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大泉洋×宮藤官九郎が初タッグ! 山田太一「終りに見た街」を令和版にリブート

映画.com 2024年7月30日 5時0分

 山田太一さんの名作をドラマ化する「終りに見た街」が、テレビ朝日開局65周年記念のドラマプレミアム作品として9月に放送されることになり、主演を大泉洋、脚本を宮藤官九郎が務めることが明らかになった。

 本作は脚本家、小説家であり、ホームドラマの名手である山田さんが、戦争体験者のひとりとして、厳しい体験を次世代に伝えることをテーマに執筆したもの。山田さん自らが脚本を執筆し、テレビ朝日で2度ドラマ化されている。1982年に細川俊之、2005年に中井貴一が主演を務め、それぞれの時代に生きる主人公と家族が昭和19年にタイムスリップし、戦時下を生き抜く姿が描かれた。

 そして終戦80年を目前に、約20年の時を経て、3度目のドラマ化が実現。テレビ朝日系で初主演を務める大泉を迎え、同じ脚本家として山田さんを尊敬し、ファンであることを公言してきた宮藤が脚本を執筆した。

 令和の東京郊外で、何不自由なくありふれた日常を送るテレビ脚本家・田宮太一(大泉)の一家は、ある日突然、太平洋戦争真っ只中の昭和19年6月にタイムスリップ。そこはビルもショッピングセンターもなければ、携帯も通じず、食料を入手することも困難な世界だった。令和とのあまりの違いにうろたえる太一と家族は、戦時下の衝撃的な現実を目の当たりに。そんな過酷な戦場下で、同じく過去の世界に迷い込んだ太一の父の戦友の甥・小島敏夫とその息子とともに、何とか生き延びようとする。

 大泉演じる太一は、宮田一太郎のペンネームでテレビドラマを手がける脚本家。代表作はないものの、20年細々と、脚本家として続けてきた、パッとしない主人公だ。家庭では、パートに夢中な妻、思春期の娘、やや反抗期の息子、そして認知症の症状が見られるも、すこぶる元気な母との5人暮らし。しかし、タイムスリップを機に、家族は現代では見せなかった姿をさらけ出していく。

 令和版として新たに生まれ変わる「終りに見た街」に挑むことになった大泉は、かねて「宮藤さん脚本ドラマに出たいなという思いもあったので、単純に嬉しかった」「山田太一さんの原作を宮藤さんが脚本にするという、天才同士のコラボとなる作品だったので、どんな作品になるんだろうと楽しみでした」と期待を寄せる。さらに、「戦争というものをもっとリアルに考えなくてはいけない時代のなかで、この作品を通して僕たちが戦争に対してどう考えていくのかということを、改めて突きつけられる部分がある」と語る。

 「不適切にもほどがある!」が話題を呼び、「新宿野戦病院」が放送中の宮藤は、「脚本家が主人公ということで、他人事とは思えなかった」そうで、「主人公の設定は等身大なのに、物語はファンタジーというのが、山田先生らしいなと感服しました」と、改めて山田作品のすごさを実感したという。そして、「山田先生の原作の力をお借りして、また新たな作風を手に入れたんじゃないかと手応えを感じています」「いつもと違います」と、自身にとって新境地となったことを明かした。

 「終りに見た街」は、テレビ朝日系で9月に放送される。大泉の役どころとコメント(全文)、宮藤のコメント(全文)は、以下の通り。

■大泉洋(田宮太一役)

(役どころ)
 ペンネーム・宮田一太郎で、主にテレビドラマの台本を執筆する脚本家。やや愚痴っぽい性格。かつては劇団に所属し、俳優を目指していたが芽が出ず、脚本家に転身して20年。いまだ代表作と呼べる作品はないが、細々と続いている。家庭ではパートに夢中な妻、思春期の娘、やや反抗期の息子、そして認知症の症状が出始めたが、すこぶる元気な母との5人暮らし。大黒柱としての威厳など欠片もなく、子どもたちにはウザがられがち。

 ある日、プロデューサーから終戦80年記念スペシャルドラマの脚本を無茶ぶりされ、断り切れず引き受けることに。自宅に送られてきた戦争に関する膨大な資料に目を通しながら寝落ちした太一が、衝撃音で目を覚ますと……そこは太平洋戦争真っ只中の昭和19年6月の世界で、家族ともどもタイムスリップしていた。にわかに信じられない出来事をなかなか受け入れられない太一だったが、やがて過酷な戦時下を生き抜くため、家族、そして同じくタイムスリップした亡き父の親友の甥とその息子とともに奮闘する。

(コメント)
――山田さんの原作を、20年ぶりに宮藤さん脚本でドラマ化する本作。出演オファーを受けた際のお気持ちをお聞かせください。

 このオファーをいただいたのが、「こんにちは、母さん」(2023年)という映画で宮藤さんと役者として共演したすぐ後ぐらいだったのですが、機会があればいつか宮藤さん脚本ドラマに出たいなという思いもあったので、単純に嬉しかったです。しかも、山田太一さんの原作を宮藤さんが脚本にするという、天才同士のコラボ作品だったので、戦争というとても重たいテーマをどんな作品になるんだろうと楽しみでした。

――実際に宮藤さんの脚本を読んでいかがでしたか?

