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【鑑賞前の予習用に】“人類最大の偉業”アポロ11号の月面着陸をめぐる宇宙開発史を紐解く

映画.com 2024年7月3日 14時0分

 スカーレット・ヨハンソンとチャニング・テイタムが初共演を果たし、人類初の月面着陸に関する“ウワサ”から生まれた映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。この記事では、鑑賞前の予習用に、人類最大の偉業といわれるアポロ11号の月面着陸をめぐる宇宙開発史を紐解く。

 アポロ11号の月面着陸の歴史的瞬間は、テレビで全世界に生中継され、人々は、人間が“リアル”に月の上を歩く映像を見て興奮し、胸を熱くした。しかしその後、その映像や写真をめぐり、「実は“偽物(フェイク)”だったのでは?」という説が流れ、マスメディアでも取り上げられた。本作は、そんな人類初の月面着陸にまつわる人間ドラマを描いた完全オリジナル脚本を映画化するもの。脚本に惚れ込んだ主演のヨハンソンがプロデューサーにも名を連ねるほか、テイタム、ウッディ・ハレルソンら豪華キャストが顔をそろえた。

 現在、宇宙開発事業は、世界共通の「未知への挑戦」として、国境を越えて協力が行われている。しかしかつては、初めて大気圏を抜け、地球の軌道を周回する人工衛星の打ち上げを成功させたソ連と、人類初の月面着陸を目指したアメリカが、熾烈な開発競争を繰り広げてきた。

 第二次世界大戦後、米ソは冷戦時代を迎え、1955 年にはベトナム戦争が勃発した。両国の代理戦争と称されたベトナム戦争は19年にも及び、二国間の関係はさらに悪化。両国は互いに技術力の優位性を示すため、大量の兵器を製造し、ついには世界中が標的に入るロケットの開発を始めた。50年代半ばには、米ソともにロケットを使用し、宇宙に人工衛星を打ち上げる計画を発表。アメリカは58年に打ち上げ予定だったが、ソ連は先手を打とうと、密かに独自の計画を進めていた。そして57年、ソ連は人工衛星・スプートニクを打ち上げ、地球周回軌道に乗せることに成功。ソ連に後れをとったアメリカは、宇宙空間の覇権を奪われることに危機感を抱き、58年に米航空宇宙局(NASA)を設立した。

 1961年、上下両院合同議会で行われた演説で、ジョン・F・ケネディ大統領は、「今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させるという目標の達成に我が国民が取り組むべきと確信しています」と述べ、その大胆な目標によって、宇宙開発競争は加速していく。こうして立ち上げられたのが、劇中で描かれるアポロ計画だ。

 しかし計画は、順調には進まなかった。宇宙低軌道に乗せるミッションに臨むアポロ1号の予行演習中、発射台で火災事故が発生し、3人の飛行士が命を落としたのだ。NASAは予定されていた有人打ち上げを延期し、アポロ2号、3号と名付けられたミッションはなくなった。事故をきっかけに「計画を中止すべき」という世論が巻き起こり、アポロ計画の先行きには暗雲が立ち込めた。だが乗組員たちは、地上の管制官や技術者たちの援助と、NASAの優れた危機管理能力で逆境を乗り越え、アポロ11号は無事月面着陸を果たし、その後、地球に帰還することに成功した。ケネディの演説から約8年、その夢が叶えられた瞬間に、世界中の人々が胸を熱くした。

 そしていま、アポロ計画の魂を受け継いだアメリカ主導の国家的プロジェクト・アルテミス計画で、人類は再び月を目指す。日本は同計画の主要パートナーとして、技術的にも大きく貢献。計画通りに進めば、 2028 年に初めて日本人が月に降り立つことが決定しており、アルテミス計画の今後に期待が寄せられている。

 人類初の月面着陸という偉業から55年というメモリアルイヤーを迎える今年、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」が公開。69年のNASAを舞台に、アポロ計画の成功に向けて一丸となった、発射責任者コール(テイタム)らNASA職員、月面着陸の宣伝を任されたPRのプロであるケリー(ヨハンソン)、そして政府関係者モー(ハレルソン)による人間ドラマが展開する。宇宙開発史を踏まえて本作を見れば、さまざまな発見があるかもしれない。

 あわせて、コールの姿をおさめた場面写真2点もお披露目。最初の1枚には、NASAの管制室でアポロ11号の発射を見守るコールと、彼とともに計画に尽力するヘンリー(レイ・ロマノ)の姿が切り取られている。そしてもう1枚は、アポロ1号で火災事故に見舞われたパイロット3人の慰霊碑の前で、決意を新たにするコールを活写。彼にとってその事故は、決して忘れてはらない教訓であり、毎日碑の前に咲く花に水をやり続けているのだ。

 細部に至るまで“リアル”に撮影された本作について、グレッグ・バーランティ監督は、アポロ計画時代にNASAで重要な役割を果たした技術アドバイザーたちと協力する機会に恵まれた。「NASAは私たちの脚本とストーリーを客観的に見てくれました。そして、私たちと同じように、この映画を、この大規模な偉業、つまりこの計画に携わった40万人の人々を称える機会だととらえてくれたのです」と語っている。

 「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、7月19日から全国で公開。

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