のオリジナル脚本で描いた本作。主演の吉高、そして柄本は10月25日にクランクアップを迎え、1年半の撮影を駆け抜けた。
トークショーは正午からの最終回先行放送を終えたのちに行われ、吉高と柄本は最終回を見届けた観客の会場の熱気に包まれた。最終回の冒頭は、まひろが道長の妻・倫子(黒木華)から道長との関係を問いただされるシーンから始まり、吉高は「凍り付いていたでしょ。ですよね…という感じで、(倫子は)よくしてくれた方なので墓場までもっていこうとはしていたと思うんですけど、台本にはカッコで「言ってしまえの気持ち」と書かれていました」と明かしつつ、「“わたしが知らないとでも思ったの?”っていつか誰かに言いたい!」とも。
一方、道長と倫子の関係を問われた柄本は「僕の中では戦友というふうに思っていてどちらかというと政、仕事とかで共に歩んでいくというふうな気持ちでいましたけど、最後、まひろさんを道長の元に導いてくれたのは倫子だったりするから、最終的には感謝大きいかなという感じですかね……」としみじみ。
終盤は道長が危篤状態に陥り、倫子がまひろに「どうか殿の魂をつなぎとめておくれ」と懇願。まひろが死にゆく道長に寄り添い、物語を紡いでいく展開となった。吉高はまひろと道長の最後のひとときについて「泣くの我慢しないとなって。こんなに弱っている道長を目の当たりにしたときにびっくりするんですけど、佑くん実際にすごく痩せていて。役者さんて大変なんだなって」と柄本が減量していたことに触れた。
柄本は「(第42回の宇治の)川辺のシーンでも少しやつれた感じでいっていて、それである時チーフ演出の中島(由貴)さんかとすれちがったときに“あの感じはちょっと痩せたの?”と聞かれたので“ああ、そうですね。やつれていると書かれていますし”と答えたら“じゃあ、最期のシーンはもうちょっとだね”って(笑)! それで撮影が終わったあと、“中島さん、言ってましたよね”って言ったら“わたしそんなこと言った?”って。「あんただよ!」みたいな(笑)。でも多少、画の中で説得力があった方がいいとは思ったので」と経緯を語り、吉高は「でもちゃんとやるってすごいよね!」と感嘆。
柄本は「四日ぐらい撮影があって二日は普通の状態でいて、三日目から「やつれろ」と(笑)。道綱さん(上地雄輔)がその前に撮影が終わられてきてくれたんだけど、“佑、全然違うじゃん!”って」と共演者も驚いていたことを明かした。
まひろが枕元にやってきた時、道長は残った力を振り絞るかのように左手を差し出したが、この意図については「台本には、まひろを探すような感じということが書いてあって。目が見えないからああいうふうに弱弱しく手を出して。だからやっぱり触れたかったんじゃないかと思いますね」と柄本。
まひろは涙を流しながらも道長に悟られぬよう気丈に振舞う。吉高は同シーンを「あのシーンは3テイクぐらい撮りましたよね。わたしの鼻水が止まらなくて。渾身の三回目の…ぎりぎりの自分の中のものをかきあつめてやりました。苦しいですけどね」「声だけはまだまだ道長は生きるぞ、と鼓舞するような感じ、励ますような声で。だけど顔は歪んじゃうよねって。いうのは簡単なんだけど、やるのはこっちだからねって(笑)。本当に大事なシーンだったので他のシーンが駆け足になっていないか心配になっちゃうぐらい。そのぐらいひいきされていたシーンだった」と振り返った。
まひろに抱かれながら水を飲む道長は子供に還ったかのような表情だったが、柄本は「そぎ落とされていくような感覚だった」と話す。
「まだそこまで客観的に見れてもないしわかってもないんですけど結局道長さんって、別れのシーンのときに権力者とかいうことじゃなく本当にシンプルな愛情の形みたいなことじゃないかなと思っていて。だからやっているときは不思議な、何かそぎ落とされていくような感じはしました。ただ誰にも看取られていないんですよね。倫子が来たときにはもう亡くなっていたので。そこらへんのことがドラマとして切なくもいいなと思うところでもありますし」
途中、まひろが「源氏物語」の主人公・光源氏の最期を描かなかった理由を道長に明かす場面もあったが、吉高は「わたしは印象的なセリフがあって“光る君の最期を描かなかったのは幻がいつまでも生き続けますようにと願ったからでございます”と。まひろの中では道長の物語はずっと続いていくんだろうなっていうふうに感じたセリフだったなって。たぶん、二人の物語はずっと続いているから、まひろも最後は歩き続けていたんじゃないかなって思います」と解釈を述べつつ、ラストシーンに思いを馳せていた。
トークショーには約2,6000人の応募があり、当選倍率は約28倍。会場には約950人のファンが集まった。(編集部・石井百合子)
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