東映の人気特撮「仮面ライダー」をテーマとしたスマートフォン向けアプリゲーム「ライドカメンズ」が、「ライドカメンズ The STAGE」として舞台化される。世界観の構築およびメインシナリオを担当したのは、「仮面ライダーエグゼイド」「仮面ライダーギーツ」などでおなじみの脚本家・高橋悠也だ。2024年5月末のゲームローンチから半年、舞台化に挑んだ高橋がインタビュー応じ、脚本執筆のこだわりや舞台への期待について語った。
「ライドカメンズ」ローンチ後の手応え
「ライドカメンズ」は、自然と文明が調和した虹顔市を舞台に、仮面ライダーをサポートする「エージェント」(=プレイヤー)が、個性溢れる19人の仮面ライダーと共に、彼らの記憶を巡る戦いに身を投じる物語。仮面ライダーたちは、各々が掲げる信念をもとに結成した、6つのグループ(=クラス)に分かれて活動している。
ローンチ当初から、17人の仮面ライダーが一挙に登場した本作。これまで数多くのシリーズ脚本を手がけてきた高橋にとっても、初めての経験だった。「20人近くのキャラクターを描き分けられるかどうか、企画当時は不安でした。いざやってみると、声優さんの芝居はもちろん、各ライダーの多種多様なデザインのおかげもあり、性格も被らないキャラクターを描き分けられたという実感はあります」
ゲームをプレイしたファンの反応の中には、意外なものもあったという。「特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズでは仮面ライダーは、困っている人や弱き者を助けるヒーローであることが多いです。一方で『ライドカメンズ』は大人向けに作ったこともあり、自己欲求のために仮面ライダーになるキャラクターも描いています。平和を願うようなキャラクターだけでなく、己のために計算高く、人を騙したり、ある種の私利私欲のために動くキャラクターに魅力を感じているユーザーさんの声も多く、そういったキャラクターについての反響は意外でした」
「仮面ライダーはなぜ戦うのか?」を改めて言語化
脚本は、「仮面ライダーギーツ」のスピンオフ作品や、アプリ「ライドカメンズ」で多数のイベントストーリーを手がける内藤祐介と共に組み立てていった。「僕が物語の方向性や大まかな構成を出して、内藤くんがそれをベースに脚本を執筆しています。その後、僕がチェックして、セリフの言い回しでしたり、シーンの変更等を調整する工程を、何度か繰り返して完成させました」
「仮面ライダー」シリーズの舞台はこれまで、特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武」から派生した「『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝」、漫画「風都探偵」から派生した「風都探偵 The STAGE」が上演されており、アプリゲームからの舞台化は本作が初となる。
ゲームファンはもちろん、中には原作の世界観を全く知らない人も観劇するだろう。高橋は、脚本作業において「ゲームのことを再現する内輪ネタの物語にしてはいけない」ということを意識していた。
「ゲームをやったことがない人でも、最低限『仮面ライダー』のことを知っている人に向けて、楽しんでもらえる物語にしたつもりです。仮面ライダーは、どの作品にも各々に戦う理由があり、そこにある程度共感してもらえないと、お客さんにはただアクションっぽい作品を観ていただくだけになってしまう。ゲームでは1度やっていることかもしれませんが、『仮面ライダーはなぜ戦うのか?』を改めて言語化して、 お芝居の中で表現していくことを目指しています」
変身後もキャストが担当!「ライドカメンズ」ならではの挑戦
「ライドカメンズ The STAGE」における最大の挑戦は、仮面ライダーならではでもある「変身」を踏まえたストーリー構成・演出だ。「ライドカメンズ」に登場する仮面ライダーは、マスクを装着した状態でも素顔が見える。舞台でもビジュアルはそのまま、従来のようにスーツアクターを起用するのではなく、役者自ら変身後も担当している。
「ヒーローショーでは、キャストが変身まで行い、仮面ライダーのアクションはスーツアクターが担当することが通常です。『ライドカメンズ The STAGE』はそうではなく、役者が変身後もやることになります。演出の毛利(亘宏)さんが担当する部分が多いですが、かなり挑戦的なプロジェクトです」
キャスト自身が仮面ライダーも演じることで「毎回違うお芝居やアクションが連動して見られる」と高橋は語る。「そこは非常に楽しみなところですし、お客さんも舞台を2回観に行ったら、1回目とはまた違う演技を楽しんでいただけるのではないかと思います」
2024年は「ライドカメンズ」がリリースされたほか、高橋が脚本を手がけた東映特撮ファンクラブ(TTFC)のオリジナルシリーズ「仮面ライダーアウトサイダーズ」が完結した。「配信・ゲーム・舞台といった様々なメディアミックス展開の応援をさせていただきました。お客さんにもいろいろな入り口から『仮面ライダー』を楽しんでいただけたかと思います。最終的には、特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズを応援していただけると、いち関係者として嬉しい限りです」と期待を込める。
2025年、高橋にとって最初の「仮面ライダー」作品は「ライドカメンズ The STAGE」となる。「ゲームを遊んでいただいている方にとっては、どこか前日譚とも言えるオリジナルストーリーになっていますので、ゲームをプレイしたことがある人は全員マストで来てほしいと思います。もちろん、舞台が好きでゲームをまだプレイしたことがない人は、舞台で『ライドカメンズ』の世界観を知っていただき、特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズやゲームにも興味を持っていただけたら嬉しいです」とアピールしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
「ライドカメンズ The STAGE」東京公演は1月11日から1月26日までサンシャイン劇場で上演、大阪公演は1月30日から2月2日まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演
【関連情報】
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