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池松壮亮、“母校”で未来の映画界を担う学生たちにエール!「ルールに縛られずに、新しい時代を作ってほしい」

映画.com 2024年7月25日 21時0分

 第77回カンヌ国際映画祭ある視点部門に選出された「ぼくのお日さま」のQ&A付き試写会が日本大学藝術学部の江古田キャンパスで行われ、池松壮亮と奥山大史監督が登壇。同学部の卒業生でもある池松が、映画を学んでいる学生たちにエールを送った。

 田舎町のスケートリンクを舞台に、吃音をもつホッケーが苦手な少年タクヤ(越山敬達)と、選手の夢を諦めたスケートのコーチである荒川(池松)、コーチに憧れるスケート少女のさくら(中西希亜良)という3人の視点によって紡がれる本作。雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない恋の物語を描く。大学在学中に制作した長編初監督作「僕はイエス様が嫌い」で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山が監督、撮影、脚本、編集を務めた。

 上映を楽しんだ学生を前に「母校です」と目尻を下げた池松は、「今日は、一般の方という意味では初めてのお披露目。自分の母校ということもありますが、これから社会に出ていく皆さんに映画を届けられることを光栄に思います」と感無量の面持ち。スクリーンが設置された教室で上映会が行われたが、映画学科の監督コースで学んでいた池松にとっては「ここで卒業制作をかけた。わりと怒られた(笑)」という思い出の場所だという。先輩として、次々と手が上がる学生からの質問に熱心に答えた。

 学生から「幼少期や学生の頃の経験が、今の仕事にどう生きているか」と問われると、「子どもの時の経験を映画にしがち」だという奥山監督は、「子どもの頃って今よりももっともっと、感情の起伏があった。些細なことで落ち込んだり、小さなことで喜んで舞い上がったり。あの時の方が時間も長く感じたし、キラキラして見えた」と幼少期を述懐する。

 「カメラのレンズを通せば、そういったものがもう一度呼び起こせる気がするし、そういう映画を作りたいと思っています。今回は実体験ではないストーリーラインですが、『自分が子どもの時に抱いていた感情をどのようにして取り入れていけば、観る人の感情を呼び起こせるかな』と悩みながら脚本を書いて、悩みながら撮影していました」と語る。池松は「学生の頃の経験が全部、生きている」ときっぱり。「いい学校ですもんね」と話して学生たちの笑いと共感を集めながら、「社会に出る前の4年間。ギリギリ残された猶予として、あまり褒められた学生ではなかったですが、必死になってたくさん映画を観たり、ひたすら考えたり、そういう時間を過ごしたことが、そのまま俳優活動に生きているなと今でも思っています」と学生時代に思いをはせた。

 また「自分の表現を見つけていく方法」についても質問が上がり、奥山監督は「自分も探し中」としながらも、「好きな作品や監督に出会ったら、それにまつわるものは一通り触れてみて、自分がなぜいいと思ったのかを言葉にしていく。それを繰り返していくと自分の好きなものが見えてきて、目指す方向も見えてくるのかなと思います」と好きなものを言語化していくことだとアドバイス。「いい質問ですね」としみじみと噛み締めた池松は、「僕は常に流動的でありたいと思っていますし、さまざまなスタイルを獲得していきたいと思っています。昔は自分のスタイルって何だろうと散々考えました。いろいろなものを見て、どんどん真似をして、自分の表現に対して素直になること。そうしたら結果として、必ず自分のスタイルが出てくるのかなと。どんどん取り込んで、どんどん素直に表現していけばスタイルが見つかるかなと思います」と勧めていた。

 最後まで学生から手が上がり続けたが、奥山監督は「池松さんをはじめ、すばらしい活躍をしている卒業生たちがいる。その背中を追いかけながら学べるというのは、うらやましいなと思います。そういった場所にいることを誇りに思って、引き続き(映画の道を)目指していっていただきたい」とエールを送った。池松は「奥山さんは今28歳で、そんなに皆さんと変わらない(年齢)。今でも広告会社にいながら、映画やミュージックビデオを撮っている。監督もカメラマンもやるし、これまでのルールをどんどん破って、出てきた方」と奥山監督について紹介しつつ、「良い映画を作るということを目的にすると、そこにルールは必要ないと思う。これまでのルールに縛られずに、新しい時代を作っていっていただきたいなと思います。僕も、奥山さん、そして皆さんと仕事ができる日を楽しみにしています」と後輩たちとのタッグを望み、大きな拍手を浴びていた。

 「ぼくのお日さま」は9月6~8日の3日間、テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテでの先行公開ののち、9月13日から全国公開。

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