 40年前に書かれた山田さんの世界観に、現代のテイストをふんだんに盛り込みながら描いていて、さらに戦争というテーマでありながらも、宮藤さんならではのお笑いも果敢に盛り込んでいて、なんて面白い脚本なんだろうと大変感動いたしました。元々の山田さんが書いている本が面白いということも大きいと思います。物語の最後に驚く展開があるんですが、これが40年前に書かれているということにびっくりしますし、40年経った今の時代にこのラストが、より重くのしかかってくる気がします。

――大泉さんが演じる田宮太一という役どころの印象を教えてください。

 太一は家族と昭和19年にタイムスリップしてしまったけど、なかなか順応できないので、役に立たないお父さんなんですよね。役に立たないということに、劣等感を感じていくし、子どもたちからも手厳しく言われるんです。「もし自分が……」と、とにかく考えさせられるドラマになっています。自分と役を重ね合わせた時に、僕ほど役に立たない人はいないから、やっぱり僕も相当怒られて、家族からボコボコに言われるだろうなと思って怖かったですね。大学時代にアルバイトすらうまくいかなかった男ですから(笑)。一方で、太一は昭和19年の現実を受け入れざるを得ない瞬間が来た時に、ある行動をするわけですが、これだけ国自体が戦争に傾いているなかで、とても勇気ある行動をとる人だなと思いました。

――令和の今、この作品を届けることについて、どう思いますか?

 この作品は過去に起きた戦争をただ再現して伝えるのではなく、現代に生きる人間が戦時下にタイムスリップしていくので、より生々しく感じられる。これまでも、1982年、2005年と2度ドラマ化がされていますが、1作目が昭和57年から約40年前に、2作目が平成17年から約60年前にタイムスリップして、そして3作目となる今回、令和6年の僕たちが80年前の昭和19年にタイムスリップしたらどうなるんだという。山田さんの書いた本自体が、その時代その時代でリメイクするのに大変適している。それぞれの時代の人が実際に戦時下に入っていくから、どの時代でも視聴者が戦争というものをよりリアルに考えられるし、いつの時代に作っても考えさせられるドラマだなと思います。さらに本作では、宮藤さんの脚本だからこそ見ようかなと、若い人を中心にそう思う人も多いでしょうから、それも本当に意義があると思います。

 戦争というものをもっとリアルに考えなくてはいけない時代のなかで、この作品を通して僕たちが戦争に対してどう考えていくのかということを、改めて突きつけられる部分があるなと思います。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

 いわゆる辛い戦争の歴史を振り返る再現ドラマではなく、現代人がその時代にタイムスリップした時にどうなっていくのかという作品で、宮藤さんの世界ならではの笑いもありますし、見やすいドラマだと思います。最後には非常に考えさせられる展開があり、何かしら「戦争」について考えるきっかけになる作品だと思うので、ぜひ見ていただけたらなと思います。

■宮藤官九郎(脚本)

――山田さんの原作を読んだ際の印象を教えてください。

 脚本家が主人公ということで、他人事とは思えませんでした。「異人たちとの夏」(新潮文庫)もそうなのですが、主人公の設定は等身大なのに物語はファンタジーというのが、山田先生らしいなと感服しました。小説は何度も読み返しましたが、今回脚本を担当させていただくにあたり、ドラマ版はあえて見ずに書きました。二度目はないチャンスですし、リメイクではなく、あくまで小説の脚色として取り組みたかったので。

――主演の大泉洋さんにはどのような印象をお持ちですか?

 絶妙にネガティブ。そこが大泉さんと、山田先生と、僕の共通点だと思います。劇団(TEAM NACS)では作劇を担当することもあるからでしょうか、物を考える人、つくる人の顔をしているなぁと以前から思っていたので、脚本家の役はピッタリだと思いました。

 執筆に着手したのが、ちょうど映画「こんにちは、母さん」(2023年)で共演していた時期で、現場で大泉さんから「宮藤さんの作品、呼んで下さいよ~」と言われたので、すぐ呼んだらビックリするだろうなと思って、オファーする前から勝手に当て書きしました。

――本作の脚本で特にこだわった点や大切にしたことがあれば教えてください。

 戦争経験の有無が、僕と山田先生の大きな違いなのですが、それを逆手に取って、実感を伴わない主人公の「反戦」が、この苛烈な物語を通じて実感を帯びてゆくという大きな流れを意識して書きました。彼らに感情を乗せることで、戦争の愚かさを感じることが出来ると思います。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いいたします。

 大好きな山田太一先生が「これだったらやってもいいよ」と仰ってくださった作品だそうです。今年は、たくさんのテレビドラマを書き、その振り幅に自分が驚いていますが、今回は山田先生の原作の力をお借りして、また新たな作風を手に入れたんじゃないかと手応えを感じています。

 はい。いつもと違います。お楽しみに。

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