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ケイシー・アフレックが語り尽くす、新作コメディ&自らのキャリア 「グッド・ウィル・ハンティング」驚きの秘話も

映画.com 2024年8月17日 9時0分

 ケイシー・アフレックといえば、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞を受賞した演技派だ。「ジェシー・ジェームズの暗殺」「ファーナス 訣別の朝」などシリアスな役柄が多い彼だが、自ら共同で脚本を執筆した最新作「インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト」(Apple TV+で配信中)は、痛快なアクションコメディだ。

 旧友のマット・デイモンに加え、デイモンが主演した「ボーン・アイデンティティー」でも知られるダグ・リーマン監督を引き込み、見事映画化に漕ぎ着けた。

 映画.comでは、アフレックに独占インタビューを敢行。本作を手がけたきっかけから、自らのキャリア、兄のベン・アフレックとマット・デイモンがブレイクするきっかけとなった傑作「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」において彼が果たした“重要な役割”などを、たっぷり語ってもらった。(取材・文/小西未来)

●「インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト」はどのような経緯で誕生した?

――「インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト」、最高でした。

 ありがとう。そう言ってもらえて本当に嬉しいよ。

―― 実はエンドクレジットを見るまで、あなたが脚本家の一人だとは気づきませんでした。どういうきっかけでこの作品に携わることになったんですか?

 以前からコメディタッチの作品をやりたいと思っていて、脚本を探していたんだ。知り合いに、チャック・マクリーン(「CITY ON A HILL 罪におぼれた街」)っていうとても才能がある脚本家がいてね。それこそ2週間に1本くらいのペースで脚本を書くんで、映画化されてない脚本が15本くらい彼の棚に眠ってるんだ。彼が未発表の脚本を数本送ってくれて、そのなかの1本が気に入った。ある男が市長を相手に強盗を計画する話だ。

――「インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト」と骨格は同じですね。

 そう。その脚本を元にぼくが書き直して、映画化を実現させようと考えた。ただ、ぼくはチャックほど筆が速くないから本当に時間がかかったよ。最終的には、お互いのことをまったく知らない2人の強盗の話になった。ひとりは精神療法を受けていて、彼を担当するセラピストが強盗に加担することになる。脚本をマットに送ったら「出演したい」と言ってくれた。ダグ・リーマン(監督)にも送ったら、脚本を書き直せば撮ると言ってくれた。第3幕を完全に変えたいと言って。それで、彼に気に入ってもらえるように、その挑戦に挑んだというわけだ。

――コメディタッチの作品はとても珍しいですよね。

 うん。この手の映画は昔から好きだったんだけど、あいにく出演する機会はあまりなかった。「スティング」「明日に向って撃て!」「ミッドナイト・ラン」、それに「ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ」とか。面白くて楽しくて、物語の中心に単純ではないけど魅力的な友情があるような作品をずっと作りたかったんだ。

●マット・デイモンとの共演「ぼくらは『ミッドナイト・ラン』が大好きだ」

――マット・デイモンが演じるキャラクターは、「ジェイソン・ボーン」シリーズで演じたヒーローとはまったく違いますよね。

 実際のマットは面白い奴なんだけど、とぼけた演技はこれまでしてこなかった。ぼくらはどちらも「ミッドナイト・ラン」が大好きだ。それで「よし、本人は大真面目だけど、傍からみると間の抜けたキャラクターをマットに演じさせたら面白いぞ」って思って。で、彼も自分のアイデアを持ち込んで、あのキャラクターができたんだ。

――映画としても、「ミッドナイト・ラン」と同じように、ユーモアとサスペンスのバランスが絶妙でした。

 そのバランス感覚に関しては、ダグの功績だと思う。テンポもムードも、彼のセンスが反映されている。過去に「Mr.&Mrs. スミス」や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で見事成功しているしね。ダグはこのジャンルが得意なんだ。そんな彼に導いてもらえので、安心感があったよ。

●「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」の“橋渡し役”だった!?

――あなたのことを知ったのは、「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」がきっかけでした。当時、あなたはどんなキャリアを思い描いていましたか?

 「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」の前に、ガス・ヴァン・サント監督の「誘う女」に出ていたんだ。あれがはじめての映画で。

――あ、そうでした!

 ガスとは、すぐに意気投合して。でも、当時のぼくは俳優になりたいとはっきり思っていたわけじゃない。でも、ガスと一緒に仕事をするのはすごく楽しかった。そしたら、ベンとマットが、自分たちが書いた「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」の脚本をガスに渡してくれないか、って頼んできて。それで、ぼくはガスにあの脚本を渡したんだ。

――えっ! あなたが橋渡し役だったんですか?

 うん。で、ガスがあの脚本を気に入って、ぜひとも映画化したいと言ってくれた。おまけにぼくにも出演してほしいと言ってくれた。当時のぼくは大学に通っていて、その生活に満足していたから、すぐには飛び出したくなかった。でも、ガスのことは本当に好きだったし、みんなとも仲が良かった。実際、みんな隣同士に住んでいた。それで「よし、やろう」って決めて。

 そんなわけで「グッド・ウィル・ハンティング」に出演することになったんだけど、役者として大きな動機や目的があったわけじゃない。映画に出て、みんなと一緒の時間を過ごして、楽しく過ごすことが目的だった。あの映画は成功して、それから多くのチャンスが来るようになった。正直に言うと、ひとつひとつ目の前のことをこなしていっただけなんだ。当時は大学の学費を払わなきゃいけなくて、得られる仕事は何でもやっていた。仕事が終わると、また学校に戻るっていう生活だった。

 でも、ある時点から演技を心から愛するようになった。それから作品選びに慎重になったり、戦略的に選ぶようになったり、プロジェクトへの情熱に基づいて選ぶようになったりしたんだ。でも当時はこんなことは考えていなかった。ロバート・フロストの詩(「The Road Not Taken」)にあるように「道は道へと続く」んだ。いまも好きな仕事を続けられて、物語を語ることで生計を立て、友人たちと仕事ができる。本当に幸運だと感じているよ。

●思い入れの深い作品は「ライト・オブ・マイ・ライフ」

――なるほど。俳優業が天職だと感じた特定の作品はありますか?

 自分で脚本を書いて監督して、主演もした「ライト・オブ・マイ・ライフ」っていう映画を作るまでは、自分が作品と完全に繋がっているという感覚はなかった。結果がどうなるかとか、他の人が好きかどうかはあまり重要じゃなくて、ただ、その時に自分が言いたかったことをそのまま表現できた感じがしたんだ。そういうことをもっとやりたいね。

――本作でもコメディ演技を披露しています。手応えはいかがですか?

 正直、誰もぼくがコメディ演技をできると思っていなかった。実際、ぼく自身、面白い奴だとは思われていなかったと思う。そういう考えを覆することができたらいいなと思ってる。

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