全世界で公開された新生DCユニバースの劇場映画第1弾『スーパーマン』の特報には、予想以上に膨大な情報が詰まっていた。メガホンを取ったジェームズ・ガン監督による解説と共に特報の内容を紹介し、謎に包まれた本編の内容を予測する。(文・平沢薫)
ヒーロー&ヴィラン、大挙登場
まず、主人公のクラーク・ケント/スーパーマン(デヴィッド・コレンスウェット)、スーパーマンの恋人になる黒髪の女性記者ロイス・レイン(レイチェル・ブロズナハン)、スーパーマンの宿敵でスキンヘッドのレックス・ルーサー(ニコラス・ホルト)、農場でクラーク・ケントと語り合う彼の育ての父ジョナサン・ケント(プルイット・テイラー・ヴィンス)、スーパーマンの愛犬クリプトは一目でわかる。
ちなみにクリプトは、特報ローンチ前に公開されたビジュアルにも登場。これまで、レトリバー系の大型犬で描かれるのが通例だったが、本作では小型犬になっている。これは、ガン監督が飼っている保護犬オズの犬種に合わせたもの。犬種の変更をSNSで批判された監督は「クリプトは元々クリプトン星から来たエイリアンだから、犬種は決まっていない」「僕の愛犬オズがもしスーパーパワーを持っていたら、と考えたら脚本もストーリーも変わっていった。オズが僕の人生を変えたように脚本も変えたんだ」と答えている。
さらに特報では、さまざまスーパーヒーローたちがチラ見せされている。登場順に紹介すると、緑色の光を放つ男は、地球で3人目のグリーンランタン、ガイ・ガードナー(ネイサン・フィリオン)。空を飛ぶ鳥のような女性はホークガール(イザベラ・メルセード)。スーパーマンが手を握る、倒れているロボットは、北極にあるスーパーマンの基地、孤独の要塞にいる奉仕ドロイド・ケレックス。アップで登場する顔が爛れたような男は、レックス・メイソン/メタモルフォ(アンソニー・キャリガン)。ピラミッドでラーの放射線を浴びて体が変化し、元素を自由に変形させるパワーを持つようになったスーパーヒーローだ。顔の中央にT字型の黒いマスクをした男は、マイケル・ホルト/ミスター・テリフィック(エディ・ガテギ)。頭脳、運動能力、ビズネス能力全てに優れた学習能力を持ち、浮遊装置Tスフィアを発明、ヴィランとして登場することもある。特報では、これらのヒーローたちがスーパーマンと対立しているように見えるシーンもあるのが、気になるところだ。
また、かなり小さくてわかりにくいが、レックス・ルーサーがいるビルの看板「ルーサーコープ(LUTHERCORP)」が映し出されるシーンで、アーチ型の部分を歩いているのが、エンジニア/アンジェラ・スピカ(マリア・ガブリエラ・デファリア)だと、ガン監督が認めている。彼女はナノテクノロジーによる特殊な血液を持ち、全身を金属化するなど体を自由に変形させられる。また彼女は、DCスタジオが製作を発表している、スーパーヒーローのチーム「オーソリティ」を描く映画『ジ・オーソリティ(原題)/ The Authority』にも登場することが決まっている。
そして、特報では謎も提示されている。まず、スーパーマンと戦う巨大怪獣の正体は、何なのか不明。そしてもう一つ謎なのが、観客のいないスタジアムでスーパーマンと戦っている、全身黒いボディスーツの男。これについては噂がある。一つは、多次元宇宙に存在する悪のスーパーマン=“ウルトラマン”ではないかというもの。また、この映画には、身体変容能力を持つメタモルフォやエンジニア、天才的科学者ミスター・テリフィックが登場するので、レックス・ルーサーが、クローン技術によって生み出すもう一人のスーパーマンではないかとの噂もある。コミックでは、ルーサーが生み出すスーパーマンのクローンは不完全で、身体能力は互角だが知能は低く“ビザロ”と呼ばれるが、特報に登場するのは、ビザロとは異なり、知能も同等の存在のようだ。
コミック由来のイースターエッグも大量
レックス・ルーサーが登場する時、建物に掲げられている看板「ルーサーコープ」は、レックスが父親から引き継いだ企業名。レックスはこの名称を後に「レックスコープ」と改名する。また、スーパーマンが緑色の光を浴びせられる前、苦悩する表情で俯く時、背景の壁には「スタッグ・インダストリーズ(Stagg Industries)」の文字がある。これは、富豪サイモン・スタッグが経営する巨大企業スタッグ・エンタープライズの一部門の名称だろう。メタモルフォが変異したのは、このサイモン・スタッグの命令が原因だった。
細かいところでは、新聞記者姿のクラーク・ケントがデイリー・プラネット社に入って行く時、入り口に立っている警備員が呼んでいる新聞には「ゴリラ・グロッド」の記事が掲載されている。ゴリラ・グロッドは怪力と高度な頭脳、テレキネシスなどの超能力を持つヴィランだ。
また、スーパーマンのマークの旗を掲げる少年がいる紛争中の場所は、ニュース映像のテロップに「ボラヴィア国境地帯(Boravian border)」と表示されるが、ボラヴィアは、コミックでは「Superman #2」(1939)初登場の歴史ある地名。コミックでは、ヨーロッパの架空の国の名称で、スーパーマンはこの国の内戦に介入したことがある。映画でスーパーマンがどう関わるのかが気になるところだ。
ジェームズ・ガン監督はスーパーマンをどう描くのか
ガン監督は、特報公開に合わせてアメリカ本国で行われたQ&Aセッションにて、次のように発言している。「冒頭で、スーパーマンはボロボロになっています。それは私たちの国です」「私は、スーパーマンを彼の原点に忠実に、完璧な良き人として描きたいと思いました」「これは親切さについての映画、善であることについての映画です」
しかし、この言葉をそのまま素直に受け取っていいのだろうか。なにしろ監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったマーベル映画に初参加するに際して、その題材にわざわざ知名度の低いマイナーなチームを選んだ監督だ。DC映画に初参加した作品も、ヴィラン大集合の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』だった。
そんなガン監督が、2022年に、DC映画を仕切り直しする新たなスタジオ「DCスタジオ」の共同会長兼CEOに就任。彼が放つ、新生DC映画の第1弾が『スーパーマン』なのだ。これまではみ出し者たちを描いてきたガン監督が、DCを代表するこの正統派ヒーローをどう描くのか。そして、彼が率いる今後のDC映画はどうなるのか。その意味でも大きな注目を集めるのが本作なのだ。
特報冒頭、無敵なはずのスーパーマンが空から墜落し、血を流して小さな愛犬に助けを求める。彼を非難する群衆の中の一人に、石を投げつけられる。こうした光景は、これまでのスーパーマンのイメージとは違う、新たなスーパーマン像を予感させるものだ。
今回の映画化のコンセプトは、特報に使われている音楽にも象徴されているのかもしれない。音楽はリチャード・ドナー監督、クリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』(1978)シリーズのテーマ曲を、エレキギターの独奏にアレンジしたもの。この音楽のように、ドナー監督版が描いた人間の善の象徴としてのスーパーマンを、時代背景を現代に変え、ガン監督ならではの視点で描き直すのが、今回の『スーパーマン』なのだろうか。ガン監督が描く“善”についての物語とは、どんなものなのか。特報の後に続くであろう、予告編第1弾、第2弾の内容が今から気になる。
映画『スーパーマン』は2025年夏全国公開
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